お知らせ
東京教区ニュース第407号
2023年11月08日
目次
シノドスホールから-菊地大司教ローマ滞在記-
シノドス総会に参加するため、9月末から10月末までローマに滞在していた菊地大司教は、多忙な合間を縫って、自身のブログ「司教の日記」に「シノドスホールから」と題し、2回にわたってシノドスの様子を綴っている。東京教区ニュースではその投稿の一部を掲載するとともに、日々、菊地大司教から送られてきた現地の写真もご紹介する。
チャールズ・ボ枢機卿(中央:ミャンマー、ヤンゴン教区)、オズワルド・グラシアス枢機卿(中央左:インド、ボンベイ教区)と。
周りはフィリピンの若い司祭たち。この日のミサはアジアの担当だったとのこと。
2023年10月14日 (土)
ご存じのように、シノドスに参加するために、ローマにおります。日本からは司教協議会の代表としてわたし。また教皇様が任命された司祭や信徒修道者の代表として、また議長代理として西村桃子さん(セルヴィ・エヴァンジェリー)。さらに専門家として弘田鎮枝さん(ベリス・メルセス宣教修道女会)と、三名が日本からの参加者ですし、日本語話者とすれば、ルクセンブルグのオロリッシュ枢機卿様も含まれて、4名となります。
正直、プログラムがタイトです。イタリア独特のシエスタタイム(昼寝時間)が午後に3時間ほど入るので、微妙な感じですが、朝は8時45分に始まり、12時半まで。その後、それぞれの宿舎に帰り昼食。午後4時に再び集まって午後7時半まで。それから宿舎に戻って夕食です。
会場には35の小グループ用テーブルがあり、それぞれに参加者11名ほどと一名の司会役の席が指定されており、それぞれにタブレットが置かれていて、名前がすでにスクリーンに表示されています。欠席には文書での申し出が必要で、バチカンの役所の責任者なども、ほぼすべて皆勤です。参加者は代表と専門家などを含め、400人を超えています。
毎日の様子については、東京教区のシノドス担当者である小西神父様が、短くビデオにまとめて、毎日のように東京教区から公開していますので、そちらを参照ください。実はわたしもそれを毎日見ていて、現場にいては気がつかなかったこともあり、驚かされています。
会議は基本的に、討議要綱にあるワークシートの設問通りに進んでいます。是非、討議要綱をご覧ください。そしてそこにある設問に、それぞれの共同体で分かち合いをしていただければと思います。また今回はこれが強調されていますが、霊における対話(霊的な会話)の方法が、分かち合いの方法として強調されており、この方法を、教会全体に取り入れたいという思いが感じられます。聖霊の導きを共同体として識別するための道です。討議要綱の日本語版は、カトリック中央協議会のHPからダウンロードできます。是非ご覧ください。
会議は、それぞれの課題ごとに、まずミサで始まり、次に総会議場で霊的な講話、全体的な解説と具体系な体験の分かち合いがあり、その後に、各テーブルに分かれた小グループごとの霊的会話に入ります。そして全体会議で小グループの発表と自由討議。そしてもう一度グループでの最終レポート作成となります。教皇様は、全体討議には参加されます。車椅子での移動ですが、誰よりも早く会場に現れ、参加者に挨拶する時間を設けてくださっています。
小グループでの霊的な会話は和やかに進んでおり、全体として緊張した雰囲気は全くありません。また事前に言われていたような特定の課題について、議論が巻き起こっているということもありません。全体として祈りの雰囲気に包まれて、共に歩もうとする姿勢が感じられます。
チャールズ・パルマー=バックル大司教(ガーナ、ケープ・コースト教区)、パプアニューギニアの女性信徒と。
バックル大司教は菊地大司教がガーナのコフォリドゥア教区で宣教していた当時、当地の司教を務めていた。
体調的にきつかったのは、出発の前夜、深夜になって予定していたルフトハンザ航空からメールが入り、羽田からミュンヘンは運航がANAなのでよいものの、ミュンヘンからローマがその日ほぼすべて欠航になりました。そこでほかの航空会社のサイトに軒並み当たり、なんとかターキッシュ(トルコ航空)のチケットを見つけ、即座に、イスタンブール経由のターキッシュを予約し、ルフトハンザをキャンセルして払い戻し手続きをしたら、もう出発日の朝でした。
