大司教

週刊大司教第二百五十五回:復活節第六主日

2026年05月11日

復活節も第六主日となりました。

第六主日は世界広報の日です。この日のための教皇様のメッセージ、「人間の声と顔を守る」は、こちらからご覧ください

教皇レオ十四世は、人工知能(AI)の倫理的課題について、幾度も発言されています。すでに2024年正月の世界平和の日のメッセージにおいて、当時の教皇フランシスコはそのテーマを「人工知能(AI)と平和」とされ、その中で、「利用者が認識するとは限らない選択基準に従って、データの流れが構成され」ることによって、情報が操作される可能性への懸念を表明されています。
 
神の似姿として創造された人間には自由意志が与えられていますが、その自由意志を様々な形で制限する情報操作の危険性を指摘された教皇フランシスコは、同時に、「各人が本性的に備える尊厳と、わたしたちを唯一の人類家族として結びつける兄弟愛が、新技術の開発の基盤であるべきで、その実用化にあたっての評価の厳然たる基準とならなければなりません」と指摘し、共通善への貢献が重要であることを指摘していました。

さらに教皇フランシスコは、2024年6月14日、イタリア南部プーリアで開催された先進7カ国首脳会議(G7)に出席、人工知能(AI)をテーマにスピーチをされ、バチカンニュースによれば次のような指摘をされています。

「教皇は、AIが知識へのアクセスの民主化、科学研究の増大的な進歩、重労働を機械に一任する可能性を約束する一方で、先進国と発展途上国の間に、また社会の支配階層と抑圧された階層の間に重大な不正義をもたらし、「切り捨ての文化」によって「出会いの文化」が追いやられる恐れを語った」

ウクライナやイランでの紛争状態では、遠隔操作の兵器の倫理性が課題となっていますが、それを含め、教皇フランシスコは同年の平和メッセージで次のように指摘されてます。

「遠隔操作システムによる軍事作戦が可能になったことで、それらが引き起こす破壊やその使用責任に対する意識が薄れ、戦争という重い悲劇に対し、冷淡で人ごとのような姿勢が生じています。人工知能の軍事利用を含む、いわゆる「自律型致死兵器システム」の分野における新規技術の研究は、重大な倫理的懸念となっています。・・・人間だけが有する道徳的判断力や倫理的意思決定能力は、複雑に集積されたアルゴリズムが及ぶものではなく、その能力をマシーンのプログラミングに落とし込むことは不可能です。」

人間という心と身体を持った存在から切り離された人工的な存在が倫理観を支配するのであれば、その環境の中で人間の尊厳は損なわれ、共通善が崩壊する可能性は増し加わります。あ

以下、9日午後6時配信、週刊大司教第255回、復活節第六主日のメッセージです。

復活節第六主日
週刊大司教第255回
2026年5月10日前晩

御聖体の秘跡のうちに常に現存されることを約束された主は、さらに愛する弟子たちを心に留め、すべてのいのちへの愛といつくしみに駆られて、聖霊の導きを約束されます。イエスが語る言葉は、神の愛といつくしみに裏打ちされた言葉であるがゆえに、その愛に満ちあふれたイエスの御心の思いをわたしたちに伝えています。

「わたしはあなた方をみなしごにはしておかない」、「私もあなた方のうちにいる」というイエスの言葉は、共同体のうちに生きることによってわたしたちが神の愛といつくしみに満たされることを教えています。聖霊は教会共同体に働き、共同体としてイエスの福音を明かしするものであるようにと、わたしたちを導いてくださいます。

教会は、復活節第六主日を、「世界広報の日」と定めています。第二バチカン公会議の「広報メディアに関する教令」に基づき、「広報分野における各自の責務について教えられ、この種の使徒職活動のために祈り、援助のために募金するように(18)」と、1967年に始まりました。

新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、映画などにとどまらず、いまや時代はインターネットです。すべての人が、この使徒職に関わる道具を手にしています。SNSなどを通じてわたしたちは、誰でもいつでも、世界に向けて声を届ける手段を手に入れました。いまや、広報における使徒職は、特別な人や団体だけに限定された使徒職ではなく、すべてのキリスト者にとっての使徒職です。

今年の世界広報の日のメッセージのために教皇レオ十四世が選んだテーマは「人間の声と顔を守る」でありました。

教皇様は、就任直後から人工知能(AI)の問題について発言を続けておられます。レオ十四世は、ご自分が「レオ」という名前を選んだ理由を枢機卿たちに説明され、こう述べておられます。

「おもな理由は、教皇レオ十三世が、実際に歴史的な回勅『レールム・ノヴァルム』(Rerum novarum)によって最初の大きな産業革命の状況における社会問題に答えたからです。現代の教会は、もう一つの産業革命と、人工知能の発展に答えるために、その社会教説の遺産をすべての人に示します。人工知能は、人間の尊厳と正義と労働の擁護にとって新たな問題をもたらしているからです。」

教皇様は、「人工知能は、人間の尊厳と正義と労働の擁護にとって大きな問題をもたらしている」という認識を示し、人工知能(AI)が社会にもたらすであろう諸課題に取り組む必要性を重視していることも明確にされています。教会にとって、人工知能(AI)の問題は避けて通ることのできない社会倫理的な課題となっています。

教皇様はメッセージで、「わたしたちはあらためて人格について語るために顔と声を必要とします。コミュニケーションというたまものを人間のもっとも深遠な真理として守ることを必要とします。すべての技術革新もこの人間の真理へと方向づけられなければなりません」と呼びかけられます。

言葉に愛を込めるためには、言葉の裏に人間の心が必要です。言葉を人々を操る道具ではなく、神の愛といつくしみをあかしする道具とし、聖霊に照らされながら、主の愛を受けて、心をもって語るものでありたいと思います。