教区の歴史
司祭叙階式訓話
2004年03月07日
2004年3月7日、東京カテドラル聖マリア大聖堂にて
【司祭受階者】
使徒ヨハネ 林 正人(東京教区)
洗礼者ヨハネ 山口 雅稔(コンヴェンツアル聖フランシスコ修道会)
【朗読箇所】
第1朗読 エゼキエルの預言36章24節~28節
第2朗読 使徒ヨハネの手紙4章7節~16節
福音朗読 ヨハネによる福音13章1節~15節
【訓話】
使徒ヨハネ 林 正人さん、洗礼者ヨハネ 山口 雅稔さん、お二人の司祭叙階式にあたり司祭の務めについてお二人と、ここのお集まりのすべての皆さんに申し上げます。
本日の司祭叙階式で読まれる聖書の箇所はいま司祭に叙階されようとしているお二人自身が選んだ箇所です。
福音の朗読は聖木曜日に行われる典礼である洗足式の場面です。主イエスは最後の晩餐のときにご聖体の秘跡を制定されましたが、もう一つ非常に重要な出来事を記念として残されました。それが、イエスが弟子たちの足を洗い、弟子たちに「あなたがたも互いに足を洗い合いなさい」という戒めを残されたことです。これはイエスが残された新しい掟「わたしがあなたがたを愛したようにあなたがたも互いに愛し合いなさい」に対応するものです。
林さんと山口さん、いまあなたがたが司祭に叙階されるのはあなたがたの栄誉・名誉のためではありません。それはよくお二人が承知していることです。しかし、年月が経つとこのことが曖昧になってきます。いつのまにか自分の名誉・権力にこだわり、それが与えられない、或いは認められないと不満を覚えるようになることもあり得ます。お二人は今日の福音をいつまでの心に深く刻み生涯この福音に忠実に生き抜いてください。
第2朗読はヨハネの手紙です。ヨハネは言います。「わたしたちが神を愛したのではなく、神がわたしたちを愛して、わたしたちの罪を償ういけにえとして御子をお遣わしになりました。ここに愛があります」(4.10)。
わたしたちは神の愛を知り信じています。それは神が先に主イエスを世に遣わし、イエスを通して神の愛を証ししてくださったからです。神の愛を証しすること、それは教会の使命であり、その使命に奉仕するのが司祭です。司祭は日々神の愛を受けそれを人々に伝えます。神の愛・アガペーを受けていなければそれを人々へ現し伝えることはできません。日々神の愛への感謝のうちに司祭の務めを果たしてください。
第1朗読はエゼキエルの預言です。主なる神は言われます。「わたしはお前たちに新しい心を与え、お前たちの中に新しい霊をおく。わたしはお前たちの体から石の心を取り除き、肉の心を与える」(36.26)。
人々へ神の愛を告げ知らせるのはこの新しい心、新しい霊、肉の心であります。わたしたちは日々新たにされなければなりません。日々新たに生まれなければなりません。わたしたちを新たにしてくださるのは神の霊・聖霊です。
お二人は今日、聖霊の賜物を受けて司祭として新たに誕生します。昔からわたしたちは新司祭に聖霊の息吹、新しい神の恵み、復活のキリストの働きを感じてきました。新司祭は教会の喜びであり希望です。この喜び・希望を日々新たにしながらあなたがたの生涯を神と人々へ捧げてください。
今日はこのように多くの人があなた方のために集まり、祈り喜びをともにしています。この喜びを力として最後の日まで歩んでください。いつか孤独と試練、暗闇のときがくるかもしれません。そのとき今日の叙階式の喜びと決意を思い出してください。
司祭は日々霊的に新たに生まれなければなりません。そのために大切なことはまず何より毎日のミサと教会の祈りです。教会のいのちである聖霊の息吹に日々触れるもっとも重要な恵みの時は日々の典礼であります。また、独りになって捧げる個人の祈りも大切です。さらに心身の健康の保持にも努めてください。神の恵みは人間の側からの協力を前提としています。
いまこの訓話を結ぶに際してなおいくつかのことを付け加えたいと思います。多くの人がお二人の生活を見てキリストに導かれます。生活の証しが大切です。お二人は司祭として、また山口さんは修道者として清貧の徳を実践するよう心がけてください。現代の消費主義社会の中ではとくに質素で単純な生活が福音の証しとして大切です。人々はあなた方の日々の生活の中に貧しく生きられた主イエスの姿を見たいと望んでいます。またお願いします。誰に対しても柔和で謙遜、親切な態度で接してください。そうすれば人々はあなたがたの中によい牧者キリストの姿を見い出すことでしょう。さらにお願いします。柔和で謙遜とともに真理に対する忠実と不正に対する毅然とした態度を保持してください。なぜなら聖パウロが言うように「愛は不義を喜ばず、真実を喜ぶ」からです。(コリントの信徒への第一の手紙13.6)
願わくは真理と愛の霊がいつもあなたがたに留まり、あなたがたを教え導き強めたまわんことを!アーメン。