教区の歴史
平和旬間2013「平和を願うミサ」説教
2013年08月10日
2013年8月10日 東京カテドラルにて
説教
平和を考えるときにいつも思い出すことばがあります。
「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」
ユネスコ憲章の前文にある言葉です。このことばを深く心に刻みたいと思います。
戦争の原因はまずわたしたちの心の中にあります。それは憎しみ、恨み、疑い、敵対心、利己心、人を受け入れない不寛容などであり、この悪い思いが人を戦争へ駆り立てます。
イエスは、父である神はすべての人の神である、と説きました。モーセに現れた神は、イスラエルの民だけの神ではなく、すべての国民、すべての民族の神、すべての人の神である、とイエスは教えています。父である神は、すべての人を赦し受け入れ、ご自分の平和と幸福への招く神であります。
敵対する国家、民族があったとしても、神は敵対する双方の神なのです。神の国とは、「敵と味方」という関係が克服された世界です。神は敵味方双方に太陽を昇らせ雨を降らせます。
イエスは、敵を愛するように教え、身を持って実行しました。自分を残虐な十字架刑に架ける者の赦しをとりなす祈りを、父である神にささげています。(ルカ23・34参照)
イエスは十字架を通して敵意という隔ての壁を取り壊し、十字架によって敵意を滅ぼされたのです。(エフェソ2・14-16)
今年はヨハネ二十三世が回勅『地上の平和』を発表してちょうど50周年にあたります。
1963年、一触即発の核戦争の危険が迫っていた東西冷戦の最中、教皇はアメリカ合衆国とソ連の政治指導者たちをはじめとするすべての人に、戦争をさけ、平和を築くため、努力し協力するよう呼びかけました。
「平和」とはただ戦争や争いがないという状態でありません。平和とは神のみ心が行われていること、神の望む秩序の実現であります。
ヨハネ二十三世はこの神の秩序について次のように述べました。
「その秩序とは、真理を土台とし、正義によって築かれ、愛によって生かされ、最後に、自由によって実践されるのです」
真理、正義、愛、自由、この四つの神の賜物によって神の平和、秩序が築かれるのです。
ヨハネ二十三世教皇は『地上の平和』で、さらに核兵器の禁止と軍備全廃を訴えて言われました。
「軍備縮小の過程が、人間の心にまで及ぶものでなければ、軍事力増強の停止、軍備の削減、さらにその全廃は実現しません。人々の心の中から戦争勃発の予感に対する恐れと不安を払拭するために、すべての人は心から協力し、努力しなければなりません。軍備の均衡が平和の条件であるという理解を、真の平和は相互の信頼の上にしか構築できないという原則に置き換える必要があります。」
真の平和は、戦力の均衡によるのではなく、相互信頼の醸成によってもたらされます。
祈りましょう。どうか主なる神よ、わたしたちにあなたの霊・聖霊を送ってください。聖霊の導きにより、わたしたちが、真理、正義、愛、自由にしたがってあなたの平和を、現代の世界に建設するために働くことが出来ますように。アーメン。