教区の歴史
2001年司祭集会での『新しい一歩』の趣旨説明
2001年11月19日
2001年の司祭集会に際し、先日発表の『新しい一歩』について、あらためて趣旨を説明し、司祭団のご理解ご協力をお願いします。
前任者の意向を引き継いで
また東京教区司祭団の働きを尊重し、同時に、第2ヴァチカン公会議後の日本カトリック司教協議会の動きに学びつつ、自分自身の考察と体験を踏まえての、わたくし自身の決意表明と協力の要請であります。その内容は東京教区の司祭研修会と司祭集会などの流れにそって、小教区の再編成に絞っています。
教区本部の改革
ただし、わたくしが目指しているのは、単の現在の小教区を改革する、ということだけではありません。小教区の在り方を改革しながら教区自体を刷新することを目指すものです。『新しい一歩』でも述べておりますように。教区本部機構の改革と機能の充実をも視野に入れています。
新しい教会法においては、教区本部事務局は、たんなる事務執行機関ではなく、「教区全体の統治、特に司牧活動の指導、教区行政の遂行及び行使において、司教を助ける諸機関及び人々」によって構成される機関(第469条)と位置づけられています。
今回のこのメッセージの背景には、明治以来の教会の歩みがあります。昨年の森司教の講演で指摘されたように、日本のカトリック教会は、教区、小教区、宣教会・修道会などの働き適切に統合されていないという、分断の痛みにいまなお担っています。この現状を直視し、教区司教の本来の任務を明らかにすることを通して、教区内の諸勢力を結集し、さらに教区の間の連携を推進しつつ、日本の教会の福音化を強化していきたいと切に望んでおります。
福音化の使命の遂行
教会の使命は福音宣教です。(パウロ6世教皇の『エヴァンジェリイ・ヌンチアンディ』にしたがって、「福音宣教」というより「福音化」というべきかもしれません)。
この福音化を推進する責任者が司教です。
『新しい一歩』で次のように述べました。
「宣教する共同体、弱い立場の人々の救いとなる共同体として教会が刷新されるためには、小教区の在り方を根本的に見直すことが不可欠です。そしてそのためには、まず、「小教区の再編成」が緊急最重要課題である、と考えます」。
そして、この考え方の背後には、着座式で述べたわたくしの決意表明があります。司教の任務を行うに際しこのとき述べたことばを常に深く心に刻み付けて歩んでまいりたいと思います。
そこできょうあらためて皆様司祭団のご理解ご協力をいただき、主イエスにならって、この首都圏において弱い立場に置かれた人々、圧迫されている貧しい人々のやすらぎ、なぐさめ、はげまし、力、希望、救いとなり共同体の建設と発展のために力を尽くす決意を新たにしたいと存じます。
とくにいま、外国からの居留者と精神的な圧迫されて苦しんでいる多くの人々の友となり助けとなるための教会のネット・ワークをつくり広げていく必要を強く感じています。
司教のイニシャティヴとリーダーシップ
いま、困難な状況に置かれているわたしたちの教会において、教区司教のイニシャティヴとリーダーシップが切に求められております。わたくしは微力でありますので、教区の皆様、とくに司祭団のご理解ご協力を必要としております。『新しい一歩』は司祭団のなかより結成されたプロジェクト・チームでの話し合いと司祭評議会での論議をへて準備され起草されたものです。その背景には、司教としての使命・任務を遂行しなけれならない、という意識が強く働いています。「ともかくはじめなければ何もできないのではないか」という気持ちでこのメッセージを発表しました。
2001年の司祭集会においてあらため、「司教としての務めを果たしていきたいので皆様に助けていただきたい」ということを強く訴えたいと思います。
三つのC
このプロジェクトを遂行するためにもっとも大切なことは「協力」cooperationということです。協力はさまざまなレヴェルにおける協力ですが、何よりまずわたしたち、司教・司祭の間の協力です。
協力するためには相互の理解と共感が必要であると思います。それをコミュニケーションcommunicationということばで言い表しましょう。これはいろいろな意味での分かち合いです。わたしたちはこのコミュニケーションはコムニオcommunionにつながるコミュニケーションとして大切にしたいと考えます。
