大司教

週刊大司教第二百十四回:聖ペトロ 聖パウロ使徒

2025年07月02日

今年は、聖ペトロと聖パウロの祝日が日曜日と重なったため、この偉大な二人の使徒の記念日としての主日となります。

ローマでは、この一年間に首都大司教(メトロポリタン)に任命された大司教が、教皇様からパリウムと呼ばれる肩掛けをいただく式が行われます。

わたしがパリウムをいただいたのは、教皇フランシスコから2018年のこの時期でした。前日土曜の晩には、前田枢機卿様が枢機卿会の中で叙任された日でもありました。このときは、パリウムは小箱に入ったものを教皇様から渡され、帰国後に自分のカテドラルで、教皇大使からそれをいただくという形式でした。下の写真は、2018年当時の教皇大使チェノットゥ大司教様から、パリウムを授けられているところです。

今回教皇レオ十四世は、以前の形式に戻して、ご自分で直接大司教たちに授けることにしたと聞いています。どちらにも象徴的な意味があると思いますが、今回のように直接の方が、確かにペトロの後継者である教皇と使徒の後継者である司教の絆を、直接的に感じることができるのではなかろうかと思います。

ところで、聖ペトロ聖パウロの祝日に近い主日には、ペトロ使徒座献金が行われます。名称はなにか教皇庁の建物でも支える献金みたいですが、実際には教皇様の使徒職、特に困難に直面する人たちを助ける愛の業を実現するための、教皇様への個人的献金です。Peter’s PenceとかObolo di San Pietroと呼ばれ、中央協議会のホームページには次のような説明が記されています。

「教皇は毎年、世界各地を訪問します。そして、人々の苦しみや悩みを聞き、優しい笑顔で力づけ、数々の援助を与えます。キリストの代理者、教会の最高牧者である教皇は、祈りと具体的な援助を通して全世界の人々にいつも寄り添っているのです。この教皇に心を合わせて、わたしたちも世界中の苦しんでいる人々のために祈りと献金をささげます」

是非教皇様の活動を支えるために、献金をお願いします。こちらは教皇庁広報省が用意した、今年の呼びかけのページとビデオのリンクです。

以下、6月28日午後6時配信、週刊大司教第214回、聖ペトロと聖パウロの主日のメッセージです。

聖ペトロ聖パウロ使徒の主日
週刊大司教第214回
2025年6月29日前晩

今年は6月29日の聖ペトロ聖パウロの祝日が日曜日と重なったため、主日としてこの二人の偉大な聖人の記念をいたします。

昨年2024年12月7日に、教皇フランシスコから枢機卿に叙任していただいた際に、教皇様から二つのしるしをいただきました。一つは枢機卿がそのいのちをかけて信仰を護るようにという務めを象徴する深紅の帽子、ビレッタであり、もう一つは右手の薬指にはめる指輪です。この指輪には二人の人物、すなわち使徒ペトロとパウロの二人の姿が刻み込まれています。

ペトロとパウロこそは、いまに至るまで続く主の教会を支える二つの柱であります。二人は人生で歩んだ道は異なるものの、イエスご自身から声をかけられて使徒となり、その生涯を福音の告知のために捧げ、殉教への道を歩まれました。ペトロは使徒の頭として選ばれ、神の民を牧するようにと命じられ、聖霊降臨を経て生み出された教会を育て導きました。パウロは元来は熱心なユダヤ教徒としてキリスト者の信仰を激しく迫害するものでしたが、イエスご自身から回心へと招かれ、世界に向けて福音を告げ知らせる宣教する教会の基礎を築き上げました。

そして二人は、信仰を命をかけてあかしし、その血を持って教会の礎となられました。わたしたちはその二人の信仰を受け継ぎ、守り、育み、同じように勇気を持って信仰をあかしするものとなるように招かれています。

マタイ福音は、イエスが弟子たちに、「人々は、人の子のことを何者だといっているか」と問いかけた話を記しています。弟子たちは口々に、どこからか聞いてきた話をイエスに伝えます。

「あの人はこう言っていた。こちらではこう言われている」。それはいうならば根拠の薄い、または根拠のない噂話に過ぎません。全く今の時代を生きているわたしたちそのもののようです。実際に自分が見聞きしたわけでもないのに、ネット上に流れている情報を鵜呑みにして、即座に結論に到達しようとするわたしたちの姿そのものです。

それに対してイエスは、「それであなたがたはわたしを何者だというのか」と問いかけます。根拠のない噂話ではなくて、自分の体験から得た自分自身の心の思いを語れと迫ります。

イエスとの実際の出会い、交わり、信仰に基づいて、「あなたはメシア、生ける神の子です」と応えたのは、ペトロでありました。わたしたちも自らの実体験から信仰を告白するものでありましょう。

ところでペトロの後継者である教皇様は、同時にローマの司教でもあります。5月25日、ローマの司教座であるラテラン大聖堂に着座されたレオ十四世は、こう述べておられます。

「ローマ教会は、ペトロ、パウロと数えきれない殉教者のあかしを基盤とした、偉大な歴史の相続人です。そしてそれは独自の使命をもっています。この大聖堂のファサードの銘文の『すべての教会の母』に示されるとおりです」

その上で教皇様は、ペトロとパウロのエルサレムにおける対話が教会を大きく発展させたことに触れ、対話の重要性を強調されながら、「この教会は、大胆な計画に限界なく取り組み、新たな骨の折れる見通しにも立ち向かうことによって、「大きく」考えることができることを何度も示してきたからです」と述べ、いま教会が歩んでいるシノドスの道を歩み続けることの重要性を説いています。

聖ペトロとパウロの祝日に当たり、あらためて教皇レオ十四世のために祈りましょう。