教区の歴史
徳田教会ヴィンセンシオ祭説教
2007年09月30日
2007年9月30日 徳田教会にて
年間第26主日を迎え、徳田教会は保護の聖人ヴィンセンシオ・ア・パウロを祝い、またその機会に堅信式を行います。
今日の福音はルカの福音書の「金持ちとラザロの話」です。
「ある金持ちがいた。いつも紫の衣や柔らかい麻布を着て、毎日ぜいたくに遊び暮らしていた。 この金持ちの門前に、ラザロというできものだらけの貧しい人が横たわり その食卓から落ちる物で腹を満たしたいものだと思っていた。犬もやって来ては、そのできものをなめた。」
金持ちとラザロが非常に対照的に描かれています。金持ちがいかにぜいたくか、ラザロはいかに惨めであるのかが強調されています。これはまさに人間の住む世界の現実です。イエスの時代がそうであったように、今の世界もこのようなひどい現実があります。この福音を読んで今あらためて思いますのは、どうしてこの金持ちはすぐそばにいる貧しい人の存在に眼をとめなかったのだろうかということです。金持ちは生きているときラザロの存在を知らなかったのか?知っていたが気にもとめなかったのか?彼はこの貧しいラザロに無関心であったと思われます。
この金持ちのことを他人事のように読んでしまいがちですが、もしかしてこの金持ちはわたしたちのことかもしれないと思います。わたしたちはすぐそばにいる人のことが分かっていない!関心がない!人の貧しさ、苦しみ、悲しみ、辛さが分からないし、分かろうともしていないかもしれません。世界中に貧しい人がいます。不幸な人もいます。経済的に貧しくなくとも、不幸な人、傷つき、病み疲れ、落ち込んでいる人がいます、わたしたちのそばに。いやわたし自身がその人かもしれません。ラザロはあなたであり、わたしです。そして同時にこの薄情な金持ちもわたしであり、あなたではないでしょうか!
今日の第2朗読は使徒パウロのテモテへの手紙です。
「神の人よ、あなたは、正義、信心、信仰、愛、忍耐、柔和を追い求めなさい。信仰の戦いを立派に戦い抜き、永遠の命を手に入れなさい。命を得るために、あなたは神から召され、多くの証人の前で立派に信仰を表明したのです。万物に命をお与えになる神の御前で、そして、ポンティオ・ピラトの面前で立派な宣言によって証しをなさったキリスト・イエスの御前で、あなたに命じます。 わたしたちの主イエス・キリストが再び来られるときまで、おちどなく、非難されないように、この掟を守りなさい。」
すごいことばです。来年6月からの一年がパウロの年とベネディクト16世教皇様は宣言しました。とくにパウロに学ぶ年です。堅信の秘跡とは勇敢に信仰を現し伝えるための聖霊の恵みを授ける秘跡です。まさにこのパウロの言葉を実行するための恵みを授ける秘跡です。そして今日はヴィンセンシオ・パウロを祝う日でもあります。この聖人は神の愛の実践に特に秀でた聖人でした。
今日は午後、カテドラルで大改修工事の完成を祝うミサが捧げられます。わたしは「東京カテドラルと教区のための祈り」を祈るようお願いしてきました。その祈りの中に、「東京カテドラルとそこで行われる神の民の典礼が、あなたの愛と光を現すものとなり、また、多くの人にあなたのいやしと励ましを伝える場となりますように」という言葉があります。わたしはパウロのように非常に毅然とした勧めにはちょっとたじろぎますが、せめてこの祈りの言葉を自分でも日々実行したいと切に願っています。
どうか主よ、わたしたちが今日の福音に教えられ、お互い、隣人である貧しいラザロの苦しみに気づき、神の愛を現し伝えることができますよう、導き励ましてください。アーメン。