教区の歴史
サレジオ修道会司祭叙階式説教
2012年03月10日
2012年3月10日 碑文谷教会にて
受階者 武井 アントニオ
第一朗読 エレミヤ書1・4-9
第二朗読 使徒言行録10・37-43
福音朗読 ルカ10・1-9
只今より、武井アントニオさんの司祭叙階式を行います。
武井さんはヴェトナムでお生まれになり、日本でサレジオ会に入会され、日本国籍もお取りになり、本日、司祭叙階の日を迎えました。わたしは、武井さんの人生の歩みの中に神様の導き、召し出しの神秘を感じます。
「わたしはあなたを母の胎内に造る前からあなたを知っていた。母の胎内から生まれる前にわたしはあなたを聖別し、諸国民の預言者としてあなたを立てた」(エレミヤ1・5)と主なる神は預言者エレミヤに言われました。この言葉は武井さんに向けられたものでもあります。いま武井さんはエレミヤのように、諸国民のために司祭に立てられます。
武井さんが司祭の任務を受けるのは、人々へ、主イエスの復活を宣べ伝え、主の復活の光を掲げ、人々へ、罪の赦しと永遠の命の恵みをもたらすためです。
いまの日本はどんな状態にあるでしょうか?一年前に東日本大震災が起こり人々は大きな苦しみを受け、また地震と一緒に起きた原子力発電所の事故のために、人々は大きな不安のなかに置かれています。
他方、高度経済成長はわたしたちの生活に大きな歪みをもたらしました。かつてわたしたちの日本の社会にあった、温かく親しい人間の絆は大変危うく脆くなり、あるいは失われつつあります。人々は競争と管理の社会のなかで生きる力、生きがい、生きる意味を失いがちです。
わたしたちはこの、現代の荒れ野ともいうべき社会の中に、希望の光、生きる喜び、人生の意味を伝え、証ししなければなりません。いわば構造的とも言うべき「世の罪」の支配からの解放を告げ知らせなければなりません。
今年の10月11日より『信仰年』が始まります。『信仰年』に叙階される武井さんは特別な使命を受けます。
『信仰年』は信仰を学びなおし信仰を深める年です。50年前に第二ヴァチカン公会議は開かれ、世界の教会で刷新が行われました。今は公会議の精神がどのように理解されているのかを検証するときです。
第二ヴァチカン公会議の教えは『カトリック教会のカテキズム』にまとめられています。これは権威ある大切な教えです。
これは、書籍としては大冊であり、内容も理解が容易とは言えませんので、勉強するには案内人が必要です。内容を短くまとめた『要約』(コンペンディウム)も出ております。
教皇ベネディクト16世は、わたしたちが『カトリック教会のカテキズム』を学ぶことを強くお望みです。わたしはこの望みにお応えしたいと思います。
教皇様のお望みと『カトリック教会のカテキズム』、そして日本のカトリック教会の現状との間にはま だ隔たりがあります。この隔たりを埋め、橋渡しをするのが司教・司祭の役割であります。
特に武井さんはよい教育を受け、国際的は体験を豊かに持っています。ぜひ、この橋渡しの仕事を果たしてください。
わたしたち教会が、現代の荒れ野におけるオアシス、あるいは闇に輝く灯火となりますようにと、今日は特にお祈りしたいと思います。