そのままローマに入り、ローマ郊外のサクロファノでの三日間の黙想会の後、開会のミサが野外ミサで、これがまた暑くて長い。その日の夜から、首筋あたりに湿疹が出て、そろそろ落ち着いてきましたが、かゆみに悩まされ続けています。加えて、泊めていただいている宿舎が、先日引退されたボッカルディ大使の手配で、教皇庁の外交官養成所なのですが、バチカンまで微妙な距離です。歩けば25分程度ですが、朝晩は涼しくなってきたものの、日中は30度近い暑さのローマです。これで、朝出かけ、昼休みに戻り、また夕方出て夜遅くに戻るのは、結構大変です。
やっと半分終わりました。第二週目の土曜日です。あと二週間。乗り切ることができるように、皆様のお祈りを、どうかお願いいたします。またシノドス参加者が聖霊の導きを識別し、教会の進む方向を見極めることができるように、どうぞお祈りください。
2023年10月22日 (日)
シノドスは第三週が終わり、残すところあと一週間です。
ローマは、ここ数日小雨がちらつき、朝晩はちょっと涼しくなってきましたが、それでも日中は蒸し暑い日が続いています。このところ悪化しているガザの状況により、シノドスホールでも様々な声が上がっています。毎日の祈りの中では、特に中東における平和を求める祈りが捧げられ、また中東諸国の代表を通じて、自由討議の枠組みの中で、命の危機に直面する人々の声がシノドスホールに響き渡っています。これらの声を受けて、教皇様は、来たる10月27日を、平和のために特別に祈る日と定められました。
また国際カリタスでは、19日の木曜日の夜にガザでミサイル攻撃を受けた教会において、避難していた住民と共に、支援活動に当たっていたカリタス・エルサレムの職員が殺害されたこともあり、今回の事態を非常に憂慮しています。また人道支援も滞っており、攻撃の当事者に、市民の命を第一に保護する姿勢をとるように呼びかけています。
さて今週のシノドスです。16日月曜日は、シノドスの歴史に刻まれる出来事がありました。アジアの女性として初めて、日本の西村桃子さんが議長代理として、全体の司会をされました。この日は教皇様も出席され、西村さんは教皇様の隣で、司会進行をされていました。アルゼンチンで宣教者をしていた西村さんは、教皇様とはマテ茶で繋がるお友達です。
2週目の分かち合いメンバーと。右から5番目は、今回議長代理も務めた西村桃子さん。右端のジーンズ姿の男性はドバイから参加した信徒とのこと。
小グループの分かち合いのレポートを書くために、事前の調査で、英語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語などの話者の参加者の中から、秘書が事前に指名されています。秘書役の皆さんが仕上げてくるレポートを読むと、とてもではないですが、英語の通常の話者ではないわたしには、ボキャブラリーの点からも、神学的知見からも、秘書はできないと感じさせられるほど素晴らしいレポートがたくさん仕上がってきています。
これらすべてをまとめて文書を作る神学者のチームがあり、さらに参加メンバーからもそこに選出されてさらに読み込む委員会も設置されていますので、最終的にどのようにまとめられるのかが楽しみです。
ただ今回は、膨大な文書を作成することよりも、来年開催される第二会期をにらんで、短い文書が用意される予定で、加えて「神の民への手紙」と題するシノドスからの呼びかけ文が用意されることになりました。これは最終週に話し合われ、採択される予定です。
19日木曜日の会議終了後19時15分から、サンピエトロ広場の中にある難民のモニュメントの前で、教皇様が司式されて、移住者と難民のための祈りが捧げられ、シノドス参加者全員が祈りを共にしました。このモニュメントの中には、聖家族が描かれていると言われ、多分左下の写真の中央の人物像が、聖家族かと思われます。大工道具を手にした男性と、その後ろで幼子を抱える女性です。
「Angel Unawares(気づかない天使たち)」と題されたモニュメント。このモニュメントの前で移住者・難民のための祈りが行われた
20日金曜日お昼休みの間、午後2時15分から、定例で行われているシノドスの記者会見に参加するように呼ばれ、記者の皆さんに少し話をするチャンスがありました。わたしを含め4名の参加者がこの日は参加しましたが、記者会見は広報省長官のルフィーニ氏によって毎日行われており、シノドス参加者が数名ずつ、それぞれの体験を語っています。
