教区の歴史

教区の歴史

着座4周年メッセージ

2004年09月05日

東京大司教着座4周年に際して
東京教区のすべての方々へ

 

優先課題進捗状況

2000年9月3日、東京大司教に着座したわたくしは前任者・白柳誠一枢機卿から受け継いだ課題を実行に移すために、2001年6月25日、大司教メッセージ『新しい一歩—21世紀の福音宣教に向けての小教区再編成—』を発表しました。これを受けて再編成プロジェクトチームは2002年6月29日、『福音的使命を生きる—新しい一歩のための提案—』をわたくしに答申しました。多くの時間を使ったさまざまな討議・話し合いなど(『教区集会』も行われた)を経て2003年4月20日、復活祭の日、22の宣教協力体を正式に発足させました。また教区本部の改組を行い、新たに法人事務部、宣教司牧部、社会福音部、広報部を設置し、それぞれ部長を任命いたしました。さらにまた2004年1月17日には、長らく解散状態であった教区の宣教司牧評議会を新たに発足させることができました。

『福音的使命を生きる—新しい一歩のための提案—』で示された、教区として取り組むべき3つの優先課題についてはそれぞれに担当司祭を任命し、この担当司祭を軸として優先課題への取り組みを行っております。

本日はこの機会に3つの優先課題への取り組みの状況について皆様に申し上げます。

『福音的使命を生きる—新しい一歩のための提案—』にあった3つの優先課題とは

 (1) 教会の福音的使命にたずさわる信徒の養成

 (2) 外国人の司牧と困難を抱えた外国人へのサポート

 (3) 心の病や心の傷を負った人々へのサポート

です。

 

1.いわゆる「信徒養成」について

「教会の福音的使命にたずさわる信徒の養成」という課題については、その基本的な考え方を、宣教司牧評議会や司祭評議会で検討していただいている段階です。大きな目標として、教会に集うすべての人(信徒・求道者・修道者・司教・司祭・助祭)の霊的成長ということを目指していきますが、その基礎となるものは、小グループでの分かち合いや小共同体づくりであると考えています。この基礎の上に、宣教協力体・聖堂共同体の成長のためのプログラムや共同体の奉仕者のためのプログラムをつくっていくことになります。

これらのプログラムは一朝一夕にできるものではなく、常に研究中という部分もありますが、少しずつでも具体的なプログラムを提案していくことを今後の課題としています。

 

2.外国人司牧と困難を抱えた外国人へのサポート

カトリック東京国際センター(CTIC)を中心に、各宣教協力体・聖堂共同体、関連諸機関と協力しながら活動しています。

困難を抱えた外国人のサポートについては、3センター(目黒、亀戸、千葉)でそれぞれ相談・支援活動を実施し、1年間の延べ相談者数は2000件、相談者の国籍も20ケ国を超えました。相談内容も在留手続(ビザ)、結婚・離婚、労働、医療、福祉、子どもの教育、事件・事故等、日常生活のあらゆる分野に及び、最近では難民認定者、難民認定申請者の相談も増えてきました。また、通訳・翻訳活動、入国管理局や警察に拘留されている人々への面会訪問も大切な活動です。

司牧活動としては、教区内での外国語の典礼・司牧サービスの提供、外国人信徒のための信仰教育テキスト・パンフレットの出版、共同体作りと司牧担当者のネットワーク化等の活動を行っています。また、外国人司牧をより充実させるために、移住・移動者の司牧のために設立され、外国人司牧に関して長い経験を有する「スカラブリーニ宣教会」よりブラジル人、フィリピン人の二人の司祭を招聘しました。彼らの協力を仰ぎながら、今後ともより細やかな司牧活動を行っていきたいと考えています。

 

3.「心のケア」への取り組み

「心のケア」の担当司祭が任命され、公表されただけで、さまざまな相談、訴えが担当司祭に寄せられています。相談者は、精神疾患を負っている「当事者」、またその「家族」からのものが圧倒的に多く、医療につながっていないケース、医療不信のケースが目につきます。この事実からも、「心のケア」がいかに深刻な課題であるかが察せられます。

今年の2月から「心のケア検討委員会」が6回にわたって開かれました。この過程で、教会を構成しているわたしたち自身が病んでいること、そして本来あるべき教会の「癒しのシステム」がよく機能していないことが改めて意識されてきました。これから「教会がしなければならないこと」「教会だから出来ること」「教会にしか出来ないこと」をしっかりと見極めて行くことが大切であると考えます。

人は一体どこで自分の「精神の問題」「心の問題」を安心して話せるでしょうか。なかなかそのような場所が見つからないというのが現状です。それだけに当事者や家族は閉ざされた世界の中でより大きな苦しみを担うことになります。これから、教会という集いの場が、当事者にとっても家族にとっても、「安全で安心できる場」として確保できるようになることを目指します。

