大司教

「典礼祭儀のネット配信は簡単ではありません」

2020年04月12日

東京教区では、今回の感染症の事態にあたって、2月27日から「公開のミサ」を中止にし、3月1日から、主日のミサのネット配信を始めました。

「公開のミサ」の中止とは、教会でミサが中止になったという意味ではなくて、誰でも普通に自由に参加することのできるミサ(公開)を中止し、すべて「非公開」としたということです。これについては何度もご説明してきましたが、司祭はミサを捧げる義務がありますから、少なくとも日曜日には必ずミサが捧げられていますし、主任司祭は日曜日に、小教区の方々のためにミサを捧げる義務があります。

ですから現在ミサは「非公開」です。誰にでも自由にミサにあずかって頂くことはできません。その意味で、多くの信徒の方には、ミサの中止という事態になっています。最初は、入場制限とか、抽選とか、いろいろと考えましたが、どのような方法にも無理があるので、東京教区内は一律に非公開としました。それに一番に考えなくてはならないことは、大勢でミサをしないのは、自分が感染しないように護ることではなくて、今回の感染症の特徴である、無症状の感染者が、知らないままに他人に感染を広げてしまうことを避けるためです。自分は大丈夫だからは、今回は通用しません。

そこで、少なくとも主日のミサを、カテドラルからネットで中継することにしました。ミサの映像配信にはいろいろな考え方があると思いますが、カテドラルからの配信は、感染の危険を最大に避けながらも、しかし同時に典礼の荘厳さを失わないようにしっかりとした構成をすることを目指しました。

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幸い、以前からミサ配信の可能性を検討してくれていた関口教会の信徒の青年が、ボランティアで協力してくれることになりました。早速、主任司祭の天本神父が中心になって、必要な機材の調達が始まりました。全くのゼロからの挑戦です。そもそもネット環境も、大聖堂にはなかったので、その手配も簡単ではありません。当初は機材の関係から、土曜日の夕方に録画して、日曜に配信としました。しかも、必ず、歌ミサで、すべてに字幕を入れることにもしました。また祈りの機会ですから、余分な解説は一切入れないことにもしました。

これが実は大変難しい挑戦でした。一番簡単なのは、祭壇だけが映るようにして、固定したカメラで中継することですが、できる限り典礼の荘厳さを出すために、複数のカメラを使用することにしました。

そして歌や朗読でシスター方の協力をお願いしました。

ミサに参加してくださっているのは、カテドラル構内に修道院のある師イエズス修道会(ピエタのシスター)とすぐ近くに住むドミニコ宣教修女会のシスター方で、これに2回目からは、聖歌を歌いオルガンを弾くために、イエスのカリタス会のシスターと志願者が10名ほど、協力してくれています。

しかし問題は、今度は感染予防です。聖堂内は、シスター方だけで20名近くになります。

最初は地下聖堂で、録画しました。ところが、地下聖堂の音響機器が古く、音をとるのが難しい。さらには地下聖堂は、100名ほど入る大きさと言ってもやはり狭く、換気がよろしくない。

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そこで、大聖堂にて撮影することにしました。この頃には、機材も整いはじめ、さらに大聖堂の音響機器は新しいもので、音をとることも地下よりは容易になります。ただ今度は、大聖堂は非常に巨大な空間で、予備の椅子も出せば千人ほどが入れる空間ですから、カメラを3台駆使して撮影することで、わかりやすさと荘厳さを両立させることになりました。

一番最初に大聖堂から配信したときは、映像が安定せず、ツイッターなどでいろいろご意見をいただきましたが、担当の信徒ボランティア(この段階では3名)の努力で、様々な機材が「開発され」、無線で方向を変えたりズームしたいるすることもできるようになり、一台をオルガンへ上がる階段、もう一台を聖堂右側にポールを立てて固定、そしてもう一台を移動用にして、映像を調整することができるようになりました。特に土曜の夜などに、改善のために遅くまで取り組んでくれて、感謝の言葉しかありません。また3名のボランティアの方と一緒に、努力を続けている天本神父にも感謝です。

生中継で字幕を入れるためには、事前に原稿を用意して、ミサ当日にはそのまま読み上げなければなりません。また字幕入れは、画像調整の場で、事前に用意した画像を重ねる形で、その場で手作業でタイミングを計っています。聖週間の典礼のように、普段と異なる場合は、事前の打ち合わせが不可欠ですが、そのために充分な時間をとることも難しく、ミサが始まる直前まで直しが入ったり、大変な努力をして頂きました。そのため中継中に少し異なる文面になったりしたところもありました。申し訳ありません。