わたしも、アジアでは、特に日本がそうであるが、沈黙することが好まれ、積極的に声を上げることが苦手なので、霊的会話のような小グループでの分かち合いは、参加者全員が声を上げ、心に抱いていることを表現する機会になるので、重要であること。アジアの大陸別総会でも小グループによる霊的会話は行われ、非常に多くの人に自分の思いを表現する手段として好評であったが、それは今のシノドスの場でも同様であること。また国によって言葉が異なり文化が異なる中で、普遍教会も異なる現実の中で信仰を生きている。その中でアジアは特に混沌としているが、普遍教会全体のシノドスの歩みを考えるとき、一つの型にはめるのではなく、それぞれの地域の文化や歴史を考慮することが大切であること。シノドス性は同一性ではないこと。また国際カリタスの総裁として、カリタスの愛の奉仕の業こそが、シノドス性を生きるものであり、カリタスは今も、またこれからも、教会にとってのシノドス性を生きる重要な道具となること。カリタスは世界で、困難に直面する人の尊厳を守り、促進し、上下ではなく同じ地平に立って、支え合いながらともに歩むことで希望を生み出してきた、まさしくシノドス的存在であること、などを話させていただきました。
明日、22日の日曜日は、午前中にローマの日本人会のミサに招かれています。あと一週間です。残念ながら最初から最後まで体調は完璧ではありませんでしたが、最終日までしっかりと努めることができるようにお祈りください。またシノドス参加者全員のために、特に教皇様のために、お祈りください。加えて、特に中東における平和のため、またウクライナやミャンマーなど、混乱する地の平和のためにもお祈りください。
※菊地大司教による「週刊大司教 シノドス号外」と、小西広志神父(教区シノドス担当者)による「毎日のシノドス解説」は、東京教区youtubeチャンネルからご覧になれます。
アンドレア・レンボ被選補佐司教 司教叙階式のお知らせ
日時:12月16日(土)12:00~
場所:東京カテドラル聖マリア大聖堂
司式:菊地功大司教
◉当日はカテドラル構内に駐車はできません。公共交通機関をご利用ください。
◉叙階式準備のため、午前中は聖堂に入ることはできません。
◉受付は午前11時から開始いたします。受付開始時間前の構内での待機はご遠慮ください。
◉多数の参列者が予想されますので、一般の方の入場に制限をかける場合があります。聖堂に入れない場合の別室、パブリック・ビューイングの準備はありません。
◉小教区、修道会(共同体ごとではありません)、諸団体からの参列者の内、2名は代表者として聖堂内に座席を準備いたします。それ以外の方は一般での参列とご理解ください。
◉式中、聖堂内での撮影はご遠慮ください。
◉式後、来賓、小教区、修道会の代表者の方々には、ケルンホールにて祝賀会を準備いたします。それ以外の方々にはルルド前に軽食の準備を予定しておりますが、参列者の人数によっては行き渡らない等のご無礼があるかもしれません。
神の民への手紙
教区シノドス担当者 瀬田教会主任司祭
小西 広志神父
シノドス 世界代表司教会議 第16回通常総会の第一会期が10月4日より29日までバチカンで開催されました。シノドスの参加者たちは「神の民への手紙」という文書を23日に全会一致で採択し、教皇フランシスコは25日に裁可しました。この文書についての解説を皆さんにお伝えします。
書簡の形式を採っているこの文書は、世界代表司教会議第16回通常総会からすべてのキリスト者に向けたメッセージになります。この先例のない手紙は、ローマで1ヶ月間にわたって行われたシノドスの第一会期が終わるにあたって発表されたものです。半世紀にわたる世界代表司教会議の歴史の中で初めてのことです。手紙は3ページほどの短いものとなっています。中央協議会から翻訳が発表されていますので、どうぞご覧になってください。ここでは特に注目したい点だけを指摘しておきます。
討議の様子
