教区の歴史

教区の歴史

書簡「信仰年」を迎えるにあたり

2012年09月30日

カトリック東京教区の皆さん、

主の平和が皆さんとともにありますように。

教皇ベネディクト十六世は、第二ヴァチカン公会議開催五十周年と『カトリック教会のカテキズム』発布二十周年を記念して、2012年10月11日より翌年の2013年11月24日までを「信仰年」とする、と宣言しました(※1)。

わたくしは、「信仰年」を迎えるにあたり、いろいろな機会に、東京教区のすべての皆さんに、

1)自分の信仰を確かめること、2)自分の信仰を深めること、3)自分の信仰をあかしし、伝えること、を訴えてきました。本日はあらためて、東京教区の優先課題(※2)を念頭に置きながら、以下の諸事項の実行を心がけるよう皆さんにお願いいたします。

 

1.イエス・キリストをより深く知る。

「信仰年」にあたり、「信仰の創始者また完成者」(ヘブライ12・2)であり、道であり、真理であり、命である主イエスをより深く知るように務めることが何より大切です(『信仰の門』13参照)。

イエスはわたしたちの信仰の最高の指導者です。ナザレのイエスは十字架の死によって父なる神への信仰を全うしました。福音書によって示されたイエスの生涯は「二千年に及ぶわたしたちの救いの歴史を特徴づける信仰の模範」(『信仰の門』13)を完全に明らかにしています。イエス・キリストの言葉と生涯によって信仰を学び深めるようにいたしましょう。

いうまでもありませんが、イエス・キリストの言葉と生涯を学ぶためにもっとも大切なことは四つの福音書を学び味わうということです。福音書はミサのとき必ず読み上げられますので、まず主日のミサの福音を学び味わうようにしてください。説教は主日の福音朗読の箇所と、わたしたちの日々の生活・現代社会とのつながりについて解き明かしながら、信者が日々信仰に生きるよう励まします。

なお、主日のミサでは、他に二つの聖書朗読が行われます。第一朗読は、多くの場合旧約聖書です。旧約聖書はイエス・キリスト以前の救いの歴史を述べ、救い主イエス・キリストの到来をあらかじめ指し示しています。第二朗読は使徒パウロの手紙などであり、最初の教会の使徒たちがイエス・キリストの言葉と生涯をどのように理解していたのか、をわたしたちに示しています。福音の内容をより深く理解するために二つの聖書朗読の内容を合わせて学ぶようにしてください。

 

2.第二ヴァチカン公会議と『カトリック教会のカテキズム』を学ぶ。

開催五十周年を迎える第二ヴァチカン公会議の教えを学びましょう。まず、なぜ公会議は開かれたのか、という会議開催の趣旨と目的を確認してください。また、第二ヴァチカン公会議はどのように教会を刷新したのか、について、学ぶようにしてください。各小教区・修道院、諸グループなどで是非第二ヴァチカン公会議を学 ぶ機会を設けていただきたいと思います(※3)。

 『カトリック教会のカテキズム』は第二ヴァチカン公会議の教えに基づいて新たに編纂され、ちょうど二十年前に発布されました。公会議によって刷新されたカトリック教会の教えを学ぶために有益な権威ある教えです。『カトリック教会のカテキズム要約(コンペンディウム)』をテキストに使用することもできます。公会議によって刷新された部分に注目する読み方も考えられます。カテキズムの勉強をお勧めします(※4)。

 

3.「信条」を学ぶ

主日・祭日のミサで必ず唱えられる「信条」の意味を学び直すようお勧めします。

「信条」は古代の教会が確立した共通の信仰理解を簡潔にまとめた信仰告白であり、祈りとして唱え続けてきたわたしたちの信仰の遺産であります。

「信条」は「わたしは信じます」(クレド)という言葉で始まっていますが、ミサ中、共同体の信仰宣言として唱えています。教会は二千年にわたり、「信条」を共同体共通の信仰告白としてきました。この機会に、「信条」によって、自分たちは、「何を、誰を、どのように信じているのか」を確認し、信仰を深めていただきたいと思います。『カトリック教会のカテキズム』では「信条」の解説をしていますので、より深い理解のために活用してください。

古代教会の信仰理解を現代の日本で、どのように表現し伝達できるのか、という課題は重要です。いろいろな方々ともども、研究し検討していきたいと願っています。

 

4.典礼と秘跡、日々の祈りと黙想

聖霊降臨の日に教会は誕生しました。弱い人間の集まりである教会はたえず聖霊に支えられ導かれてキリストの救いのみわざを現し伝えています。キリストは教会の典礼と諸秘跡(洗礼、堅信、聖体、ゆるしの秘跡、病者の塗油、叙階、結婚)を通して今も、どこでも、働いておられるのです。