専門家ではない信徒の方々の、この積み重ねで到達した映像は、聖週間の映像をユーチューブで見ていただければおわかり頂けると思いますが、専門家に外注したわけではなくて、教会のメンバーの手作りです。感謝の言葉しかありません。

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さてここからは感染予防の課題です。まず第一に、映像は遠くからズームで撮影するので、前後の距離感がうまく表現できません。そのため祭壇上などでは、司祭と侍者が重なって見えていますが、これは写真のように、前後が2メートルも離れています。(赤い椅子が司祭、白い椅子に侍者が座っています)

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さらに聖堂内のベンチは、これも写真を見て頂くとおわかり頂けると思いますが、通常の倍の距離で配置されています。前と後ろの間は1.8メートルです。そして通常は4名ほどが座るベンチに、一人だけ座って頂くように、テープで指定をしました。

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この写真は、以前の聖堂(右側)と、現在の聖堂(左側)です。

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聖歌を歌ってくださるカリタス会のシスターや志願者10数名には、離れて頂くために、祭壇から遠い大聖堂の一番後ろに、左右に大きく離れて、それぞれの距離が2メートルになるように、配置して頂いています。そのため、一番左にいるシスターなどは、右にいる指揮者のシスターを見るために、ミサ中には前でなく右を見て歌を歌って頂くなど、ご苦労をおかけしています。様々なご苦労と工夫に、本当に、感謝しています。

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さらに、大聖堂は暖房を入れると内気循環になってしまうので、すべての典礼の時には、暖房を使っていません。寒いです。さらに、さらに、大聖堂は、前の左右の扉を開け、正面の扉を開けているので、風が吹いています。お気づきになったかも知れませんが、聖金曜日の典礼での説教中に、説教の原稿をこの風で飛ばされそうになり慌てました。(上は、復活の主日のミサの説教中です。映像には映らない、大聖堂の空っぽなところが見て取れるかと思います)

ミサ中にも、いくつかの細かい変更をして、接触を減らそうとしています。奉納のところと、平和の挨拶の後には、祭壇の後ろで、わたしと司祭たちは手指をアルコール消毒しています。わたしも消毒した直後以外では、ホスチアに触らないようにしています。また、これもズームのため映像ではわかりにくいと思いますが、祭壇でのわたしの立ち位置は、普通よりも後ろに離れていて、後ろに1メートル以上下がって、祭壇中央に置かれたカリスからの距離を2メートル近くにして司式しています。

聖マリア大聖堂は、他のいくつかの聖堂と比較すると、巨大な建造物で、かなりの間隔を空けていても、見た目にはなかなかわかりにくいかとは思いますが、これからもできる限りの注意を払って、取り組んでいきたいと思います。

なお、昼間のミサですと、何名かの方が教会に来られて、聖堂の中に入られることを希望されますが、大変申し訳ないのですが、お入れすることはできません。感染予防の意図と、行政が要請している外出自粛の意図を、どうかご理解ください。できる限り、ご自宅で、祈りの時を一緒にしてください。インターネットがない場合は、同じ時間(日曜日の10時から)に心をあわせて、聖書と典礼などから朗読を読み、祈りでご一緒ください。お願いします。

東京カテドラル聖マリア大聖堂の、非公開ミサに入って頂くのは、現時点では、わたしの方からお願いする修道者の方と、配信のためのスタッフだけに限らせて頂いています。「シスターではなくて、ベールをかぶっていないから信徒がいた」というご意見をいただきましたが、それはカリタス会の志願者か、パウロ会のシスターであろうと思います。

公開ミサの中止期間にあっては、これからもこの形でミサの中継を続けていくつもりでおります。通常の事態に戻ったらどうするのかは、まだ決めかねています。今の状況では、中心になって動いてくださる信徒に大きな負担がかかってしまうので、普通の状態に戻ったときには、また協力者を増やすなどして、対処できれば良いなとは思っています。

何気なくネットで配信しているように見えますが、本当に多くの方の協力と、そして今の事態では細心の注意を持って、成り立っていることを、ご理解頂ければと思います。協力くださっている信徒の方々、シスター方に、感謝します。