教区の歴史
2014インターナショナルミサ 説教
2014年09月28日
2014年9月28日 東京カテドラル聖マリア大聖堂にて
聖書朗読 I. エゼキエル18・25—28 II. フィリピ2・1—11 E. マタイ21・28—32
ホミリア
今日9月28日は聖ロレンソ・ルイスの記念日です。彼が殉教したのは1637年9月29日ですが、29日は三大天使の祝日なので28日が記念日になっています。この日は日本で殉教した16人の聖人を一緒に記念する日で、日本での祝日の名前は「聖トマス西と15殉教者」ですが、世界的には「聖ロレンソ・ルイスと同志殉教者」と呼ばれています。
ロレンソ・ルイスについて、フィリピンの方々はよくご存知でしょう。中国人を父とし、フィリピン人を母として、1600年頃マニラで生まれ、幼い頃から教会によく通い、大人になってもロザリオ会員として教会の活動に参加していました。妻と子どもがいて家庭にも恵まれた男性でした。しかし1636年、彼はある事件に巻き込まれ、フィリピンにいることができなくなり、たまたま外国に行く船があったので、その船に飛び乗りました。
その船は日本を目指している船で、乗っていたのは宣教師たちでした。日本では徳川幕府によるキリシタン弾圧が激しかった時代です。宣教師たちはいのちがけで日本を目指していました。全員が沖縄で捕らえられ、長崎に連行されました。
ロレンソ・ルイスは信仰を捨てればいのちを許してやると言われましたが、信仰を守り抜き、殉教者の1人になりました。
彼がマニラで船に乗り込んだとき、殉教することになるとはまったく考えていなかったでしょう。むしろ、自分の命を守ろうという一心で、母国を捨てて外国行きの船に乗り込んだのでした。しかし、彼は自分でもまったく予想しない形でイエスをあかしすることになりました。
このロレンソ・ルイスの姿は、日本に住んでいる外国人の姿と重なるように思います。皆さんの多くは宣教師や証し人になるために日本に来たのではないでしょう。皆さんの多くはたぶんカトリック信者が多い国から来たと思います。カトリックの信仰は当たり前だと感じてきた方が多いと思います。でも来てみたら、日本はそうではありませんでしたね。日本の社会ではキリストを信じていることは特別なことです。皆さんもそういう目で見られたことがあるでしょう。「なぜ、あなたは神を信じていますか?なぜ、あなたはクリスチャンですか?なぜ、あなたはカトリック教会に行くのですか?」もしかしたら日本に来て初めて自分の信仰が問われたという方もいるのではないでしょうか。
ロレンソ・ルイスが神の証人として選ばれたように、皆さん一人一人も、日本という国でキリストの証人になるよう、神によって不思議な仕方で呼ばれたのではないでしょうか。
今日の福音は二人の兄弟のたとえ話です。
父親は二人の息子に、「子よ、今日、ぶどう園に行って働きなさい」と言いました。1人は「はい」と答えながら、結局、行きませんでした。もう1人は「いやです」と答えながら、後で考え直して、でかけました。
わたしたちも神の呼びかけに応えるかどうか、問われています。ただ口先で答えるのではなく、心から、自分の生き方をもって答えるかどうか、問われています。「悔い改めて、悪を離れ、正義と恵みのわざを行うこと」、これが第一朗読のエゼキエル書で求められていることです。「利己心や虚栄心を捨て、イエスにならってへりくだり、他の人のことに注意を払う」これが第二朗読のフィリピ書で求められていることです。神の望みはこれです。厳しくて難しい要求でしょうか。いいえ、神は決してわたしたちに苦役を課そうとしているのではありません。
「子よ、今日、ぶどう園に行って働きなさい」
ぶどう園に行って働くこと。そこにはもちろん、いろいろな苦労もあるでしょうが、むしろ収穫を共にする大きな喜びがあります。神は福音の喜びを共に味わうようにわたしたちに呼びかけているのです。
今日、このミサの後に、小さなグループで分かち合いをします。その分かち合いのテーマは、フランシスコ教皇の使徒的勧告『福音の喜びEvangelii Gaudium』からとりました。
「あなたが見つけたもの、あなたを生かすもの、あなたに希望を与えているもの」です。 フランシスコ教皇の元の文章はこうなっています。
「イエスなしの人生は違ったものになることを、皆さんの心は知っています。あなたが見つけたもの、あなたを生かすもの、あなたに希望を与えているもの、これこそあなたが他者に伝えるべきものです。」(121)
教皇はこうも言っています。
「イエスを知っているのと知らないのとでは大違いですし、イエスとともに歩むのと手探りで歩むのとではまったく異なります。」(266)
信じているわたしたちに何が実現していますか。わたしたちは、イエスから生きるのにどんな助けを与えられ、どんな希望を与えられていますか。フィリピン人も韓国人も、アメリカ人も中国人も、その他の国の人々も日本人もここにはいます。わたしたちは皆、イエスを知っています。信仰の恵みをいただいています。それはわたしたちの人生をどのように輝かしているでしょうか。そのことを分かち合えたら素晴らしいと思います。
「子よ、今日、ぶどう園に行って働きなさい」
「主のぶどう畑」はどこにあるでしょうか。わたしたちが日々生活している場が、主のぶどう畑です。そこでわたしたちが福音の喜びを生き、日々で会う人々とその喜びを分かち合うことができますように。アーメン。