教区の歴史
ペトロ・パウロ聖職者の集い 説教とお知らせ
2014年06月30日
2014年6月30日 東京カテドラルにて
説教
本日は「ペトロ・パウロ聖職者の集い」の日です。教皇大使ジョセフ・チェノットゥ大司教様を迎え、聖ペトロ・聖パウロ使徒のミサをささげ、ミサの中で司祭叙階のダイヤモンド祝、金祝、銀祝のお祝いを致します。
イエスはペトロに言われました。「あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。陰府の力もこれに対抗できない。」(マタイ16・17)
別な訳では「黄泉の門もこれに打ち勝つことはできない」(田川建三訳)となっています。黄泉とはつまり悪の力を意味していると思います。ペトロという岩の上に立てた教会は絶えず悪の攻撃にさらされてきました、しかし教会は悪に打ち負かされることはありませんでした。とはいえ、教会は罪人の集まりであります。わたしたちは過ちをおかす罪人です。
わたくしは、この一年を振り返ると「悪の存在と悪の力の攻撃」ということを痛感してきました。悪とはこの世界の中にある悪であり、教会の中にある悪であり、そして自分の中にある問題であります。
ある人に、「カトリック教会には自浄能力がありますね」と言われました。「自浄能力」という言い方が適切であるかどうかわかりませんが、わが教会は危機に直面してもそのつど反省と刷新を行ってきました。とくに第二ヴァチカン公会議は教会刷新の大きな努力でした。
教皇フランシスコはさらに、「信仰年」の終了の2013年11月24日、使徒的勧告『福音の喜び』を発表し、さらなる教会の刷新を力強く呼びかけておられます。
わたしたちは信仰のうちに、あらゆる悪に打ち勝ったキリストの勝利に与かることができます。困難のなかで誘惑に出会うこともありますが、「黄泉の門もこれに打ち勝つことはできない。」というイエス言葉に信頼し、復活のキリストに導かれながら、祈りのうちに、忍耐と希望をもって歩み続けて行きたいと思います。
本日は、使徒ペトロと一緒に使徒パウロを記念しています。
パウロはローマの牢獄から愛する弟子テモテに切々たる内容の手紙を送り、「ぜひ、急いでわたしのところに来てください」(二テモテ4・9)と訴えています。福音宣教のためにパウロが受けた艱難は筆舌に尽くしがたいものでした。パウロはその苦難の数々をコリントの信徒への手紙二で列挙しています(二コリント11・23-29)が、今日の第二朗読で次のように言っています。
「主はわたしをすべての悪い業から助け出し、天にある御自分の国へ救い入れてくださいます。主に栄光が世々限りなくありますように、アーメン。」(二コリント4・18)
使徒パウロの生涯は試練との戦いの連続でした。パウロは自分の生涯を振り返りながら、主の助けによってすべての悪に打ち勝つことができたことを感謝し、殉教を目前にして、決定的に主の復活に与るという希望を述べています。
ペトロとパウロ、教会の礎である二人の使徒のとりなしにより、困難に打ち勝つ恵みを祈り求めましょう。
さて、今日はこの貴重な機会をお借りして二つの重要事項をお伝えします。
1.一つは6月18日、司教総会中に行われた「勉強会」についてです。(カトリック新聞6月29日号で内容が報道されています。)
1936年のこと、当時の布教聖省から日本のカトリック教会に宛てて『祖国に対する信者のつとめ』という指針が出されました。「勉強会」は、この指針が78年経た今日、どのような意義を有しているのかという事を学ぶために開かれました。靖国神社をめぐるこの問題は非常に重要であり、なお引き続き研修を続け、司教団としての公式見解をまとめることが必要であると考えます。
2.ことしの平和旬間についてです。教区ニュースの最新号は今年の平和旬間の企画を知らせています。ことしは緊張が高まっている東アジアの平和についてとくに学び祈りたいと思います。
1981年広島を訪れたヨハネ・パウロ二世は繰り返し、言われました。
「過去をふり返ることは将来に対する責任を担うことです。」(「平和アピール」)この教皇の声は33年を経てなお強くわたしたちの心に響いています。
戦争ほど悲惨で愚かな所業はありません。わたしたち人類はどんなことがあっても戦争の過ちを繰り返してはならないのです。
わたしたちはあらためてアジア・太平洋戦争の歴史を振り返りながら、日本国民として、またカトリック教会のメンバーとして、この戦争の引き起こした悲しい結果に対する責任を自覚しなければないと思います。この機会に、ヨハネ・パウロ二世の「平和アピール」、そして日本カトリック司教協議会の平和に関する文書を再読していただけると幸いです。
参照文献
1)教皇ヨハネ・パウロ2世『平和アピール』(広島)
2)日本カトリック司教団『平和への決意』1995年
3)日本カトリック正義と平和協議会『新しい出発のために』1995年。
4)日本カトリック司教協議会、戦後60周年平和メッセージ『非暴力による平和への道』。