教区の歴史

教区の歴史

2009年を迎えて教区の皆さんへ ―「東京教区年始の集い」挨拶要旨―

2009年02月08日

2009年2月8日(日)東京カテドラル聖マリア大聖堂で

 

1.昨年の11月24日、わたしたち日本のカトリック教会は大きな恵みのときを迎えました。それは長崎で行われたペトロ岐部と187殉教者の列福式です。188人中、東京教区で殉教した方はペトロ岐部とヨハネ原主水のお二人です。東京教区は188人の殉教者の信仰、とくにこのお二人の信仰と生涯に学ぶよう心がけたいと思います。殉教者の祝日は7月1日です。その日、各聖堂で「ペトロ岐部と187殉教者」のミサがささげられます。7月5日の主日にも「ペトロ岐部と187殉教者」の取次ぎを願う祈りがささげられるようお願いします。 

2.188人の福者のなかには4人の殉教者の司祭が含まれています。ジュリアン中浦、ディオゴ結城了雪、トマス金鍔次兵衛、そしてペトロ岐部カスイの4人です。この4人の司祭はよい牧者として、司祭の務めを忠実に果たし、最後には羊のために命をささげました。

エゼキエルの預言34章によれば、よい牧者とは自分を養うのでなく自分の羊を養う牧者です。今のわたしたち司教、司祭はどのように自分の務めを果たしているでしょうか?弱い者を強め、病める者を癒し、傷ついている者を包むという牧者の務めを忠実に果たしているでしょうか?司祭によるセクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントという問題も指摘されています。わたしたち司教・司祭はこの点を真摯に反省しなければなりません。 

3.188人の中に女性は60人おられます。60人の中で特にわたしは小笠原みや、という方が強く印象に残っています。小笠原みやは小笠原玄也の妻、そして9人の子どもの母であり、さらに小笠原家には4人の奉公人がおりました。この小笠原家15人が1636年1月30日、熊本で殉教しました。ここに信仰・希望・愛で結ばれた15人の家族の固い結束が見られます。400年たったいま、わたしたちの家庭・家族はきわめて厳しい状況にあります。 

4.1993年に開催された第二回福音宣教推進全国会議(NICE-2)は「家庭」という主題を選びました。司教団はその答申を受けて、教会こそ家庭を支え導かなければならないことを強調しました。人類の基本単位は家庭であり家族です。日本の再建と刷新はまず男と女、夫と妻、親子兄弟姉妹の関わり刷新と再建から始まらなければなりません。白柳誠一枢機卿は列福式のミサの説教で、400年前の殉教者たちが家庭と家族を大切にしたことに倣うようわたしたちを励まされました。 

5.「東京カテドラルと教区のための祈り」をご存知ですか?この祈りの中に、「どうかわたしたち東京教区に、現代の荒れ野において悩み苦しむ多くの人々のいやし、慰め、励まし、希望となって歩む恵みをお与えください」という言葉があります。「荒れ野」ということばはベネディクト16世の就任式のミサの説教の中でたびたび使われた言葉です。まさにわたしたち東京教区は荒れ野・砂漠に置かれていると実感しています。わたくしは、だからこそ、教会は荒れ野における泉・オアシスでありたいと切に願っています。そしてわたくしはこの課題を、教区の三つの優先課題の実践として展開することを考えてきました。東京教区の優先課題は

 (1) 教会の福音的使命に携わるすべての信者の霊的成長

 (2) 多国籍教会としての東京教区の成長と互いのサポート

 (3) 心の問題を持った人々とわたしたちの助け合い

であります。2002年以来この優先課題という旗を掲げています。教区として直接行う具体的実践はまだ試行錯誤の段階にあります。しかし教区の中の種々の働きをみれば、この目標は徐々に理解され浸透している、と楽観的に考えています。今日はなお皆さんに、各宣教協力体、聖堂 共同体、修道院、諸団体・グループなどがそれぞれ、優先課題を取り上げ、真剣に検討していただくようお願いする次第です。 

