教区の歴史

教区の歴史

東京教区年始の集い(ミサ説教・講話)

2014年01月13日

2014年1月13日 東京カテドラル

[聖書朗読箇所]

説教

今日の福音は四人の弟子たち、シモンとその兄弟アンデレ、ヤコブとその兄弟ヨハネの召命を告げています。彼らは「わたしについて来なさい」というイエスの呼びかけに応え、すべてを捨ててイエスに従いました。

昨日は「主の洗礼」の祝日でした。イエスがヨハネから洗礼を受けたとき、神の霊がイエスの上に降り、「これはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」という声が天から聞こえたのでした。(マタイ3・16-17参照)

イエスは父である神のみ心に完全に適う方でした。わたしたちは日々イエスを見つめ、イエスに倣って歩むべきものです。

昨年わたしたちは「信仰年」を過ごしましたが、信仰年にあたり、わたしたちは「信仰の創始者(導き手)であり完成者であるイエスを見つめながら(ヘブライ12・2)」、信仰の歩みをしてまいりました。わたしたちはこの歩みを、地上の生涯の終点まで続けなければなりません。

「現代の荒れ野」とでもいうべきこの現代社会の中で、人々は、生きる力をそがれ、孤独と不安に悩んでいます。今の社会は人間のかけがえのない価値がなおざりにされています。

わたしたちの住んでいる現代社会では、不平等と貧困の存在する社会、兄弟愛が欠如し連帯の文化が不在の社会であり、個人主義と利己主義、物質的消費主義、「使い捨て」の風潮が蔓延している社会です。(以上は教皇フランシスコの2014年元旦・世界平和の日のメッセージより)

「信仰年」にあたり、わたしたちは「信仰年」の祈りを唱え、わたしたち教会共同体が「現代の荒れ野において悩み苦しむ多くの人々のいやし、慰め、励まし、希望となることが出来ますように」と祈ってきました。この祈りをわたしたちは続けなければなりません。

前述の現代社会の傾向は、わたしたちの心を蝕んでいる悪の力ではないでしょうか。わたしたち自身もこの悪の力の影響のもとにおかれています。

ミサの中で司祭は聖体拝領の前に次のように祈ります。

「いつくしみ深い父よ、すべての悪からわたしたちを救い、現代に平和をお与えください。あなたのあわれみに支えられ、罪から解放されて、すべての困難に打ち勝つことができますように。」

ここでいう「悪」とはまず、いま申しました現代世界の悪であります。そして同時にわたしたち自身の悪と罪であります。わたしたちは日々、世界の悪、自分の罪と戦っていかなければなりません。

わたしたちの家庭と社会は現代の価値観によっていわば汚染されています。それは、経済優先の社会、能率と競争の社会、利己主義と他者への無関心が人々を覆っている社会です。

この悪との戦いがわたしたち一人ひとりに召命であり、使命であります。一人ひとりがその人として大切にさえる社会を築くために力を尽くしましょう。

主イエスがわたしたちの戦いにおいてわたしたちを守り助け、勝利に導いてくださるよう、共に祈りましょう。

 

 

〔講話資料〕

※ 2014年の東京教区との関連で

1.「信仰年」の振り返り

2014年を迎え、皆さんには「信仰年」の振り返りをお願いします。

教皇ベネディクト十六世の自発教令『信仰の門』により、2012年10月11日に始まった「信仰年」は、2013年11月24日の「王であるキリスト」の祭日で終了いたしました。

 

