教区の歴史
築地教会歴代大司教記念ミサ
2017年05月28日
2017年5月28日、主の昇天、築地教会
イエスは復活された後、40日間にわたって弟子たちのところに現れました。そして今日の福音が伝えておりますように、40日目に天の御父のもと戻って行かれました。
40日ですから、この間の木曜日が昇天の祭日ですが、日本の教会はその次の主日(復活節第7主日)をもって昇天の日とすることになっています。
イエスは昇天に際して弟子たちにお命じになりました。「すべての民を私の弟子にしなさい、洗礼を授けなさい、さらにイエスが教え命じたことを守らせなさい。」そのご命令を私たちは承って、教会の務めを果たしているのであります。
イエスは「私は世の終わりまでいつもあなたがたとともにいる」と言ってくださっています。今日はこのみ言葉をご一緒に味わいたいと思います。
第一朗読では、イエスは弟子たちが証人となると言われました。何の証人になるのかと言えば「わたし」の証人、イエスキリストの証人となるということです。そして、そうであるように力が与えられる。その力は聖霊によって与えられるのです。
さらに第二朗読では「教会はキリストのからだです」と教え、わたしたちは聖霊を注がれた者、聖霊によって満たされている者、聖霊の力を受けている者であり、主イエスのご命令を実行することができる者とされています。
ですからわたしたちはイエスの弟子として生きるようにされていますが、他方わたしたちは弱い人間であり、失敗をしたり病気になったりします。
10年ちょっと前のことですが、私は非常に困難な体験をいたしました。肉体的にも精神的にもだいぶ衰えた状態になったので、お医者さんのところに行きました。その時に読むようにと勧められた本があります。
その本の最初の言葉は「人生とは困難なものである」でした。もともと英語で書かれたものなので原文も読んでみようと思い、手に入れました。
最初の言葉は英語ですけれども「Life is difficult」。
私たちはこの世界で様々な困難に出合います。仏教では四苦八苦と教えています。四つの苦しみに四つ加えて八つの苦しみ。仏教の教えは本当に人間の真実を突いており、教えているとつくづく思います。生・病・老・死のあと四つありますが、人間は生まれてから死ぬまで苦しまなければならない。
先ほど申し上げた本の著者も仏教の教えに触れています。そして、「人生は困難である」ということを知る者は困難に立ち向かい、困難を乗り越えることができる。だから人生の真実を見つめなければならないと教えています。
皆様の困難はどのようなものか。それぞれ困難があると思います。困難のない人はいません。地上にいる間、わたしたちはいろんなことで苦しみ、悩まなければならない。そして他人の悩み苦しみを知らなければならない。自分が苦しんでいるならば、他の人も苦しんでいる。それを知らなければならないですね。
このわたしですが、私と一緒に働いてくださっている司祭の皆さんも、病気になったり、召されたり。非常に困難な状況にあります。どうしたらよいのだろうかと思いつつ、「あなたは終わりまであなたと共にいるとおっしゃいましたね」、「あなたはどこでそうしてくださっているのですか」、と自問自答で、ご聖体の前で祈ります。
「わたしは世の終わりまであなたがたと共にいます」、こんな時にこそわたしはあなたの側(そば)にいる。イエスはもう天の父のもとに行ってしまった、この世の煩わしいことからすっかり手を引いて、「さようなら、もう関係ありません」、という意味ではなくて、わたしはあなた方と一緒にいる。これから去っていく人が「あなたがたと一緒にいる」というのは矛盾しますが、この世界で一緒にいてくださっている。それは聖霊という神様の力によるのです。
わたしたちは三位一体の神を信じています。父と子と聖霊の神を信じています。この聖霊によって、聖霊の照らしによって、わたしたちと一緒にいてくださっている。闇があっても、その闇の中に灯される灯火、その灯火を通して、人間の弱さ、あるいはこの地上の困難の中に神の力が働いています。そのようにわたしたちは信じます。
この日本という国や、この世界中に日々起こっている様々な事件、問題、困難。その中に神の力が働いている。そう信じています。そして「すべてはわたしがまた地上に来る時に終わります。いっさいの問題はそこで終了します」と言われます。その時までわたしたちは、それぞれ自分の務めを果たさなければならない。それは「自分の務め」です。他の人の務めをとやかく言うよりも、まず自分の務めをしっかり果たしましょう。
東京教区の歴史を振り返り、ここに写真がある歴代の大司教様もさまざまな困難に遭い、務めを果たされました。
心から感謝を申し上げるとともに、わたしたちもそれぞれ自分の務めを誠実に果たすことができますよう、聖霊の恵みを願いたいと思います。