6.「 教会の福音的使命に携わるすべての信者の霊的成長」についてです。

最近色々な方法で、「聖書の分かち合い」が普及しております。これは信者の霊的成長に有益であります。より多くの方が参加なさるようお奨めします。また2009年6月29日の聖パウ ロの祝日までの1年は 「パウロ年」であります。この機会にパウロの教えを学ぶことも多いに奨められます。

この課題で本年特に大切にしたいとわたくしが考えている課題は「司祭と信徒の役割、協力の関係」です。2003年宣教協力体の発足のときに、わたくしは「カトリック東京教区宣教協力体のための指針」を発表しました。あれから6年、今一度この指針を読んで、司祭と信徒のよりよい関係を築く努力をしていただきたい、とお願いします。 

7.つぎに多国籍教会として東京教区の成長と互いのサポートです。

東京教区は困難な状況に置かれた外国からの移住者、避難民、滞在者を支援するために「カトリック東京国際センター」(CTIC)において相談・支援・司牧活動を行なってきました。来年、2010年CTIC創立20周年を迎えます。本年から亀戸、目黒、千葉の三箇所にあった事務所を一箇所に統合し、目黒教会のなかに新たに統合されたCTIC事務所を開設いたしました。この課題はCTICだけが担う課題ではありません。すべての共同体が行うべき課題です。これからはCTICと小教区(聖堂共同体)のつながりをより強いものにしたいと思います。 

8.そして、「心の問題を持った人々とわたしたちの助け合い」ということです。

心の問題、心の傷をもつ人を支え、助け、癒す、あるいは助け合い、支え合う、ということは本来教会が2000年ずっと行なってきたことでした。主イエスは実に癒しの人でありました。今この課題をとくに優先課題として取り上げるのは「時のしるし」が見えるからです。多くの人が過重なストレスに苦しみ、心に傷を持ち、迷い、悩んでいます。教会こそ荒れ野の泉、オアシスにならなければなりません。人は癒しと支えが必要です。神との語らいである祈り、典礼、そして隣人との誠実で思いやりのある心のふれあい、などできることはいろいろ考えられます。日常の小さなことを積み上げていきたいと思います。

なお、東京教区には財団法人「東京カリタスの家」があり、家族福祉相談室を設けて、この課題に取り組んできました。この働きは、東京教区の優先課題「心の問題」へ応答することでもある、と思います。わたくしはこの働きがさらに充実し発展することを願い期待しております。

本年はさらに、教区の福祉委員会の企画と働きに期待しています、またこの課題の担当司祭によってこの問題についての連続講座が企画・実施される予定です。 

9.最後に今日は、「カテドラル構内再構築」と「教区司祭のための家の建設」について申し上げます。

一昨年、カテドラルの外装の改修工事を行いました。ついでカトリックセンターの改修工事が行われました。2階と3階が東京韓人教会の信徒会館となります。これから関口会館2階の改修が行われ、完成後、現在の司教館の本部事務局がそこへ移ります。その後新しい司祭の家の建設を行います。

東京教区司祭はおよそ90人で高齢化が顕著です。今差し迫っている問題は、引退する司祭の住む家・部屋が不足しており、用意が間に合わないということです。

そこで老朽化の甚だしい現在の大司教館と、同じく老朽化の進んでいるその隣にある司祭宿舎「ペトロ館」を取り壊し、その跡地に新しい司祭のための家(仮称「新ペトロ館」)を建設することにいたしました。

なおこの家に居住する予定の司祭は、引退した教区司祭だけではなく、引退はしないで教区本部に協力する司祭、休養・研修中の司祭、内外からの訪問者の司祭、そのほか居住を必要とする司祭などです。

建設費はおよそ6億円です。教区には司祭の遺産などの寄付の結果である「司祭基金」がありますので、まずこれを建設費に充てることにいたします。しかしこれだけではとても足りません。教区本部所有のほかの会計単位から転用・借用する予定ですが、教区の皆さん(司教・司祭自身も含まれる)からの献金はありがたくお受けいたしたいと思います。(詳細は後日お知らせします)

なお大司教館の新築は行わず、現在の「司祭の家」が、漸次大司教館になるよう、準備する予定です。