「信仰年」の間、わたしたちは、すべての信仰者の生き方の基準であり模範である主イエスに倣うように、またより深くイエス・キリストを知るように、と努めました。

信仰年を迎えるに際し出された大司教書簡「『信仰年』を迎えるにあたり」のなかで、わたくしは以下の5項目の実行を心がけるようお願いいたしました。

  1. イエス・キリストをより深く知る。

  2. 第二ヴァチカン公会議と『カトリック教会のカテキズム』を学ぶ。

  3. 『信条』を学ぶ。

  4. 典礼と秘跡、日々の祈りと黙想

  5. 信仰と愛のあかし

皆さんにはまず「信仰年」の振り返りをしていただきたい、とお願いいたします。その際、非常に有益な助けとなり手がかりになる恵みが与えられました。
それは教皇フランシスコの新しい使徒的勧告『福音の喜び』Evangelii Gaudium (2013年11月24日)です(現在中央協議会で急ぎ翻訳中)。 

非常にわかりやすく明快かつ具体的な内容であり、励ましと希望を豊かなに含んでいます。
たとえば「説教」について多くの部分を割いています。説教で苦労しているわたしたちには非常に有益です。
ぜひ皆さんとこの文書の内容を分かち合う機会を設けたいと考えております。

  

2.世界代表司教会議(シノドス)の開催

今年の秋にローマで「代表司教会議」が開かれます。主題は「家庭」-「福音化を目指しての家庭司牧の課題(Pastoral Challenges to the Family in the Context of Evangelization)です。
現代の日本の家庭は厳しい状況にあります。
まず、第一に挙げたいのは、「家族の絆が脆く弱くなっている」ということです。
第二に、わたしたちの社会は「少子高齢化」の社会となっています。
そして第三に、結婚の減少と離婚の増加ということが指摘できます。

日本のカトリック教会はこのような家庭の現実に対して教会としての司牧と福音化の努力を重ねてきました。

1993年には「第二回福音宣教推進全国会議」が開催されました。これは家庭の現実から出発して教会の使命である福音化をどのように推進したらよいのかを話し合った全国規模の大きな会議でした。
信徒の代表も参加し、その成果は司教協議会より『家庭と宣教』(カトリック中央協議会、1994年)という文書として発表されました。危機に瀕している家庭を教会はどのように支えることが出来るのか、を論じています。

また司教協議会は『いのちへのまなざし――二十一世紀への司教団メッセージ』(カトリック中央協議会、2001年)を発表しました。

すでに、家庭といのち問題が緊急問題となってきた状況に対して司教たちはこの教書を編纂し発表したのです。内容は三つの部分に分かれています。

第一章 聖書からのメッセージ、第二章 揺らぐ家庭、第三章 生と死をめぐる諸問題(自殺など緊急で深刻な問題を取り上げています。)

状況はなお深刻になっています。

現代の子どもについて次のような証言があります。

「子供たちが情報におぼれて、学校の後、習い事で忙しくて、睡眠や遊ぶ時間が乏しくてなかなか自分と出会う静かなゆったりした時間がない。ましてや祈ることはないでしょう。両親が働いているため子供が家に帰ってもだれもいない家庭が多く、皆で一緒に食卓を囲むことも非常に少ない。そのため、家族が一緒に話すこともなく、其々が懸命に生きているが、交わりがなく、孤独で、愛し愛される経験が少ない。(臨時シノドス事務局アンケートへの回答より)」

現代の悪とは、このような状況ではないでしょうか。

わたくしは、東京教区が、さまざまな困難の中で迷い苦しむ多くの人々のオアシスとなり、人々に支えと励まし、助けと導き、光と希望をもたらす共同体として成長することを心から願っています。

 

3.東京教区の優先課題

なお、この機会に東京教区の優先課題を思い起こしてください。次の三項目です。

1) すべての信者の霊的成長(信仰の生涯養成)

2) 多国籍教会としての成長と互いのサポート

3) 心の問題への理解と助け合い

とくに信仰の生涯養成という課題を、教区としても、より具体的に策定したいと考えております。

 

4.カテドラル献堂50周年

さらに、2014年12月8日は東京カテドラル聖マリア大聖堂の献堂からちょうど50周年にあたります。ケルン教区への感謝を新たにしながら東京教区の使命の遂行に励みたいと思います。

皆さんのご理解、ご協力、そしてお祈りをお願いいたします。