緊急、重篤な状況に適切に対応するためには、優れた専門性が必要です。教区としての取り組みの中で、このような専門性をもった機関を知っておくこと、そことの関係性を確保しておくこと、つまり、ネットワークをつくることと情報センター的な役割を果たすことも大切です。

「東京カリタスの家」は30年あまりの歴史と経験をもっており、今後の教区の取り組みにそれを生かすことができると考えます。

「心のケア」への取り組みについては『東京教区ニュース』で「心の問題への取り組み」として連載しておりますので是非それをご覧ください。

 

 

教区本部・今後の課題

次に今後の教区としての課題について述べます。

 

1.宣教協力体について

宣教協力体の発足に際して「宣教協力体のための指針」を発表しました。この指針を再度お読みいただきたいと存じます。ここで言われていることについて、皆様の現場での経験を分かち合ってくださることを期待しております。

宣教協力体の合同堅信式などに招かれる機会が増えております。堅信の機会でなくとも宣教協力体を訪問して皆様との交流を深めたいと考えています。

先日、約4年の年月をかけてすべての聖堂共同体(小教区)の公式訪問を終えることができました。これからはまず22の宣教協力体を順次訪問することを目標にしますのでご協力をお願いします。

また、外国語ミサのグループの皆様ともできるだけ多くの機会を設けて交流を深めたいと望んでいます。

 

2.優先課題への取り組み

3つの優先課題は互いに深くかかわっています。一つの課題の3つの側面ということができるでしょう。

① すべての信者の霊的成長をいかに進めていくのか。

② 教会において異文化に生きる者同士がいかに学びあい、支えあって教会を成長させることができるか。

③ 本来病む者の集まりであったイエスの集団の意味を、今ここでどう学び、生かすのか。

ということがわたしたちの大きな課題であります。

「心のケア」への取り組みについては本年12月を目処に、具体的な方向性と内容が盛り込まれた中間報告を行えるよう務めます。

 

3.カテドラル構内のこれから

「小教区の統廃合」という課題を受け継いだわたくしは「小教区の再編成」としてそれを受け止めました。そして「小教区の再編成」を考えていく過程で、それは「小教区の」というより「教区の再編成」と言ってもよい、いや言ったほうがよいのではないか、と考えるようになりました。そしてさらに「教区の再編成」は教区本部のあり方と深い関係があると考えるようになったのです。そのためにわたくしは皆様に「教区本部の充実・強化の必要と重要性」を訴えました。

実は今年の12月8日、無原罪の聖マリアの祭日に、東京カテドラル聖マリア大聖堂は献堂40周年を迎えます。そこでわたくしはこの機会に、教区本部の中心に位置するカテドラルとカテドラル構内の在り方を改めて考えてみたいと思います。

いま検討したいと考えているのは次の4点です。わたくしは以下の課題が重要と考えています。

 

1) カテドラルは教区の典礼と祈りの中心です。このカテドラルの役割をこれからいかに強化し発展させるか(日々のミサ、教会の祈り、聖体訪問、ルルドでの祈りをどう行うのか。本当にわたしたちはよく祈っているのか)。

2) 今の老朽化の進む司教館をこれからどうしたらよいか(今の司教館は、教区本部事務局としても、司教、本部司祭や引退した司祭などの住まいとしても、不十分で不適切です。建物の構造自体が危険で、設備も限界に来ており、建て直しが必要です。教区全体の運営にふさわしい本部事務局、司祭の住まいになる建物を考えなければなりません)。

3) カテドラルを新しく位置づける。関口教会が、聖堂としてカテドラルを借りる一小教区ではなく、司教座(カテドラル)の小教区、司教を中心とした聖堂共同体であることを明確にしたい。カテドラルの運営も、司教・本部司祭とカテドラルに集まる信徒が一緒に考えて、東京教区の宣教司牧活動の中心にしていきたい。

4) そのほかにも諸課題がある。カテドラル構内にある韓人教会、カリタスの家、聖園幼稚園などもそれぞれが発展するような新しい展望を考えたい。

 

これはいわば「東京カテドラルと構内再構築」という課題です。

日本の16教区の中で東京教区のカテドラルは重要な役割を担っています。カテドラル構内に住みあるいは働くわたしたちはそのことをもっと深く自覚しなければなりません。わたくしは、多くの恵みに与っているにもかかわらず、それをよく生かしていない自分に気づきます。 

まだ語るべきことはありますが次の機会に譲ります。

最後になりましたが、この4年間わたくしのために祈り、わたくしを助けてくださったすべての皆様に厚く御礼申し上げます。またわたくしの至らなさ、過ちを寛大にゆるし、受け入れてくださった皆様にも心から感謝いたします。

 

主なる聖霊がわたしたちを照らし、強め、励ましてくださいますように。

聖母の取り次ぎを願いながら。

 

2004年9月5日


 

この文書をダウンロードできます [PDF / WORD]