お知らせ

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教皇レオ14世の誕生にあたって

2025年05月10日

教皇レオ14世の誕生にあたって

5月8日夕刻、バチカンのシスティーナ聖堂に集まったわたしたち133名の枢機卿団は、前日7日の夕刻に始まった教皇選挙における第4回目の投票で、兄弟であるロバート・フランシス・プレヴォスト枢機卿を、第267代目の教皇に選出しました。

同枢機卿は枢機卿団の前で、首席枢機卿代理のピエトロ・パロリン枢機卿からの問いかけに答えて選挙の結果を受諾し、「レオ」と名乗ることを宣言されました。教皇レオ14世の誕生です。

レオ14世は、アウグスチノ修道会に属する修道者であり、また米国出身者として初めての教皇となられましたが、アウグスチノ修道会の総長を務めた経験や、ペルーにおける豊富な宣教師としての体験、さらにはペルーで教区司教として務めておられたこともあり、福音宣教の現場に精通しておられる教皇様です。また直近ではバチカンの司教省長官を務められ、司教の役割についても精通しておられます。その意味で、教会の司牧の現場と行政の現場の両方に深い知識と経験を持つ、力強い牧者の誕生であります。

教皇選挙の直前、フランシスコ教皇が帰天された翌日から教皇選挙の前日まで、日曜と5月1日を除いて毎日開催された枢機卿団の総会には、毎回、180名近い枢機卿が参加し、日本から参加したわたしや前田枢機卿様を含め、ほぼ全員が発言する機会を与えられました。その中で繰り返し強調されたのは、教皇フランシスコの類い希な深い霊性に基づく決断力と行動力への感謝の言葉であり、同時に教皇フランシスコが残された道を継続して歩み続けることの必要性でありました。しかしながら枢機卿団は、教皇フランシスコの後継者を探しているのではなくて、使徒ペトロの後継者を捜し求めているのだということを、皆が心に深く留めていました。枢機卿団が祈りのうちに求めたのは第二の教皇フランシスコの誕生ではなく、主ご自身から牧者となるように委ねられた教会を忠実に導く使徒ペトロの後継者でありました。多くの枢機卿が、多様性を尊重しつつも、信仰における明白性を持って、教会が一致することの重要性を強調されました。

これから教皇レオ14世がどのような司牧の道を進まれるのかは未知数です。教皇フランシスコとは異なる道を歩まれるかもしれません。引き継がれることも多くあるでしょう。そういった教会の現実の中で、ペトロの後継者に聖霊の豊かな祝福と、護りと、導きがあるように、教皇様のために日々お祈りいたしましょう。

サンピエトロ広場での第一声で、教皇レオ14世は、キリストの平和を確立することの重要性を説かれました。また対話と出会いの重要性を説かれました。共に道を歩むことの大切さも強調されました。現代の教会における社会教説の基礎となった回勅「レールム・ノヴァールム」を1891年に発表されたのは、レオ13世でした。レオの名前を継がれた教皇様には、社会に対する教会の働きかけについての強い思いがあるものと思います。

教皇様の声に耳を傾けながら、これからともに歩んで参りましょう。

また教皇を支え歩みを共にする枢機卿団のためにも、どうかお祈りくださいますようにお願いいたします。

カトリック東京大司教区 大司教
枢機卿 菊地功