大司教

週刊大司教第百五十六回:四旬節第一主日

2024年02月19日

今年は復活祭が3月の末日と、例年より早い暦となっているため、すでに四旬節が始まりました。先日の水曜、2月14日が灰の水曜日でした。2月18日の日曜日は、四旬節第一主日です。

四旬節は、信仰の道を歩んでいるものにとって、ふさわしく神の方向を向いて歩んでいるのかどうかを見つめ直す回心の時であり、同時に、復活徹夜祭での洗礼式を目指して、洗礼の準備を続けてきた方々が、個人の信仰における決断の最後の仕上げとして、教会共同体と歩みを共にし始める時でもあります。

多くの小教区で、四旬節第一主日に洗礼志願式が行われますが、これは洗礼への準備が、個人的で内面的な準備の段階から、共同体としての歩みに向けた公の準備の段階に移行したことを象徴しています。四旬節の間、教会共同体は、新しく共同体の一員となろうとしている人たちと、一緒に歩む道のりを開始します。信仰における仲間を迎え入れるプロセスが始まったと認識ください。

この一週間、日本の司教団は定例司教総会を行いました。今回は、昨年12月に司教叙階されたアンドレア・レンボ司教様にとって、初めての司教総会でした。日本の司教全員が集まり、様々な課題について議論し、また共に学び合いました。議決などについては、今後、カトリック新聞などで広報されることになりますので、そちらをご覧ください。なおアンドレア司教様は司教団の中で、司祭生涯養成委員会のメンバーとして関わってくださることになりました。わたしたち司教団のためにお祈りくださっている皆さまに、心から感謝申し上げます。

先日の月曜日、2月12日午前中に、東京教区内で活動するカトリックスカウトが東京カテドラルに集まり、BP祭ミサが捧げられました。ミサは私が司式いたしました。久しぶりに聖マリア大聖堂に一杯のスカウトが集まり、互いの絆を確認しました。BP祭は、スカウト運動の創始者であるロバート・ベーデン=パウエル卿の誕生を祝って、その誕生日が1857年2月22日であることから、それに近い日を選んで行われています。今年は5月に代表団がケルンを訪問することにもなっており、その方々へのエールも送られました。

既報ですが、この東京のカトリック・スカウトの代表団は、ケルンでの「アルテンベルグの光」の行事に参加することになっています。「アルテンベルグの光」については、こちらのリンクから、東京教区ニュースの記事をご覧ください

以下、17日午後6時配信、週刊大司教第156回、四旬節第一主日のメッセージ原稿です。
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四旬節第一主日
週刊大司教第156回
2024年2月18日前晩

マルコ福音は、イエスの物語を、簡潔に、洗礼者ヨハネから洗礼を受けられた話ではじめ、そして荒れ野における40日の試練の物語と続けています。この簡潔な荒れ野の試練の物語のなかで、福音は三つのことを伝えようとしています。

まず第一に、イエスは聖霊によって荒れ野へと送り出されました。荒れ野とは、普通で安全な生活を営むことが難しい場であります。いのちを危機に陥れるありとあらゆる困難が待ち構えていることが容易に想像できるにもかかわらず、イエスは聖霊の導きに身をゆだねました。聖霊の働きと導きに恐れることなく完全な信頼を寄せるイエスの姿勢が記されています。

そして第二に、40日にわたって荒れ野でサタンの誘惑を受けられたと記されています。逃げ出すことが出来たのかも知れません。しかし聖霊の働きと導きに完全に身をゆだねたイエスは、困難に直面しながらも、御父の計画に信頼し、その計画の実現のために配慮される御父への信頼のうちに、希望を見いだしていました。

三つ目として、イエスは荒れ野での試練の間、人の命を脅かす危険に取り囲まれながらも、天使たちに仕えられていたと記されています。すなわち困難に直面する中で、聖霊の働きと導きに身をゆだね、御父の計画に信頼を置くものは、神の愛に基づく配慮に完全に包み込まれ、それがために命の危険から守られることが記されています。

荒れ野での40日間の試練は、身体的な困難を乗り越えただけではなく、また心の誘惑に打ち勝っただけではなく、信仰、希望、愛を改めて見いだしそれを確信し、そこから力を得た体験です。信仰、希望、愛に確信を見いだしたとき、イエスは福音を宣べ伝えるためのふさわしい「時」を見いだしました。

四旬節は、わたしたちが信仰の原点を見つめ直し、いつくしみに満ちあふれた御父の懐にあらためて抱かれようと心を委ねる、回心の時です。わたしたちも、信仰、希望、愛に生きている自分の信仰を見つめ直すことで、神のあふれんばかりの愛といつくしみのうちに生かされていることを改めて確信し、その確信に基づいて、この世界で福音をのべ伝えるためのふさわしい「時」を見いだすよう招かれています。

そのために教会の伝統は、四旬節において「祈りと節制と愛の業」という三つの行いで、自分の信仰の振り返りをするように呼びかけています。また四旬節におこなわれる献金は、特に教会共同体の愛の業を目に見えるものとする象徴です。日本の教会では、四旬節の献金はカリタスジャパンに送られ、国内外の愛といつくしみのための業に使われていきます。

みなさん、この40日の期間、互いに支え合う心をもって、愛の業のあかしの内に歩み続けましょう。わたしたちの信仰は知識だけで終わるものではありません。