教区の歴史

教区の歴史

東京教区年始の集い(白柳枢機卿追悼)ミサ説教

2010年01月10日

2010年1月10日 14:00 東京カテドラル聖マリア大聖堂にて

 

Caritas Christi Urget Nos「キリストの愛がわたしたちを駆り立てる。」

この聖パウロの言葉が白柳枢機卿様の枢機卿としてのモットーでありました。枢機卿様はこのことばをご自分の生涯の指針とされ、キリストの愛に促され動かされ駆り立てられて、81年の生涯を神におささげになりました。長い年月に及ぶ、司教、大司教、日本カトリック司教協議会会長、枢機卿としての任務は非常に重いものでありました。そのために枢機卿様は大きな忍耐を忍ばれたことと存じます。生涯の最後の5ヶ月の闘病生活は枢機卿様にとって大きな試練であり、十字架の道であったと思います。枢機卿様はこの人生最後のときにキリストの死と復活の神秘を体験されました。そして2009年12月30日、地上の一切の務めと苦しみから解放されて、天の父のもとへ帰られました。今わたしたちは、慈しみ深い天の父が枢機卿様の生涯の労苦に豊かに報いてくださいますよう祈ります。わたしたちは今、枢機卿様の遺志を大切にしながら、日本における福音宣教のために、日本社会の福音化のために力を合わせて前進していきたいと存じます。

本日の第2朗読で使徒パウロは教えています。

「わたしたちの救い主である神の慈しみと、人間に対する愛とが現れた時、神は、わたしたちが行った義の業によってではなく、ご自分の憐れみによって、わたしたちを救ってくださいました。」

わたしたちが救われるのは律法を実行して義とされることによるのではなく、ただキリスト・イエスによって示された神のあわれみを信じる信仰によります。わたしたち教会の使命は、この、キリストにおいて完全に実現した神の愛の証人となる、ということです。わたしたち司教・司祭はその教会の使命を実行するため公の奉仕者です。司祭は教会を代表してキリストの愛を現し、伝え、実践するという任務を受けています。現代は特に生きることが難しい時代です。多くの人が苦しみ、悩み、迷っています。叙階の秘跡により、司祭は司教の協力者となり、すべての信者が神の愛を生きるよう助け導く、という任務を受けました。また、すべての信者が、現代の人々に、神が人々をかけがえのない者として大切にしてくださる、ということを伝え、表すよう励ますという務めを受けています。

おりしも2009の6月19日(イエスのみ心の祭日)から今年の6月11日(イエスのみ心の祭日)までは司祭年であります。

教区の司祭の現状を見ると、非常に厳しいものがあります。高齢化が進み、召命は減少し、病気の司祭、疲れている司祭も少なくはありません。わたしたちは真剣に司祭の心と体の健康の問題、そして召命促進を考えなければなりません。司祭の休養、休暇、サバティカル、司祭の年の黙想、司祭の月例集会などの在り方を根本的に見直さなければならないと思います。今年の司祭評議会にはこの課題の検討をお願いします。

またさらにわたしたち司祭は、自分たちの日々の霊的生活について、真剣に反省をしなければなりません。「今の時代、若者たちはわたしたちを見て、司祭になりたいとは思わないだろう」と言った人がいます。そうかもしれません。今、実にわたしたち自身の生き方、在り方、生活が問われています。わたしたちの霊性が問われています。

司祭職の危機は日本だけではなく世界規模の現象ではないかという気がします。FABC(アジア司教協議会連盟)の聖職者局でも、司祭について、次のような問題点が指摘されています。

「司祭の務めへの熱意の欠如、自己の霊的生活への無関心、司教への協力と忠実の問題、司祭団諸行事への参加の低下、自己の説明責任の欠如、性的問題への関与、自分に委ねられた信徒を司牧するに際しての未熟さ、など。」

東京教区の優先課題の一つは「信仰の生涯養成、すべての信者の霊的成長」であります。この課題は当然、司教・司祭にも適用されなければなりません。そこで、2010年は東京教区の司祭の安息年にしたいと思います。司祭の安息年は、司祭の反省、回心、祈り、学び、休養、休息、そして霊的刷新の年であります。

カテドラル構内再構築は今進行中です。新しい司祭の家は今年11月には完成の予定です。それにあわせてわたしたち司祭団の霊的刷新という再構築が行われなければならないと考えます。

わたくしは2003年2月24日、宣教協力体の発足に際して「カトリック東京大司教区 宣教協力体のための指針」を発表いたしました。これは司祭と信徒が互いに尊重しながら新らしい教会共同体を建設してほしい、という願いを込めて作成し、お届けしたものです、この機会に再読していただき、すべての信者の霊的成長のための課題として取り上げていただきたいと思います。司祭・信徒の間のあるべき協力関係についてより具体的で踏み込んだあり方をご検討いただきたく、お願いいたします。

東京教区の優先課題には、さらに「多国籍教会としての成長」と「教会としての心の問題・心のケア」が挙げられます。後者については昨年秋に教区主催で「心のセミナー」を開催し大きな反響がありました。引き続き本年も開催する予定です。

「あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」と父なる神はイエスに言われました。そのイエスによって選ばれた神の民がわたしたちです。「わたしの心に適う者」といわれたイエスからは程遠い、弱く、罪深いわたしたちです。しかし、神に愛された者として、神の慈しみに信頼する者として、東京教区の使命の遂行に励んでまいりたいと存じます。

2014年には東京カテドラル献堂50周年を迎えます。主なる神が私たちに聖霊を送り、わたしたちを清め、わたしたちを照らし、わたしたちを、謙虚な神の僕として支え、知恵と勇気に満たされた奉仕者として導いてくださいますよう、祈りましょう。