大司教
週刊大司教九十八回:年間第二十九主日
2022年10月17日
現在、バンコクで開催されているアジア司教協議会連盟の総会に出席中です。
以下、15 日午後6 時配信の週刊大司教第98 回、年間第29主日メッセージ原稿です。
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年間第29主日
週刊大司教第98回
2022年10月16日前晩
10月はロザリオの月です。教皇レオ13世によって、10月は聖母マリアにささげられた「ロザリオの月」と定められました。そもそも10月7日のロザリオの聖母の記念日は、1571年のレパントの海戦でのオスマン・トルコ軍に対する勝利が、ロザリオの祈りによってもたらされたとされていることに因んで定められています。歴史的背景が変わった現代社会にあっても、ロザリオは信仰を守り深めるための、ある意味、霊的な戦いの道具でもあります。
教皇パウロ六世が1969年に発表された使徒的勧告「レクレンス・メンシス・オクトーベル」は、冒頭で、「諸民族の心と精神の和解によって最後には真の平和が世界に輝くよう、幸いなるおとめマリアの助けを願うために、十月にロザリオを唱えることを強く勧めます」と記しています。
この勧告の中で教皇パウロ六世は、「神はわたしたちの心に、平和への熱い望みを与えてくださいました。神はわたしたちを、平和に向けて働くよう駆り立てます。・・・わたしたちが平和のたまものを求めてささげる祈りは、平和の構築に何物にも代えがたく貢献します。・・・キリストの母であるマリア、福音書が「神から恵みをいただいた」かたであると教えているマリアの比類ない執りなしに愛を込めて頼る以外に、わたしたちに何ができるでしょう」と記して、執りなしの祈りとしてのロザリオの重要性を強調しています
ロザリオの祈りは、聖母マリアとともにキリストを観想する祈りです。ルカ福音には、「マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた」と記されています。教皇ヨハネ・パウロ二世は、「おとめマリアのロザリオ」に、「キリスト者の共同体は、ロザリオを唱えることによって、マリアの思い出と感想のまなざしに心をあわせる」と記します(11)。
わたしたちはロザリオの祈りを通じて、聖母マリアとともにキリストを思い起こし、聖母マリアからキリストを学び、聖母マリアとともにキリストの姿に似たものとなります。加えてわたしたちは、聖母マリアとともにキリストに願い求め、聖母マリアとともに、福音を告げしらせるものとなります。
わたしたちの願い求める平和は、神の支配が確立され、その秩序が取り戻された状態です。長引くコロナ禍の中でいのちの危機という暗闇に取り残されているわたしたちは、さらに加えて、ウクライナやミャンマーをはじめ世界各地で続いているいのちを危機にさらす暴力の支配に立ち向かわなくてはなりません。そのためにも主イエスにもっとも近い存在である聖母の執りなしを強く求め続けたいと思います。
ルカ福音は、「気を落とさずに絶えず祈らなければならないことを教えるために」、イエスが裁判官相手に正義の行使を求め続ける一人のやもめの話を記しています。その執拗な要求に、裁判官が降参してしまった様を記したあとに、「まして神は、昼も夜も叫び求めている選ばれた人たちのために裁きを行わずに、いつまでも放っておかれることがあろうか」というイエスの言葉が記されています。
そうであるならば、わたしたちは暗闇から抜け出すための光を求めて、執拗に祈り続けましょう。
この困難な状況に立ち向かう今だからこそ、神の母であり、教会の母であり、そしてわたしたちの母である聖母マリアの取り次ぎによって、世界に、そしてわたしたちの心と体に、神の秩序が確立し、平和が取り戻されるよう、共にいてくださる主イエスと歩みをともにしながら、命の与え主である御父に、徹底的に祈り続けましょう。