教区の歴史
2002年 復活徹夜祭のミサ説教
2002年03月30日
2002年3月30日、東京カテドラルにて
皆さん、長い準備の期間をへて、いまわたしたちは今年の復活徹夜祭を迎えました。
復活徹夜祭は教会の伝統が伝える、もっとも大切でもっとも豊かな典礼であります。
あまりにもその内容の密度が濃いものなので、本来、一年がかりくらいで味わうべきものではないかと思います。今日はこの豊かな典礼のなかからほんの一部を選び出し、皆さんとご一緒に味わってみたいと思います。
徹夜祭の大切なテーマは「救いの歴史」です。典礼全体を通して壮大な神の救いの計画とその展開が述べられています。
わたしたちの信仰の根元のところには、「神の国の到来と完成」ということがあります。すなわち、イエス・キリストにおいて神の国はすでに到来したのであります。しかしまだ完成しておりません。神はいつの日か神の国を完成してくださる、ということです。
今日の第5朗読、イザヤの預言で主は言われます。
「わたしの思いは、あなたたちの思いとは異なる」「わたしの口から出るわたしの言葉もむなしくは、わたしのもとに戻らない。それはわたしの望むことを成し遂げわたしが与えた使命を必ず果たす」(イザヤ55・1-11)
わたしたちは信じています。この世界と宇宙を創造された神は、いまなお創造のみわざを続けられ、やがて、この世界を完成してくださいます。そのように神がお望みなのです。ですから神は必ずわたしたちの救いと世界の完成を成就してくださると信じることができます。この信仰は次の祈りによって美しく表現されています(第一朗読「創世記」の後の第一祈願)。
「全能永遠の神よ、あなたは万物を、み手の業として美しく造ってくださいました。時が満ちて、キリストの過ぎ越しによって新たにされた世界は、時の初めに造られたものよりもさらに美しいものであることをあがなわれた民に悟らせてください」
ところで復活徹夜祭では洗礼式が行われます。
洗礼とはパウロが教えているように、キリストの死と復活にあずかること、キリストとともに死に、キリストとともに、新しいいのちに生きるようになることです。
洗礼式では、「白衣の授与」が行われます。その際、司祭はつぎのように言います。
「あなた方は新しい人となり、キリストを着るものとなりました。神の国の完成を待ち望みながら、キリストに従って歩みなさい。
白い衣をつけて、新しく生まれ変わることを表します。このことはすでに旧約の預言者によって告げられていました。本日の第7朗読、エゼキエルの預言は教えます。
「わたしが清い水をお前たちの上に振りかけるとき、お前たちは清められる。わたしはお前たちを、すべての汚れとすべての偶像から清める。わたしは新しい心をあなたがたに与え、新しい霊をあなたがたの内に授け、あなたがたの肉から、石の心を除いて、肉の心を与える。」(36・16-17a,18-28)。
神の霊の働きによってわたしたちのかたくなな心は粉々に砕かれて肉のような柔軟で素直な心になります。まったく新しく生まれかわることができるようになるのです。
人間、どうしようもない体験をすることがあります。でも、人の目にはどのように見えても、神にはおできになれないことはありません。人はどのような過去にも決別し、新しく生まれ変わることができるのです。
この新生、生まれ変わりは洗礼によって始まり、最後の過ぎ越しである死によって完成します。死から命へ、という過ぎ越しを生きる復活の信仰を新たにし、これからの日々を希望と信頼を持って主なる神におささげいたしましょう。