すでにイエス・キリストの司祭のつとめにおいて一つであるわたしたちが、自分のいただいている召命の理解を深めながら、具体的に、この課題、すなわち小教区再編成において協力することを最重要課題ととらえ、この3つのCの実行につとめるよう決意し、そのように皆様にもお願いする次第です 。
地域協力体での話し合い
目下、各地域協力体でいくつかの設問に基づいて話し合いをしていただき、その結果を集約して12月15日までに教区事務局に提出していただくようお願いしております。この司祭集会でも同じ設問について話し合っていただきたいというのがプロジェクト・チームとわたくしよりのお願いです。
地域協力体をベースに話し合いを進めるということは一つの選択でした。「名前だけで何も機能していない地域協力体があるのにそこから出発するというのはいかがなものか」という意見があることを承知しています。それでもあえてその道を選びました。ともかく名前だけになっていても,この機会に、小教区再編成を小教区同士で考えていただくことが必要かつ有益であると考え、またこの作業と過程をへて、新しい協力の体制(態勢)が芽生え育つことが期待できると考えたからです。
来年度の具体的な課題
現在80前後の小教区・分教会を20内外の単位に総括する、という方向で準備をはじめたわけです。これは大変なことです。
再編成される20のグループには「世話人司祭」が選出されます。この役割を明確にしていかなければなりません。
また財政と会計がどうなるのか、が大きな課題です。転出入などの事務処理をどうするのか、も問題です。
どのグループもまったく同じ体制になるのか、場合によっては柔軟に対応するのか。
いっせいに新体制へ移行するのか。
その他、さまざまな課題・問題が予想されます。
とくに修道会委託教会の場合は、丁寧で慎重な協議が必要です。
すでに宣教会・修道会の責任者との話し合いの機会を二度ほど持ちましたが、これからは1月末までに、応個別に各宣教会・修道会責任者と司教との話し合いを行う予定で調整中です。
来年度の予定について
2003年復活祭以後の新体制への意向を目指して具体案の取りまとめを行いたいと考えています。
来年一年でさまざまな協議・検討を行い。最終案を作成します。それを何らかのプリセスをへて確定に持っていきます。そのプログラムは今のところ未定です。
この作業には多くのエネルギーが必要です。司教と教区事務局にはかなりな分量の通常任務があります。これに加えて新しい任務を実施することは無理であると判断し、もっぱらこの任にあたっていただくプロジェクト担当司祭を任命したいと考えております。
また、本年、突然、教区集会を実施しましたが、本年もこのような集会が必要になるでしょう。これも重要な検討課題です。
人事と教区本部機構改革
司教にとって人事異動がいかに辛い務めであるか、ということは十分ご理解いただけるものと思います。来年春の人事異動は再来年の人事を考えて、できるだけ最小にとどめたいと考えておりますが、どうしても在る程度の人事は実施しなければなりません。
なお、教区本部機構の改革の必要を述べましたが、それには当然、人事異動が伴うことになります。教区事務局のことだけではなく、諸委員会の改組も必要となるでしょう。また、再編成されたグループと司教とのコムニケーションの道筋も考えていかなければなりません。これにも人事が関係してきます。
新しいグル-プと現行の地域協力体との関係がどうなるのか、も考えていかなければなりません。
新しい教会法の規定を参照しながら、どのような可能性があるのか、じっくり検討していきたいと思います。
神父様方の日ごろのご苦労ご協力にこころから御礼申し上げます。
わたしたちが聖霊の恵みに助けられ、司祭の務めを最後まで忠実に果たすことができますよう、互いに祈りましょう。
2001年11月19日
東京大司教 ペトロ 岡田武夫
(司祭集会での講話のために用意された原稿で、当日必ずしもこの字句どおりに伝えられたわけではないことをお断りします。2001年12月30日に修正をしました。)