大司教

週刊大司教第百七回:神の母聖マリア

2023年01月03日

間もなく2022年が終わり、新しい年がはじまろうとしています。その喧噪の中で、教会は未だ馬小屋の前にひざまずき、聖家族の喜びに与りながら、神のことばが受肉し、闇に輝く光が誕生したことを祝っています。

この一年、厳しい状況はなかなか好転せず、教会活動も完全にもとの形に戻すことができていません。この困難な中だからこそ、信仰を堅く守り、教会共同体との霊的な絆を再確認することが必要です。わたしたち一人ひとりの信仰の見直しの機会として、生かしていきたいと思います。

2023年が祝福に満ちた良い年となりますように祈ります。また2023年も皆様のお祈りと支えを、お願い申しあげます。

皆様、どうぞ良い年をお迎えください。

以下、12月31日午後6時配信、週刊大司教第107回、神の母聖マリアの主日のメッセージです。

神の母聖マリア
週刊大司教第107回
2023年1月1日前晩

新しい年、2023年が始まります。この3年間、わたしたちは感染症という大きな不安のうちに取り残され、まるで暗闇の中を手探りで歩いているかのような状況でした。加えて、東京教区にとっては姉妹教会であるミャンマーにおけるクーデターやその後の混乱、ロシアによるウクライナ侵攻とその後の戦争状態、さらには日本を含め世界各地での暴力的な蛮行の頻発。神が賜物として与えてくださったいのちに対する暴力が止むことはなく、あまつさえ暴力に対抗するためには暴力が必要だという機運まで高まってしまいました。暴力の結末は死であり、いのちの創造主である神への挑戦であることを、一年の初めにあらためて強調したいと思います。

主の御降誕から一週間、御言葉が人となられたその神秘を黙想し、神ご自身がそのあわれみといつくしみに基づいて自ら人となるという積極的な行動を取られたことに感謝を捧げる私たちは、暦において新しい一年の始まりのこの日を、人となられた御言葉の母である聖母に捧げ、神の母聖マリアを記念します。

ルカ福音は、「聞いたものは皆、羊飼いたちの話を不思議に思った」と簡潔に述べることで、驚くべき出来事に遭遇し、その意味を理解できずに翻弄され戸惑う人々の姿を伝えています。暗闇の中に輝く光を目の当たりにし、天使の声に導かれ聖家族のもとに到達したのですから、その驚きと困惑は想像に難くありません。しかし福音は、「マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた」とも記します。神のお告げを受けた聖母マリアは、その人生において常に、神の導きに思いを巡らせ、識別に努められた、観想を深めるおとめであります。あふれる情報に振り回されながら現代社会に生きているわたしたちにとって、常に心を落ち着け、周囲に踊らされることなく、神の道を見極めようと祈り黙想する聖母の姿は、倣うべき模範であります。

教皇様は、世界平和の日にあたりメッセージを発表されています。コロナ後の世界の歩むべき道を見据えながら、連帯のうちに支え合って歩み続けることの必要性を説いておられます。わたしたちは、この新しい一年を、あらためて連帯を深め、互いに耳を傾けあい、支えながら、聖霊の導く先を探し求めながら歩むときにしたいと思います。