教区の歴史

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待降節第1主日説教-いのちのための前晩の祈り

2010年11月27日

2010年11月27日18:00 関口教会にて

 

第一朗読 イザヤの預言(2・1-5)

第二朗読 使徒パウロのローマの教会への手紙(13・11-14a)

福音朗読 マタイによる福音(24・37-44)

 

待降節は主キリストの降誕を迎える準備をするときですが、同時に主キリストの再臨を迎える準備のときでもあります。

今日の福音の中でイエスは、「目を覚ましていなさい」「用意していなさい」と言います。

「目を覚ましている」「用意している」とはどういうことでしょうか。

イザヤは「ヤコブよ、主の光の中を歩もう」(2・5)と言っています。パウロは「闇の行いを脱ぎ捨てて光の武具を見につけましょう」(ローマ13・12)と述べています。またエフェソの手紙では、「あなたがたは、以前には暗闇でしたが、今は主に結ばれて、光となっています。光の子として歩みなさい」(5.8)と言っています。

わたくしは、「目を覚ましている」「用意している」とは、この聖書の箇所が説明しているように考えます。「主の光の中を歩む」「光の子としてあゆむ」「光の武具を身につける」ということばで、言い表していると思います。

さてそれではさらに、「光の中を歩む」「光の子としてあゆむ」「光の武具を身につける」とはどういうことでしょうか?

おりしも教皇ベネディクト16世は、2010年の待降節を迎えるにあたり、全世界の信者に向かって、『いのちのための前晩の祈り』をささげ、生まれてくるいのちために祈るよう望まれました。わたくしは今ささげているこの待降節第1主日のミサ(前晩にささげるミサ)において、この教皇様の呼びかけにお応えしたいと思います。この教皇様に呼びかけに応えることが「光の子として歩むこと」になることにつながると思います。

教皇様は言われます。「待降節はすべての人間のいのち、神から生まれるよう呼ばれた人間のいのちを守るよう呼びかけるときであり、また両親を通して頂いたいのちの賜物のために神に感謝するときである。」

わたしたちがこの世に生を受けたのは神様の御心によるのです。神様のお望みによってわたしたちは両親を通していのちのたまものをいただきました。このいのちは生まれる前から守られ大切にされなければなりません。

生まれる前からいのちが大切にされるためにはそのための環境と準備がなければなりません。家庭はいのちを生み育みます。

現代の日本の社会と家庭はいのちを大切にしているでしょうか?いのちを育てるために相応しく適切な状況にあるでしょうか?その点に大きな疑問と課題があると感じます。人々が安心して家庭を生み産んで育てられるような社会がなければならず、またそう出来るために教育を結婚する人たちが受けていなければならないと思います。

すべてのいのちが大切にされなければなりません。日本の司教団は2001年1月1日,『いのちへのまなざし―二十一世紀への司教団メッセージ―』を出しました。是非皆さんの研修教材として活用してください。聖書のメッセージ、家族の問題、自殺などの生と死の諸問題が解説されています。

日本では過去12年間、連続して、自死者が3万人を越えています。さまざまな理由・原因が考えられています。確かに病気や貧困など大きな問題です。しかし他方、現代の社会では、孤立し孤独な状態におかれている人が増えています。生きがいが失われあるいは生きる動機が弱くなっているのではないでしょうか。

先日(11月16日から18日)、韓国で開かれた日韓司教交流会に参加しました。分かち合いのテーマは「自死」でした。実は韓国で自死が社会問題になっています。韓国では自死ではなく「自殺」といっています。最近自殺率が非常に高くなりました。韓国は2009年では経済協力発展機構(OECD)の中で第1の自殺率です。(ちなみに日本は3位)

また年齢別死亡原因の統計によれば、20代で亡くなった人の死亡原因の1位が自殺であり、しかも男性より女性の自殺率が高い、と報告されています。これは大きな衝撃であります。

韓国の自殺率急騰の原因分析も行なわれています。要約すれば、

1.価値観の変化と混沌 2.過剰なストレス 3.家庭の破綻と離婚増加

などが挙げられています。このような原因は日本の場合とかなり共通していると思われます。

人は人とのつながりの中で生きています。人との関係がうまくいかなくなり、あるいは他の人のことが信じられなくなることがあります。これも大きな試練です。家族の関係の中で悩み苦しみ、不信に陥ってします場合もあるのです。

いのちは互いに支えあい助け合うものです。

ちなみに日本の司教協議会のカリタスジャパン啓発部会は最近、『自死の現実を見つめて―教会が生きる支えとなるために―』と言う小冊子を発行しました。これも是非皆さんに読んでいただきたいと思います。

皆さん聖霊の導きを切に祈りましょう。