大司教

週刊大司教第九十七回:年間第二十八主日

2022年10月11日

10月12日から30日まで、タイのバンコクで、アジア司教協議会連盟(FABC)の総会が開催されます。2年前に創立50年を迎えている連盟ですが、記念の総会がコロナ禍で延期されており、やっと開催になりました。

通常の総会では、それぞれの司教協議会から会長ともう一人程度の参加ですが、今回は50年の節目と言うこともあり、過去を振り返って将来への歩みを定めるために、多くの司教が参加します。日本からも6名の参加が予定されています。

なお、FABCについて、カトリック新聞に書いた記事が、中央協のホームページにも転載されていますので、こちらのリンクからどうぞ。また英語ですが、FABCのホームページはこちらのリンクです。さらに今回の50周年総会のためのホームページはこちらです。

総会の成功のために、参加する司教たちのために、お祈りいただけましたら幸いです。

ケルン教区からの訪問団は、すべての日程をこなして、10月5日に帰国されました。2024年にケルン教区と東京教区のパートナーシップ関係が70年となることから、これからの2年間ほどで、将来に向けたパートナーシップのあり方についての方向性を定め、それについてのメッセージを作成しようという話になりました。単に、援助金がドイツから日本に来たと言うだけではない、もう少し幅の広い交流、特に青年たちの交流などと、これまで以上に一緒になってのミャンマー支援などの強化を、ケルンの方々は考えておられるようです。今後、互いにチームを定めて、検討を深めたいと考えています。(上の写真は、調布カルメル会修道院を訪れたケルンの訪問団)

以下、8日午後6時配信の、週刊大司教第97回、年間第28主日のメッセージ原稿です。
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年間第28主日
週刊大司教第97回
2022年10月9日前晩

ルカ福音は、重い皮膚病を患っていた十人の人が、イエスによって癒やされた話を記しています。十人はイエスの勧めに従って祭司のところへ行く途中で癒やされますが、その中の一人だけがイエスのもとに戻ってきます。イエスに感謝するために戻ってきたのは、ユダヤ人から見れば神への信仰に忠実ではないと見なされていたサマリア人だけでありました。

それに対してルカ福音が記すイエスの言葉は、「神を賛美するために戻ってきたものはいないのか」であって、受けた恵みに対して、神のもとに立ち返り、神を賛美するというその行為にこそ救いがあることを、「あなたの信仰があなたを救った」という言葉が示唆します。

すなわち、人間が抱える様々な困難が解決され幸せが確立することに救いがあるのではなく、受けた恵みを自覚しながら感謝のうちに神と共にあることにこそ救いがあるのだとイエスの言葉は教えています。神に感謝をささげ、神と共にいることによって良しと見なされたのは、正統な信仰を守っていると自負するユダヤ人ではなかったという話は、信仰を守るとはどういうことなのかを考えさせます。それは、信仰者の立ち位置が、自分自身のところにあるのか、神のところにあるのかの違いです。自分の幸せを優先する利己的な心を強く持つとき、わたしたちは神のもとには立っていません。そこに救いはあるでしょうか。

パウロはテモテへの手紙に、「キリストと共に死んだのなら、キリストと共に生きるようになる。耐え忍ぶなら、キリストと共に支配するようになる。」と記しています。ここでも救いとは、自分自身の人間的な困難の解決にあるのではなく、キリストと共にいることにあるとパウロは指摘します。その上でパウロは、自分自身の苦しみは、他の人々が、「キリスト・イエスによる救いを永遠の栄光と共に得るため」に耐え忍んでいるのだと強調します。パウロの立ち位置は自分ではなく神のもとにあり、だからこそパウロはイエスに倣って、他者の救いのために命を燃やし続けるのです。

アジア各地の司教協議会の連盟組織であるFABC(アジア司教協議会連盟)の創立50年を記念して開催される総会が、10月12日から30日まで、バンコクで開催されます。日本を含めアジア各国から司教の代表が集まります。どうか会議の成功のために、お祈りください。

FABCは、1970年に教皇パウロ六世がマニラを訪問された際に集まったアジアの司教たちの合意に基づいて誕生しました。第二バチカン公会議の教会憲章で示された司教の団体性や協働性と翻訳される「コレジアリタス」を具体化し、アジアにおける教会の存在を更に福音に沿って具体化するための組織として誕生しました。

FABCはこの50年間、アジア全域において、三位一体の神をあかしし、イエスの福音を告げしらせるために、牧者である司教たちの交わりを通じて、福音宣教への共通理解を深めてきました。中でも、FABCは三つの対話、すなわち、「人々(特に貧しい人々)との対話、諸宗教との対話、多様な文化との対話」が、アジアでの宣教において共通する重要課題であると指摘を続けてきました。今回の総会のテーマも、「アジアの民として、ともに歩み続けよう」とされ、対話と連帯のうちに福音を具体的に生きる道を模索しようとしています。

教皇ヨハネ・パウロ二世は、使徒的勧告「アジアの教会」に、「(アジアの様々な)宗教的価値は、イエス・キリストにおいて成就されることを待っているのです」(6)と記しています。わたしたちは、神のもとにしっかりと立ち位置を定め、すべての人の救いのために努力を続けたいと思います。