わたしたちがまず秘跡の恵みを大切にするとともに、日本社会の多くの人々が入信の秘跡(洗礼・堅信・聖体)の恵みにあずかることができますよう祈り、またそのために各自ができる奉仕をささげるようにいたしましょう。(※5)

日常の祈りについては、公会議以前は全国共通の定められた『公教会祈祷文』などによって日々の祈りが行なわれ、「お告げの祈り」などがよく唱えられておりました。現在は『教会の祈り』がすべての信者の日々の祈りのために推奨され、さらに種々の祈りの本が発行されています。各自が日々、み言葉に生かされながら、祈りを大切にして歩むよう、互いに励まし合いましょう。

またこの機会に、旧約聖書と新約聖書の通読に挑戦することも大いに勧められます。

なお、通常、待降節・四旬節に行われる黙想会については、「信仰年」にちなみ、その主題を「信仰」とし、各自が自分の信仰を振り返り、信仰を深める機会とするようにお願いいたします。

 

5.信仰と愛のあかし

「信仰年」は信仰を深め、愛のあかしを実践するためのよい機会です(『信仰の門』14より)。信仰、希望、愛の中でもっとも偉大なものは愛です(一コリント13・13)。

イエスは言われました。「わたしの兄弟であるこのもっとも小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」(マタイ25・40)これは深い信仰をもって受け取るべき大切なメッセージです。どんなに多くの人が人間の尊厳を剥奪され、理解と連帯、解放と救済、そして自分が一人の人間として真に大切にされることを求めていることでしょうか。また、自分は誰であり、何のために生きているのかわからない、という思いを抱き、深い孤独感と生きがいの喪失に苦しんでいる人も少なくはありません。現代の日本において自死が極めて多いことも、キリストの弟子たちが深く心に刻むべき問題であると思います。現代の厳しい現実のなかで、ひとり一人をかけがえのないものとして認め受け入れる神の愛を実行することこそ、信仰を人々に伝える大切なあかしとなります。この神の愛のあかしは福音宣教の働きそのものです。

また世界と社会の現実に目を向け、教会の社会教説を学びながら、人類共通の問題の克服のために、知恵と勇気をもって努力することは、信仰共同体の大切な務めであると思います。

わたしたちの生涯は信仰の旅路、巡礼の旅路(※6)です。すでに永遠の命に移されていること(ヨハネ5・24、一ヨハネ3・14参照)に感謝しながら、地上を去った方々を偲び、日々聖霊に導かれながら、わたしたち自身が、死から命への過ぎ越しの完成にあずかることができますよう、聖母の取り次ぎによって祈ります。

皆さんの上に父と子と聖霊の神様の豊かな祝福がありますように。

 

2012年9月30日

東京大司教 ペトロ 岡田武夫

 

 

追伸

東京教区としての「信仰年」開始のミサは10月14日(年間第28主日)午前10時、東京カテドラル関口教会にて大司教の主司式によりささげられます。

10月5日開催の特別臨時司教総会で決定される予定の司教団文書をお読みください。これは、第二ヴァチカン公会議の後の日本のカトリック教会の福音化の歩みを解説しています。

 

 


 

(※1)教皇「信仰年」の趣旨は教皇の自発教令『信仰の門』(カトリック中央協議会)によって説明されています。

(※2)三優先課題についてはたとえば2010年1月10日の年始の集いミサ説教を参照。

「信仰の生涯養成・霊的成長(信徒による福音宣教の推進)」「多国籍教会としての成長(外国人司牧)」、

「心の問題・心のケア(心の病と傷を負った人々への支援)」

(※3)公会議文書の改訂訳は来春発行の予定です。四つの憲章、九つの教令、三つの宣言の十六文書で構成されています。

その解説を読みながら内容を学ぶよう勧めます。また特に『教会憲章』『現代世界憲章』はそのテキストそのものをよく読むよう勧めます。

(※4)以下の四種類のカテキズムの書物が利用できます。

  • 『カトリック教会のカテキズム』カトリック中央協議会
  • 『カトリック教会のカテキズム要約』同上
  • 『カトリック教会の教え』同上、日本の文化と状況を考慮し、『カトリック教会のカテキズム』に基づいて日本の司教協議会が編纂した新しい教えの書。
  • 『YOUCAT(ユーキャット)』同上、青年向けに編纂された新しい教えの書を日本の青少年部門が翻訳して来年6月発行の予定。

(※5)秘跡についても上記の4種類の「カテキズム」から学ぶことができます。

(※6)「信仰年」にあたり地上の聖所(主キリスト、聖母、聖人、殉教者を記念する聖なる場所)を訪問し信仰を深めるための信仰の旅「巡礼」が推奨されます。

 

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