四旬節の始まりにあたって

2022年03月02日

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四旬節の始まりにあたって

カトリック東京大司教区の皆様

灰の水曜日から四旬節が始まります。今年もまた、感染症の状況の中で、安心して集まることができないままで、この季節を迎えました。これからどうなるのか、確実なことは分かりません。この困難な状況が終わりを迎えるように、いのちの与え主である神に祈り続けたいと思います。

また今年の四旬節は、大国による他国への武力行使という戦争の危機の中で始まりました。

ウクライナとロシアの国境を挟んで高まっていた緊張は、国際社会の度重なる平和と対話の呼びかけにもかかわらず、ロシアによる軍事侵攻の開始決定という残念な道をたどっています。あらためて教会は、「武力に頼るのではなく、理性の光によって-換言すれば、真理、正義、および実践的な連帯によって(ヨハネ23世「地上の平和」62)」、国家間の諸課題は解決されるべきであり、その解決を、神からの賜物であるいのちを危機に直面させ、人間の尊厳を奪う武力に委ねることはできないと主張します。

教皇様は、四旬節の始まりである灰の水曜日に、ウクライナの状況を念頭に置きながら平和のために断食と祈りをささげるようにと呼びかけておられます。神の秩序が確立された平和な世界が実現するように、政治の指導者たちが聖霊によって照らしを受け導かれ、対話を通じて解決の道を模索することを、ともに祈りたいと思います。また武力紛争という恐怖の中でいのちの危機に直面する多くの方々、特に子どもたちに、神の護りの手が差し伸べられるように祈りましょう。

四旬節は、わたしたちの信仰を見つめ直し、その原点に立ち返るときです。福音に根ざした生き方とは、御父のいつくしみを自らのものとし、それを多くの人に具体的に示す、あかしに生きることでもあり、四旬節はそのあかしのときでもあります。

教会の伝統は、四旬節において「祈りと節制と愛の業」という三つの行動をもって、信仰を見つめ直すようにわたしたちに呼びかけています。また教会は四旬節に特別な献金をするようにも呼びかけます。この献金は、犠牲としてささげる心をもって行う具体的な愛の業に他なりません。またその犠牲を通じてわたしたちは、助けを必要としている多くの人たちに思いを馳せ、傍観者ではなくともに歩む者になることを心掛けます。互いに支えあう連帯の絆のうちに、いのちを生きる希望を回復する道を歩みましょう。

小さな目に見えないウイルスの脅威は、人類の知恵と知識をもってしても、まだまだ分からないこと、コントロールできないことが、わたしたちの眼前に立ちはだかっていることを思い知らせました。まさしく、灰の水曜日に灰を受け、「あなたはちりであり、ちりに帰っていくのです」と言葉をかけられるときに、いのちを創造された神の前で、わたしたちは徹底的にへりくだって、謙遜に生きるしか道がないことを、認めざるを得ません。神のあわれみに身を委ね、その導きに心から従い、同じいのちを与えられたものとして互いに支え合い、連帯のうちに歩みをともにする決意を新たにしたいと思います。

カトリック東京大司教区 大司教
菊地功