まず、この手紙の前半を読むと今回の会期の様子をうかがい知ることができます。教皇フランシスコによって世界中から招集された人々が一堂に会して、9月30日の黙想会から始まり、パウロ6世ホールにて3週間以上討議を重ねました。同じテーブルに着き、議論だけではなく、投票にも参加しました。これは全く初めてのことでした。そして、神の言葉に耳を傾け、他の人の体験を熱心に聴き、霊における対話を通じて、各大陸にある教会共同体のすばらしさと貧しさを謙虚に分かち合ったのです。また、他教会の人々との交流のおかげで議論がさらに深くなっていきました。
沈黙の恵み
第二に沈黙を通じてシノドスの参加者が恵みをよく味わったこともこの手紙は伝えています。紛争や難民についての危機的な状況についてのニュースが世界中から絶えず流れてくる中で、エキュメニカルな祈りの集いで十字架のキリストを観想した参加者たちは一致への渇きをこころに深く感じました。さらに、討議の始まりに教皇が呼びかけた「神を讃えなさい(LLaudate Deum)」を胸に秘めながら、大地の叫び声、貧しい人々の叫び声がいつも響いている共に住む家である地球を参加者たちは主キリストに託したのです。ですから、シノドスの会期中、聖霊は共にいてくださり、導いてくださいました。
聖霊の呼びかけ
第三に討議を重ねるうちに、次第に参加者たちは回心への強い呼びかけを感じていきました。教会の召命とは福音を告げることであって、自分のことに精力を傾けることではありません。サンピエトロ広場に暮らす路上生活者たちが「愛すること!」を教会に求めているように、この愛は、教会の燃え上がるこころとなり続けるはずです。このことは会期中の10月15日の教皇の幼きイエスの聖テレジアについてのメッセージで明らかになったと手紙は伝えています。「信頼がある」との教皇の言葉で参加者たちは意見の集約や相違、願いと疑いを自由に謙遜に言い表すことができたのです。
これからのこと
第四にこれからのことについて手紙は提案しています。つまり、来年、2024年10月に開催される第2会期へと向けて、「シノドス」という言葉が示している宣教へと向けた交わりのダイナミズムに多くの人々が具体的に参加してほしいと願っています。しかし、そういった参加は、イデオロギーのような抽象的なものではなく、教会の使徒的な伝統に根ざしたものであるべきです。今回のシノドスの開会の宣言(2021年10月9日)で教皇が指摘したように「交わりと宣教は、いくぶん抽象的なものになる危険性がある」からです。いろいろな挑戦が待ちかまえています。数え切れないほどの課題があります。第一会期のまとめの文書は、合意した点を明らかにしてくれるでしょうし、未解決の問題をはっきりとさせてくれるでしょう。そして、この先どのように取り組めばよいかを明確にしてくれます。
耳を傾ける
第五に識別のために、今、教会が必要なものを明確に指摘しています。それは聞くことです。まず、貧しい人々から始めて、すべての人々に耳を傾けることが絶対に必要です。それは教会の回心の道でもあります。特に、回心のこころで、教会のメンバーによる虐待の被害者たちに耳を傾けなければなりません。次に、すべての信徒—女性であれ、男性であれ—の声に耳を傾けなければなりません。また、カテキスタ、子どもたち、青年、高齢者に耳を傾ける必要があります。さらには家庭の声にも耳を傾けなければならないのです。聖職者、とりわけ司祭たちと助祭たちの言葉と体験に応じていく必要がありますし、さらには預言的な役割をする奉献生活者(修道者)たちの声から自分自身を問い直す必要があります。そして、同じ信仰は戴いてはいないものの、真理を求めるすべての人にも注意を払う必要があります。
歩むマリアとともに
「神の民への手紙」は「神が第三千年紀の教会に望んでおられる歩みこそが『シノダリティ』の歩みです」という教皇フランシスコの言葉を引用しつつ、恐れなく、歩みの先頭を行き、同伴してくれる聖母マリアを思い起こして締めくくられています。
イエズス会司祭叙階式
9月23日、麹町教会にて、アシジのフランシスコ森晃太郎助祭と洗礼者ヨハネ渡辺徹郎助祭(共にイエズス会)の司祭叙階式が行われた。お二人は教区の合同典礼の際、度々助祭として奉仕してくださった。森神父様、渡辺神父様、おめでとうございます。
左から渡辺新司祭、菊地大司教、森新司祭、イエズス会日本管区長佐久間神父
関町教会第二代聖堂献堂式
ミサは主任司祭の稲川保明神父他、関町教会ゆかりの司祭団によって捧げられた
