大司教

週刊大司教第九十二回:年間第二十三主日

2022年09月05日

9月の最初の主日は、被造物を大切にする世界祈願日です。

9月1日から、アシジの聖フランシスコの祝日である10月4日までは、「被造物の季節」と定められており、カトリック教会だけでなくキリスト教諸教派と共に、わたしたちが「ともに暮らす家」のために祈り、またそれを守るための啓発と行動を呼びかけています。このエキュメニカルな活動に参加するよう教皇庁総合人間開発省が毎年呼びかけを行っていますが、日本の教会は、2019年の教皇訪日に触発されて、この期間を「すべてのいのちを守るための月間」と命名し、さまざまな取り組みを行ってきました。

今年も教皇様のメッセージが発表されています。こちらのリンクです。今年の「被造物の季節」のテーマは「被造物の声に耳を傾ける」で、詩編19編2節~5節から取られています。 

東京教区のホームページでも特設コーナーを開設しました。こちらのリンクです

またカリタスジャパンでも、特設コーナーを設けています。こちらのリンクです。特にカリタスジャパンのコーナーでは、この期間、毎日の黙想と行動の指針のための言葉が準備されていますから、是非とも毎日の異なる呼びかけに耳を傾けていただければと思います。

この期間のために準備されている「すべてのいのちを守るためのキリスト者の祈り」は、こちらのリンクからPDFでカード印刷ができるようになっていますが、全文を以下に引用します。

宇宙万物の造り主である神よ、
あなたはお造りになったすべてのものを
ご自分の優しさで包んでくださいます。

わたしたちが傷つけてしまった地球と、
この世界で見捨てられ、忘れ去られた人々の叫びに
気づくことができるよう、
一人ひとりの心を照らしてください。

無関心を遠ざけ、
貧しい人や弱い人を支え、
ともに暮らす家である地球を大切にできるよう、
わたしたちの役割を示してください。

すべてのいのちを守るため、
よりよい未来をひらくために、
聖霊の力と光でわたしたちをとらえ、
あなたの愛の道具として遣わしてください。

すべての被造物とともに
あなたを賛美することができますように。

わたしたちの主イエス・キリストによって。
アーメン。
(2020年5月8日 日本カトリック司教協議会認可)

以下、3日午後6時配信、週刊大司教第92回、年間第二十三主日のメッセージ原稿です。

年間第23主日
週刊大司教第92回
2022年9月4日前晩

ルカ福音は、イエスの弟子となる条件として、「自分の十字架を背負ってついてくる者」であれと記します。同時に、「父、母、妻、子供、兄弟、姉妹を、更に自分の命であろうとも、これを憎む」ことを不可欠であるとも記します。一体これは何を意味しているのでしょうか。

一つのヒントは、パウロのフィレモンへの手紙に記されています。この短い書簡で、パウロはコロサイの裕福な信徒であるフィレモンに、彼の元から逃げてきて、その後洗礼を受けた奴隷であったオネシモを、一人のキリスト者としての兄弟として送り返すことを記しています。当時の常識の枠組みの中で、自分の奴隷であった人物を兄弟として受け入れるフィレモンの行動は、他の人たちにとってこの世の常識をはるかに超える大きな意味を持つ愛のあかしの行動となったことでしょう。

パウロは第一コリントの1章17節で十字架の意味を、神ご自身によるすべてを賭した愛のあかしの目に見える行いそのものであると記します。この世の知恵に頼って愛をあかしするのではなく、全身全霊を賭して神の愛をあかししたイエス。それこそが十字架の持つ意味であることをパウロは強調します。

したがって、このルカ福音における十字架も、単に苦行をしろといっているのではありません。この世で生きていくために大切だと思っていること、すなわち人間の知恵が作り上げた常識に捕らわれるのではなく、そこから離れ、自らの全身全霊を賭して、神の愛をあかしするための行動にでるようにと、イエスは弟子に求めておられます。

その一つの道として、神がわたしたち人類に管理を任されているすべての被造物を守る行動が、過去の強欲な搾取に別れを告げて、神の愛に生きる具体的なあかしになるとして、教皇様は9月1日を被造物を大切にする世界祈願日と定められました。日本の教会では、9月の最初の主日に祝います。教皇フランシスコは、回勅「ラウダート・シ」を発表され、教会がエコロジーの課題に真摯に取り組むことの大切さを強調されました。

教皇様が強調されるエコロジーへの配慮とは、単に気候変動に対処しようとか温暖化を食い止めようとかいう単独の課題にとどまってはいません。「ラウダート・シ」の副題として示されているように、課題は「ともに暮らす家を大切に」することであり、究極的には、「この世界でわたしたちは何のために生きるのか、わたしたちはなぜここにいるのか、わたしたちの働きとあらゆる取り組みの目標はいかなるものか、わたしたちは地球から何を望まれているのか、といった問い」(160)に真摯に向き合い、社会全体の進む道を見つめ直す回心が求められています。

教会は、アシジのフランシスコの祝日である10月4日までを「被造物の季節」としており、日本の教会もこの期間に様々な啓発活動を行います。教皇様が定めた今年のテーマは、詩篇19編から取られた「被造物の声に耳を傾ける」とされ、メッセージが発表されています。

その中で教皇様は、「被造物が上げる苦い叫びは、母なる大地の叫びであり、生態系から消えゆく多くの生物の叫び、また、気候危機の影響を最も強く受けている貧しい人々の叫び、先祖からの土地を経済的利益のために搾取される先住民たちの叫び、そして地球のエコシステムの崩壊を食い止めるために可能な限りの努力を望む若者たちの叫びでもある」と記し、そのためには個人的な回心にとどまらず、共同体の回心が必要だと指摘されています。

神の愛をあかしするために、いまどのような十字架を背負って歩もうとしているでしょうか。