大司教
週刊大司教第百五十五回:年間第六主日
2024年02月12日
メッセージでも触れていますが、2月11日はルルドの聖母の日であり、世界病者の日でもあります。
教皇様はこの日にあたり、世界病者の日のメッセージを発表されています。こちらをご覧ください。
東京カテドラル聖マリア大聖堂では、2月11日の午後2時から、カリタス東京が主催して、世界病者の日のミサが捧げられます。今年の司式は、アンドレア補佐司教様です。
以下、10日午後6時配信の週刊大司教第155回目のメッセージ原稿です。
※印刷用はこちら
※ふりがなつきはこちら
年間第六主日
週刊大司教第155回
2024年2月11日前晩
世界病者の日
マルコ福音は、重い皮膚病を患っている人の、「御心ならば、私を清くすることがおできになります」という叫びに対して、イエスが「深く憐れんで」、奇跡的に病気を治癒した物語を記しています。
よく知られているように、このイエスの心持ち、すなわちここで使われる「深く憐れんで」という言葉の原語は、「はらわたが激しく動かされるさまをあらわす語」であります。つまり、病気であることだけではなくそれに伴って社会の中で周辺部に追いやられその存在すら否定されている人に対するイエスの深いあわれみといつくしみの心がこの言葉で明らかにされています。
主イエスによる病者のいやしは、もちろん奇跡的な病気の治癒という側面も重要ですし、その出来事が神の栄光を現していることは忘れてはなりません。しかし、同時に、さまざまな苦しみから救い出された人の立場になってみれば、それは人と人との繋がりから排除されてしまったいのちを、いやし、慰め、絆を回復し、生きる希望を生み出した業でもあります。孤独の中に取り残され孤立し、暗闇の中で不安におののくいのちに、歩むべき道を見いだす光を照らし、そのいのちの尊厳を回復する業であります。神が与えられた最高の賜物であるいのちの尊厳を明らかにしている、まさしく神の栄光を現し、神のいつくしみと愛を明確にする業であります。
今年の年間第六主日は、世界病者の日であります。1858年に、フランスのルルドで、聖母マリアがベルナデッタに現れた奇跡的出来事を記念する日です。聖母の指示でベルナデッタが洞窟の土を掘り、わき出した水は、その後、70を超える奇跡的な病気の治癒をもたらし、現在も豊かにわき出しています。わき出る水は、ルルドの地で、また世界各地で病気の治癒の奇跡を起こすことがありますが、それ以上に、病気によって希望を失った多くの人たちに、いのちを生きる希望と勇気を生み出す源となっています。
この日を世界病者の日と定められた教皇聖ヨハネ・パウロ2世は、病気で苦しんでいる人たちのために祈りをささげるように招くと共に、医療を通じて社会に貢献しようとする多くの医療関係者や病院スタッフ、介護の職員など、いのちを守るために尽くすかたがたの働きに感謝し、彼らのためにも祈る日とすることを呼びかけました。この二つの意向を忘れないようにいたしましょう。
今年の世界病者の日のメッセージにおいて教皇フランシスコは創世記に記された「人が独りでいるのはよくない」という言葉を取り上げ、「関係性をいやすことで、病者をいやす」をテーマとされました。
メッセージで教皇は、「孤立することによって、存在の意味を見失い、愛の喜びを奪われ、人生のあらゆる難局で、押しつぶされそうな孤独を味わうことになる」と指摘し、その上で、「病者のケアとは、何よりその人の関係性、つまり神とのかかわり、他者―家族、友人、医療従事者―とのかかわり、被造物とのかかわり、自分自身とのかかわり、そうしたすべての関係をケアすること」なのだと強調されます。病気に苦しむ人の叫びを耳にして深く憐れまれたイエスに倣い、わたしたちも、イエスのいつくしみ深いまなざしを自分のものとするように、務めたいと思います。