大司教

週刊大司教第九十四回:年間第二十五主日

2022年09月20日

9月も半ばを過ぎました。(上の写真は、松原教会聖堂)

教皇様は、先日カザフスタンに出かけられ、無事にローマに戻られました。

教皇様は、同国首都ヌルスルタンで、諸宗教のリーダーを招き、9月14日から2日間の日程で開かれた「第7回世界伝統宗教指導者会議」に出席され、バチカンニュースによれば、共同宣言を受けてのスピーチで、『今回の共同宣言にある、「過激主義、原理主義、テロリズム、その他、憎悪・暴力・戦争をあおるすべてのもの・動機・目的は、真の宗教精神と一切の関係がないものであり、断固として退けられるものである」という言葉を繰り返された』と報道されています。真の宗教精神が、いま、問われています。

なおカザフスタンを含む中央アジア諸国の司教団は、つい先日から一つの司教協議会を構成しており、FABCのメンバーとして、アジアの教会の一員です。一言で『アジア』と言ったときの、多様性を物語る地域の一つでもあります。

9月17日午後2時から、麹町教会でイエズス会の司祭叙階式が執り行われ、二人の司祭が誕生しました。ヨアキム・グェン・ミン・トァン神父様、ペトロ・カニジオ越智直樹神父様。叙階おめでとうございます。

また、9月18日日曜日には、高円寺教会で、新しい信徒会館と司祭館の祝別式、並びに堅信式が行われます。高円寺教会の司祭館は数年前に火事で失われ、その後コロナ禍で再建が遅れていましたが、完成しました。

以下、17日午後6時に配信した、週刊大司教第94回、年間第25主日のメッセージ原稿です。
※印刷用はこちら
※ふりがなつきはこちら

年間第25主日
2022年9月18日前晩

パウロはテモテへの手紙に、「神は、すべての人々が救われて真理を知るようになることを望んでおられます」と記し、自ら創造されたすべてのいのちを包み込もうとする、神の愛といつくしみを語ります。

ルカ福音は、「ごく小さな事に忠実な者は、大きな事にも忠実である」というイエスの言葉を記します。

わたしたちは、神の愛といつくしみから、誰ひとり忘れ去られることなく、また誰ひとり排除されることのない世界を実現することを目指しています。神の愛はすべての人に向けられているにもかかわらず、それを妨害しようとするのは、わたしたちの不忠実さであります。わたしたちは神の愛といつくしみの前に立ちはだかる様々な障壁を取り除くという大きな目的を達成するために、目の前の小さな事への取り組みを忠実に果たしていかなくてはなりません。

教会は、9月1日から10月4日までを「被造物の季節」と定めて、総合的エコロジーの観点から、日々の生活の中で小さな行動を忠実に積み重ねて、わたしたちに神から与えられた共通の家を大切にすると言う目標を達成するための啓発の時としています。日本の教会も、2019年の教皇訪日のメッセージに触発されて、同じ期間を「すべてのいのちを守る月間」と定め、神からの呼びかけに忠実であるようにと啓発活動を行っています。今年の7月の司教総会では、この取り組みを更に強化するために、司教協議会に「ラウダート・シ・デスク」を設置することも決めています。

2020年初め頃から、世界中を巻き込んでいる感染症がもたらすいのちの危機は、目に見えない小さなウイルスによってもたらされました。わたしたちは人間の知恵と知識には限界があることを思い知らされています。しかし往々にしてわたしたちはその限界を忘れ、あたかも人類がこの世界の支配者であるかのように振るまい続けてきました。その結果が、教皇様が指摘されるように、共通の家である地球の破壊です。

教皇フランシスコは回勅「ラウダート・シ ともに暮らす家を大切に」を発表され、すべての被造物は互いにすべてつながっているがために、互いの調和のうちに生きていく道を探ることの重要性を強調されました。これを教皇様は、総合的エコロジーという言葉で表します。その意味は「さまざまなことが、本質をめぐってそれぞれつながり合い、影響し合っている」ことです。そこから教皇様は「環境問題は孤立した分野ではなく、社会の問題、人間の問題、そして根本的に神との関わりの中にある」と指摘します。

その上で教皇様は、「この世界でわたしたちは何のために生きるのか、わたしたちはなぜここにいるのか、わたしたちの働きとあらゆる取り組みの目標はいかなるものか、わたしたちは地球から何を望まれているのか」といった問いかけに忠実に答えること姿勢を求めます。

教会は今、シノドスの道を歩み続けています。神の民として、ともに歩もうとしています。わたしたちはそれぞれの生きている現実の中で、小さな事に忠実に取り組む姿勢を忘れることなく、神が与えてくださった大地の叫びと、社会から忘れられ排除されている人たちの叫びに耳を傾け、それを神の視点で識別し、具体的な行動を積み重ねていきたいと思います。

教皇フランシスコが東京ドームミサで呼びかけたように、「キリスト者の共同体として、わたしたちは、すべてのいのちを守り、知恵と勇気をもってあかし」する忠実な僕でありたいと思います。