大司教
週刊大司教第百四十九回:聖家族の主日
2024年01月09日
2023年の最後の日は日曜日となり、教会はこの日、聖家族の主日を祝います。
一年の終わりにあたり、東京教区の皆さまに心から感謝申し上げます。皆さまのお祈りに支えられて、一年間、教区の司牧や運営にあたることができました。また今年は年末に、補佐司教が誕生しました。新しい年には、わたしとアンドレア司教様と一緒に、教区で働いてくださる司祭修道者、そして信徒のみなさんとともに、東京教区の宣教と司牧の一層の充実のために取り組んで参りたいと思います。この一年の皆さまのお祈りとご協力に感謝すると共に、新しい年、2024年にあっても、今年と同様に、霊的に歩みを共にしていただければと思います。
以下、30日午後6時配信の、週刊大司教第149回、聖家族の主日のメッセージ原稿です。
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聖家族の主日
週刊大司教第149回
2023年12月31日前晩
2023年の最後の日は、日曜日となりました。この一年を締めくくる最後の日は、聖家族の主日です。わたしたちと共にいてくださる神は、人となられ、家族のうちに誕生されました。
教皇フランシスコは使徒的勧告「愛のよろこび」において、「ナザレの、人間の家庭へのみことばの受肉は、その新しさによって世界の歴史を揺り動かします(65)」と記しています。教皇様は、第二バチカン公会議の教会憲章が「家庭の教会」という言葉を使って信仰者の家庭に聖なる意味と価値があることを再確認し、「家庭が健全であることは、世界と教会の将来にとって、決定的に重要なことです(31)」と記します。
同時に教皇様は、そうは言いながらも、「今日の家庭の現実に、それが置かれているあらゆる複雑さを含め、光の面も影の面も見ています(32)」と記し、様々な危機に直面して崩壊している家庭の課題にも触れています。その上で教皇様は、「家庭が、いのちが生まれ、育まれる、いのちの聖域であるならば、そこが、いのちを否定し、破壊する場になってしまうという事態は、恐るべき矛盾である(83)」と強調されます。
いのちが否定され破壊される環境とは何でしょう。しばしば耳にする家庭内の暴力や虐待によって、子どもたちのいのちが危機にさらされている状況もその一つです。同時に教皇様は、移民や難民となること、戦争や紛争に巻き込まれること、貧困や劣悪な環境に放置されることも、家庭においていのちが否定され危機にさらす環境であることを指摘されます。わたしたちの国においても、様々な要因が複雑に絡み合う中で、家庭の崩壊や、家庭におけるいのちの危機が現実の課題として存在しています。
わたしたちには、いのちをコントロールする権利は与えられていません。それは、唯一、いのちの創造主である神の手の中にのみある権利です。
この一年を振り返るとき、世界各地では紛争状態の中でいのちが暴力的に奪われる状況が数多く見られ、その中で特に、大切にされ豊かに育まれなくてはならない子どもたちのいのちが暴力的に奪われる事態も発生しています。とりわけこの降誕祭の期間、わたしたちは神の言葉が人となられた聖地において、いのちを奪う暴力が吹き荒れていることを憂慮せざるを得ません。
また貧富の格差が拡大する中で、さらには環境が破壊される中で、家庭の存続が危うくなり、守られるべき幼子たちのいのちが危機に直面する事態も広く見られます。
一年を締めくくるこの日、神が人となられ、ナザレの聖家族のもとに誕生されたことを思い起こしましょう。その家庭でイエスが30年間、豊かに育まれたことを思い起こしましょう。いのちを否定し、破壊するあらゆる状況に、勇気を持って立ち向かうことができるように、聖霊の導きを願いましょう。 新しい年が、豊かに祝福された一年となりますように。