去る10月1日、関町教会において、教会にとって二代目となる聖堂の献堂式ミサが行われた。関町教会の聖堂は、2011の東日本大震災を機に、耐震補強か建て替えかの議論が始まり、2013年に建て替えが決定。そこから10年という月日を経て新聖堂が完成した。なお、新聖堂のデザインは、主任司祭の稲川保明神父が2015年に「心に思い浮かんだ」スケッチを原型としている。
ミサの説教で稲川神父は「献堂式は、連願、司祭による祈り、塗油、献香、蝋燭に火を灯す等の動きがあり、それは洗礼式や叙階式と共通する部分が多い」と説明し、「聖櫃に御聖体が収められているように、御聖体を受けた人は、言わば『動く聖堂』。今日御聖体を受けたわたしたちは21世紀におけるキリストの弟子になる」と語った。
カリタス東京通信 第9回
生活困窮者支援団体・グループ交流会の開催報告
事務局 小池四郎
東京教区内では、外国人を含む生活困窮者の方々に炊き出し、子ども食堂、フードパントリー等の食糧・物資支援をしているカトリック系の団体、および、教会や信徒の関わっているグループが多数活動しています。これらに関わっている方々からの「他の団体・グループの人の話を聞きたい」という意見を受けて、これらの団体・グループで活動しておられる方々の交流会を、9月3日に関口会館ケルンホールで開催しました。主として山谷地区で活動する4団体、各地域で活動する12グループの合計16の団体・グループ、約30名の方々が参加しました。
まず、菊地大司教より「愛の奉仕は教会の本質の一つであり、それを実践する団体やグループはそのおかれた場所で各々の愛の奉仕を行うが、それは孤立して行うのではなく、互いに協力し合うことでより豊かになるので、このような機会に交流を深めてもらいたい」というお話がありました。次にカリタス東京常任委員長である天本神父の挨拶に続いて、参加した各グループの代表者より日常の活動の状況と課題について、短い持ち時間の中で熱のこもった発表が続きました。休憩を挟んで、5つのグループに分かれて意見交換会に入り、日常の活動の中で感じていること、困難に感じていること、教区にやってもらいたいこと等を中心に活発な話し合いが行われました。その後、各グループの報告者から次のような意見の発表がなされました。
1 ニーズによっては支援物資の過不足が生じることがあり、情報共有できるシステムがあれば、グループ間でそれらのやり取りをすることで物資の有効活用ができる。
2 病気やホームレスなどの問題に直面している方々に寄り添うために、他のグループと知識と情報の共有が必要。
3 高齢化に伴う孤独化問題、シングルマザー等若い世代における貧困の増加など、支援を必要としている方々の状況が変化しており、支援する側もそれに応じた支援をする必要がある。
4 外国人については支援を求める方々の国籍も、その幅がアフリカやスリランカ等に広がってきており、それに伴い支援物資の内容が変化している。
5 困難なケースの場合、外部団体・行政との繋がりと信頼関係の構築が組織として必要になる。
6 司祭や共同体の理解を得られて活動できることに感謝しているが、活動に消極的な主任司祭もいる。
7 教区としては、環境にやさしい容器・野菜のサプライ等の課題解決への支援と、人材確保のためのSNSの活用促進等を検討してもらいたい。
8 活動資金の調達に苦労している。
9 フードパントリーや炊き出しの利用で、「困っていないように見える方が支援の列に並んでいるのではないか」という苦情に対して、「その人はそれだけ困っているかもしれない」「自分以外の人のために、受け取っているのかもしれない」といった説明で反発を和らげている。
最後に、カリタス東京事務局より、これらの意見を踏まえて、今後継続して参加者の協力を得ながらネットワーク整備と課題解決に取り組むという方向性をご説明しました。
CTIC カトリック東京国際センター通信 第272号
韓国を訪ねて
朝鮮半島に隣接する中国の朝鮮族自治州出身の両親を持つ詠さん(仮名)は日本で生まれ、中学校一年までは両親と関東圏で暮らしていました。しかし、入管が両親に対して「在留を許可しない」という厳しい判断を下した時、一人日本に残ることを決めました。成績優秀な詠さんにとって、言葉や文化を全く理解できない中国に行くことは教育の機会を失うことになるからです。CTICに委ねられた詠さんは、中学でも高校でも優秀な成績を収めていましたが、高校2年の春、「日本でどんなにいい大学に入ることより、両親と暮らしたい」と、仕事を見つけて韓国に渡っていた両親と共に韓国で暮らすことを選びました。韓国語や韓国文化は多少理解できるからです。
