大司教

週刊大司教第百十六回:四旬節第二主日

2023年03月06日

四旬節第二主日となりました。

毎年、四旬節には教皇様のメッセージが発表され、カリタスジャパンからの献金の呼びかけと一緒に、カレンダーなどとして送付されてきました。今年は、担当する総合人間開発省からのメッセージ発表がずれ込み、翻訳が間に合わずに、四旬節が始まってからの邦訳発表となりました。教皇様の今年の四旬節メッセージは、こちらから邦訳をご覧ください

四旬節第二週の金曜日は、教皇様の指示に従って、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」と定められています。これについては、後日別途触れたいと思います。なお司教協議会会長として発表したメッセージがあります。中央協議会のこちらのページからご覧ください。東京教区では、この金曜日、またはその直後の日曜日に、教皇様の意向にあわせてミサを捧げます。わたしも関口教会の主日ミサを司式します。

以下、4日午後6時配信の週刊大司教第116回、四旬節第二主日のメッセージ原稿です。
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四旬節第二主日
週刊大司教第116回
2023年3月5日前晩

創世記は、アブラムに対して、新しい土地へ出向いていくようにとよびかける主の言葉、すなわち、「生まれ故郷、父の家を離れて、私が示す地に行きなさい」と記しています。

「生まれ故郷、父の家」とは、住み慣れた安心のできる場、いわば安住の地です。しかし「私が示す地」とは、いったいどこなのか、詳しいことは全くアブラムには知らされていません。一体この先どうなるのだろうかと、大きな不安があったことだと思います。しかしアブラムは、「主の言葉に従って旅だった」と記されています。主の呼びかけに信頼して、未知の旅路へと歩みだした決断は、神への信仰に基づいていました。

パウロはテモテへの手紙で、神がわたしたちを呼ばれているのは、「わたしたちの行いによるのではなく、ご自身の計画と恵みによる」のだと記しています。歩み始める旅路の主役はわたしたちではなく、主ご自身であるのだから、主の計画と恵みに身をゆだねよという呼びかけです。

教皇フランシスコは、使徒的勧告「福音の喜び」において、「出向いていきましょう。すべての人にイエスのいのちを差し出すために出向いていきましょう」と呼びかけます。わたしたちもアブラムのように、またパウロが述べるように、主の計画と恵みに身を委ねて旅立たなくてはなりません。

それではわたしたちが身を委ねるべき神の計画はどこにあるのか。その神の計画は、福音書にあるように、御父が「私の愛する子、私の心に適うもの、これに聞け」と言われた御子イエスの言葉と行いによって、わたしたちに明示されています。弟子たちの前での御変容を通じて、神はイエスこそ神の子であり、その言葉と行いに神の栄光があることを明示されました。

教会は今、シノドスの道を歩んでいます。先週末には、アジアの大陸別シノドスも開催されたところです。連帯の内にともに歩み続ける神の民は、主の計画と恵みに身を委ねるために、闇雲に歩き続けるのではなく、聖霊の導きを常に識別しなくてはなりません。そのためにも、共同体での祈りが必要です。互いの声に耳を傾け、共に祈り、ともに支え合う姿勢が大切です。わたしたちは神の民、その牧場の群れであります。牧者の声を聞き逃すことのないように、互いに助け合いましょう。