教区の歴史
東京カテドラルでの平和の祈り説教(シリアと中東と全世界の平和のため)
2013年09月07日
2013年9月7日 東京カテドラル聖マリア大聖堂にて
説教
教皇フランシスコは、9月1日(日)正午の「お告げの祈り」において次のように言われました。
「わたしは全教会に対して、9月7日を、『シリアと中東と全世界の平和のための断食と祈りの日』とすることを決めました。またわたしは、カトリック以外のキリスト者の兄弟、他宗教の信者、そして善意の人々も、できるかぎりこの行事に参加してくださるようお願いします。
9月7日、ここサンピエトロ広場で、午後7時から午前0時まで、わたしたちは祈りと悔い改めの心をもって集まり、愛するシリアのため、また世界のあらゆる紛争と暴力地域のために、この平和のたまものを神に祈り求めます。人類は、平和のわざを見、希望と平和のことばを聞くことを必要としています。すべての部分教会にお願いします。この断食の日を行うことに加えて、この意向に基づく典礼も執行してください」
この教皇の強い要請を受けて、わたくしは東京カテドラルできょう5時より、『平和のための祈りの集い』を行うことを決定し、皆さんにお知らせした次第です。
ご存知のように現在、シリアは内戦状態にあり、超大国によるシリアへの軍事行動介入の決定を目前として、非常に国際的な緊張が高まっています。
教皇はこの事態を大変憂慮し、「軍事介入は和解と解決には不毛である」というメッセージを発表しました。
今年の平和旬間でわたしたちは、「平和憲法と教会の教え」を課題に掲げ、教皇ヨハネ23世の『地上の平和』発布五十周年を記念して、この回勅の研修をいたしました。
この回勅で、教皇は、真理、正義、愛、自由に基づく平和の建設を訴えています。
回勅発布の前年1962年には「キューバ危機」と呼ばれる、核戦争勃発の危険が迫っていました。教皇が、アメリカ合衆国とソ連の超大国の指導者の仲介をして、核戦争の勃発を回避させた、ということをわたしたちは今年の平和旬間のおかげで知ったのです。教皇は、「誤り」と「誤りを犯している人間」を区別し、ソ連の指導者とも誠実な対話を実行したのです。
今、それから50年たち、同じような危機が迫ってきています。シリアは「軍事介入には徹底的に抗戦し、第三次世界大戦勃発も辞さない」と言っているとも報道されました。
極東の島に住むわたしたちには、中東の状況と歴史、内戦の経緯などが分かりません。対立している人々は、おそらく、イスラム教徒、ユダヤ教徒、そしてキリスト教徒ではないでしょうか。どうして同じ唯一の神を信じる人同士が戦争をしなければならないのでしょか。この点が理解できません。
宗教の落とし穴は「不寛容」ということです。一神教信者の間の戦争は日本の福音宣教にとって大きな躓きであります。
ヨハネ・パウロ二世、『紀元2000年の到来』という書簡で、「教会の子ら」の不寛容の歴史を嘆きました。
いまわたしたちは福音の原点に立ち戻らなければなりません。イエスは言われました。「敵を愛し、自分を迫害するもののために祈りなさい。」
このイエスの言葉を、シリアで争い合う人々はどう受け取っているのでしょうか。
わたしたちは今年の平和旬間で祈りました。
「自分たちの国の利益だけを願うのではなく、周囲の国々との相互理解を求め続けることができますように。」(平和旬間2013の祈りより)
きょうの朗読で、使徒パウロのコロサイの教会への手紙の言葉を深く心に刻みましょう。
「あなたがたは神に選ばれ、聖なる者とされ、愛されているのですから、憐れみの心、慈愛、謙遜、柔和、寛容を身に着けなさい。互いに忍び合い、責めるべきことがあっても、赦し合いなさい。主があなたがたを赦してくださったように、あなたがたも同じようにしなさい。」
このパウロの言葉がシリアをめぐって対立している人々の心に届きますように。
アーメン。