中国籍の詠さんが韓国に渡るためにはビザ(査証)が必要です。私たちは韓国大使館で手続きを行ったのですが、ビザは発給されませんでした。政治的なことも絡んでいるので詳細を記すことはできませんが、詠さんが日本から韓国へ行く道が閉ざされたのです。そのため、詠さんが一旦中国に行き、中国で韓国行きのビザ申請を行い、許可を得て韓国に入国するしかありませんでした。
失敗が許されない最後の方法なので、韓国側に力のある協力者が必要でした。藁にも縋る思いで「北東アジアの平和と和解」活動を通じて韓国にネットワークを持つイエズス会の中井神父に相談したところ、すぐに韓国の関係者に連絡を取ってくれ、私はその支援者たちに会うため中井神父と共に韓国に渡りました。
仁川空港から直行したイエズス会人権連帯研究所のキム・ミン神父は、詠さんを留学生として入国させることを勧め、受け入れてくれるカトリック学校を探すこと、学費支援を行う団体と交渉することを約束してくれました。また、これまで日本で日本名を使って日本人と変わらない生活を送って来た詠さんがその名を失くし、「日本で育った中国人」として韓国で暮らす時に直面するであろうアイデンティティクライシスについて、「必要なら専門のカウンセラーを紹介します」と安心させてくれました。
何より私を驚かせたのは、キム・ミン神父の「これまで同胞のためによくしてくれてありがとう。これからは私たちに任せてください」という言葉でした。同じように「私たちの同胞を助けてくれてありがとう」そんな言葉をかけてくれたのは、議政府教区移民・難民センターのカン・ジュソク神父でした。センターには韓国に移住して来た多くの若者が集まっていました。そこで働くパスカル神父は、在留資格、入管制度に精通しており、詠さんのために力を尽くしてくれることを約束し、その日からLINEグループの中心となって詠さんのご両親や私たち関係者に、手続きを円滑に進めるための指示を次々と出してくれています。現在、中井神父、キム・ミン神父、カン・ジュソク神父、パスカル神父は、連絡を取り合いながら、詠さんの韓国入国と、その後の生活が確かなものとなるよう力を尽くしてくれています。
思いもかけず詠さんの問題を韓国のカトリック教会の方々と共有することとなったおかげで、私は、韓国カトリック教会のしっかりとした外国人支援の体制、準備の整ったたくさんのスタッフ、そして立場を超えて協力し合うその在り方を知ることができました。この大きな恵みを、今後のCTICの、そして東京教区の活動に活かしていければと思っています。
相談員 大迫こずえ
右より イエズス会人権連帯研究所(ソウル)キム・ミン神父、イエズス会下関労働教育センター中井淳神父、筆者
カリタスの家だより 連載 第157回
子どもの家エランの夏祭り
子どもの家エラン
児童発達責任者 中村祐子
子どもの家エランは3歳から6歳の、発達に遅れやでこぼこのあるお子さんが通う発達支援施設です。
9月15日(金)は、みんなが楽しみにしていた夏祭り。ところが……
通り雨すら降らない日がずっと続いていたのに、その日だけが雨予報!?しかも、ゲリラ豪雨の予想。職員は数日前から天気予報とにらめっこ。当日の朝はとってもいいお天気。いける!きっとできる!けれど、その思いを裏切るかのように昼過ぎから豪雨。準備を進めつつ、雨雲レーダーに一喜一憂。午後3時、決断の時。「よし、やろう!」
「開催します」の連絡にきっと誰もが「なに?!」と驚いたことでしょう。「本当にやるの?」と言いながらも退職した職員やボランティア、実習生の方々が開始2時間前から続々集まって来てくださいました。子どもたちの何人かはお天気を見て欠席となりましたが、何とほとんどの方が不安定なお天気の中、ご家族でいらしてくださいました。
