教区の歴史
神の母聖マリア・世界平和の日ミサ説教
2010年01月01日
2010年1月1日 東京カテドラル聖マリア大聖堂にて
新年明けましておめでとうございます。
2010年元旦の世界平和の日の教皇ベネディクト16世の「世界平和の日」のメッセージは「平和を築くことを望むなら、被造物を守りなさい」であります。この教皇様の今年の平和メッセージを受け取り、その中から、わたしが大切であると思う点を2、3申し上げたいと存じます。
今年のテーマは環境の問題であります。
わたしたち人間は神様によって造られ、神様とのつながりの中で生きるものであり、また同じ人間である兄弟姉妹とのつながりの中で生きるものであります。そしてさらに大自然のおかげで、大自然とのつながりのなかで生き、その生を全うできるものであります。
被造物というときわたしはまず大自然を思います。
人間は神との和解と平和、隣人との和解と平和、そして自然との和解と平和のよって、初めて、自分自身の平和と幸福に到達できると考えます。神と平和、隣人との平和、自然と平和、自分との平和は互いに深くかかわりあっています。今年の教皇の世界平和の日のメッセージはそのことをしみじみ思い起こさせます。
創世記によれば神は人間を創造された後言われました。
「神は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」(1.28)
神は人間に被造物を支配する任務を与えました。それでは支配する、とはどういう意味でしょうか。それは人間が自然を自分の都合に合わせて勝手に支配してもよい、という意味ではありません。人間には「責任をもって自然を管理し、配慮し、耕す」(2010年「世界平和の日」メッセージより)という任務が授けられている、という意味であります。決して、恣意私欲にしたがって自然を搾取し、破壊してもよい、という意味ではありませんでした。
神の創造の賜物であり、人間への贈与である自然を、人間は尊重と感謝を込めて管理し、相応しい関係を作り保ちながらこれを大切に守っていかなければならないのです。
今地球は、「気候変動、砂漠化、農業分野での生産量の低下と喪失、河川の帯水層の汚染、生物多様性の喪失、自然災害の増加、赤道・熱帯地木の森林消滅」(同メッセージより)という危機に瀕しています。また、この環境危機は、経済危機、食糧危機、社会危機と相互に関係し、究極的には道徳の危機であります。これらの危機を乗り切るためにはわたしたち人類の真摯な反省、そして、とくにいまの生活様式の思い切った刷新が必要であります。またエネルギー資源の問題を真剣に考え、エネルギー消費を削減し、エネルギー効率を高める方策を真剣に探求しなければならないでしょう。
人類は環境問題に対し、利己的・国家的利害を超え、すべての民族の共通の課題として受け止め、責任ある協力を推進しなければならない、とさらに教皇は強調しています。そして地球上の生命を保全し発展させるためには、軍備撤廃と核廃絶が人類共通の最重要課題であることをあらためてわたしたちに思い起こさせています。
今日は主の降誕から八日目、神の母聖マリアの日であります。この日幼子はイエスと命名されました。マリアはイエスの誕生とその後に続いて起こった出来事についてすべて心に納め思いめぐらしておられました。聖母の生涯は神のみ心を求め神のみ心に従うという生涯でありました。神のみ心は神の言葉により伝えられますが、また出来事によっても伝えられます。
今の世界で起こっている種々の出来事に中に神のも心が示されているのではないでしょうか。環境破壊は大自然の中に刻まれている神の秩序をないがしろにした結果ではないでしょうか。
聖母の生涯を偲びながら、この宇宙と大自然に示されている神のみ旨を畏れ敬う心を大切にして、この1年を過ごしたいと思います。