雨の合間、予定通り園庭での開催。やってきた子どもたちにお菓子とジュースを配り席へ誘導し始めたその時、大粒の雨が空から落ちて来ました。そんなこともあろうかとボランティアさん方と普段使っているお部屋の模様替えをしておいたので、すぐに子どもたちを誘導。子どもたちはお部屋の中、保護者の皆さんは軒下での参加に急遽変更。ボランティアさん方の機転と素早い行動に助けられ、子どもたちは誰一人として戸惑う事無く着席しました。場が整うまでの間、子どもたちをひきつけてくれたのは、ほんの10日ほど前に出産した産休中の職員とその赤ちゃん。ご実家からモニター越しに子どもたちとやり取りしてくれました。
夏祭りの出し物の第一弾は、職員による音楽会。幕開けは、「エレクトリカルパレード」。ミッキーやドナルド、ティガーが演奏しているような演出(写真)に、子どもたちはニコニコ笑顔です。次は「ジャンボリミッキー」。こちらは普段の音楽の活動でなじみ深いので、みんなノリノリです。締めはバケツの太鼓で「輝け囃子」。職員がバケツを叩くのを子どもたちは不思議そうに見ていました。「ジャンボリミッキー」と「輝け囃子」は、その場の職員の演奏と産休中の音楽療法士のピアノ演奏をZOOMでつなぎ、ハイブリッドで行いました。
第二弾は、夜の暗さを生かしたブラックシアター。最初は子どもたちにおなじみの「くいしんぼうおばけの歌」。「なんだろうね?なんだろうね?」のセリフに答える元気な声がお部屋の中に響き渡りました。2曲目は「素敵な花火」。非常勤の職員がとっても素敵な花火を試行錯誤の末に作り上げてくれました。その美しさに子どもたちだけでなく、保護者の方もうっとりしたようです。そのブラックシアターの裏では、職員が空とにらめっこ。本物の花火を見せてあげたいと祈るような気持ちでいました。その願いが通じたのか、音楽会が終わると雨が止み、子どもたちは保護者と園庭へ。次々上がる花火にみんな口をぽかんと開け、夢中で見ていました。
雨のために参加を見送ったご家庭にはZOOMで生配信もした今年の夏祭り。コロナの流行で一気に普及したハイブリッドのノウハウが図らずも役に立ちました。
当日子どもたちに披露したブラックシアターの動画をyoutubeに載せています。ご興味のある方は下記のリンクからご覧ください。
福島の地からカリタス南相馬 第26回
援助マリア修道会
鈴木 幸子
現地に住んで、祈りつつ 共に歩む
10月4日から、シノドス第3番目の第1会期がローマで始まりました。
「共に歩む教会」 今回は何かを決める事ではなく、みんなが祈りをもってシノドスに参加するとのこと。
素晴らしいと感じています。現実の生活と照らしながら、シノドスに祈りで参加したいと思っています。
私は、東日本大震災で、地震・津波・原発事故との3重苦を味わっている南相馬市の「小高」と言う場所に2年半前に派遣されました。
小高は、原発から20㎞圏内に位置し、町全体に避難指示が出され、5年間人っ子一人いない闇の町になった所です。
5年たって、人がボチボチ戻って来ましたが、ゼロからの町つくりは大変です。私たちは、どんな手伝いができるのでしょうか。大震災の体験のない私達には、人々の大変さは分かりませんが、先日散歩をしていた時、出会った方に「散歩のついでに私の家によられませんか」と言ったところ「あのキリストさんの家ね」と言われました。修道院を知ってくれていたことが嬉しかったです。共にいることの大切さを感じた時でした。
小高の町にポツンとある修道院にはご聖体があり、ご聖体の前で、「小高に住む人々のため、町つくりのために頑張っている人々のため」毎日祈っています。
聖霊は、私たちをどこに導いてくださるのでしょうか。私たちの小さな祈りによって、主が人々を支え導いてくださると信じています。
また、毎日「カリタス南相馬」の中で、人々と共に働き、厳しい現実の中で共に祈り、命の尊さを伝えて行く事の大切さも味わっています。
目に見える復興は、少しずつ変わって行きますが、地元の方は「心の復興・内面の復興を考えて!!」と訴えています。まさにキリスト者の出番と感じています。
地域にあって、キリスト者がどのような存在であるべきか、祈りをもって探しつつ、生活を通して、シノドスの歩みに一致して、共に歩むことができますように。
編集後記
友になる。好きになる。出会ったなら、それだけでいい。
好きであるほど一緒にいたい。一緒にいればいるほど、支えることもあれば、支えられることもある。
しなければならないでも、すべきでもない。せずにはいられない、させてほしい。愛とはそんなものではないだろうか。(Y)