教区の歴史
宣教協力体のための指針
2003年02月24日
はじめに
東京教区では小教区再編成の最初の段階として、2003年復活祭(4月20日)から宣教協力体を発足させることになりました。宣教協力体の目的は、聖堂共同体(小教区)同士がこれまでより深い協力関係を築き、教会がより豊かに福音的使命を生きる態勢を作ることです。宣教協力体の課題は、司祭同士のチームワーク、司祭と信徒・修道者のチームワークを促進し、信徒が参加できる教会をつくっていくことです。これは教会の本来のあり方を目指すことですが、同時にこのことによって司祭不足という問題に対処することにもなります。
信徒の参加ということについては二つの面があります。
一つは「教会活動」の面です。信徒が自発的に聖書の分かち合いや祈りの会、ボランティア・グループなどを作ること、必要に応じて集会祭儀を司式したり、聖体奉仕をすること、さらに司祭とのチームワークの中で教会の宣教司牧活動にさまざまな形で参加していくことなどの課題です。これらは実際に多くの信徒が関わる部分です。
もう一つは「意思決定」の面です。教会の中での話し合いは、現代における福音の共通理解を一緒に求めていくということです。この時代、この地域の中で神が望んでおられることは何か、教会の宣教司牧活動はどうあるべきか、また、そのために教会施設や財政はどうあるべきか、というような問題について、教会としての意思決定に司祭とともに信徒が参加していくことが大切です。この面は多くの信徒にとっては馴染みにくいことかもしれませんが、やはり大きな課題です。
「教会活動」に関してはそれぞれの地域で推進していっていただくことですので、以下の指針では、宣教協力体の「意思決定」に関する面を中心に教区全体としての基準をまとめてあります。また、関連することがらとして、聖堂共同体と教区の宣教司牧評議会についての考え方も提示しました。
宣教協力体のあり方
1.運営の基本方針は弾力的・段階的ということであり、教区全体の均一化をはかるのではなく、むしろ各宣教協力体の自主性が尊重されます。
2.世話人司祭
宣教協力体を構成する聖堂共同体は相互に対等です。原則的に各聖堂共同体には主任司祭が置かれます。主任司祭は従来の権限と責任を保持します。
司祭の一人が世話人となります。宣教協力体の司祭団の推薦に基づき、教区長が任命します(2003年5月末までに推薦してください)。
世話人の役割は当分(変更があるまで)次のとおりです。
- 宣教協力体の代表者。
- 宣教協力体協議会の主宰(準備・連絡・記録などは他者に委ねることができる)
- 司祭間の連絡・調整役、司祭連絡会の主宰。教区長との連絡窓口。
3.司祭連絡会
宣教協力体の司祭は少なくとも月一回の連絡会を行い、宣教司牧の情報交換と司祭同士の協力について連絡・調整をします。
4.宣教協力体協議会
- 宣教協力体は少なくとも隔月、出来れば毎月、協議会を開催します。
- 各聖堂共同体の主任司祭(その代理)と信徒の代表は必ず出席しなければなりません。
信徒の代表は各聖堂共同体の司牧評議会のメンバーであることが適当です(ただし、特定の信徒に過大な負担がかからないような工夫も必要でしょう。また、人数については各宣教協力体・聖堂共同体の事情に合わせて決めてください)。
また、必要に応じて助任司祭・協力司祭・広域の外国人司牧を担当する司祭や、修道院・カトリック施設の代表も参加できるよう配慮すべきです。
- 協議事項は以下の通りです。
(1) 地域におけるニーズとそれへの応答
(2) 福音的使命に関する活動の相互連絡や聖堂共同体間の交流についての検討
(3) 共同で行う典礼、集会、行事などの検討
(4) 経費負担の取り決め
5.活動報告と振り返り
宣教協力体は教区長に対して年に一度その活動を報告します。
なお、宣教協力体の実践について、教区全体で3年後に振り返りと評価を行います。
★各宣教協力体は2003年7月末までに次の事項を協議し、その結果を教区長にお知らせください(各地域の事情や宣教協力体の自主性を尊重しますが、この時点で全体の調整の必要があれば再検討します)
(1) 宣教協力体の名称の案(地域性を表す名称を考えてください)
(2) 協議会のメンバー
(3) 開催日時と場所
(4) 会議運営の仕方
★次の段階について
(1) 段階的に交流と協力を進め、将来的には宣教協力体が「協議会」の性格から「一つの宣教する共同体」になることを目指します。
(2) 具体的には、特定の宣教協力体がひとりの責任司祭にゆだねられる態勢が整った時点で、その宣教協力体が教会法上の一つの小教区の役割を果たすように配慮します。
聖堂共同体のあり方について
宣教協力体はいくつかの聖堂共同体によって構成されています。聖堂共同体のあり方については近い将来、教区としての統一的な規約を作る必要があると考えられます。しかし、一方では、宣教協力体となった聖堂共同体同士が互いに知り合い、話し合い、協力しあっていく経験の中で、どのような点を統一すべきか、どのような規約が必要かが見えてくるとも考えられます。そこで、宣教協力体を発足させる現時点では、統一的な規約ではなく、聖堂共同体のあり方について特に配慮していただきたい点だけを以下に述べます。
聖堂共同体の司牧者と信徒のよりよい協力関係を築き、宣教する共同体に育成していくことは、わたしたち東京大司教区の重要な課題です。その際、次の教えを深く心に留めなければなりません。
第2ヴァチカン公会議『教会憲章』の教え(37項より)
「信徒は自分の必要と望みを、神の子らとキリストにおける兄弟にふさわしい自由と信頼をもって牧者に表明すべきである。信徒はその知識、才能、識見に応じて、教会の利害に関する事がらについて自分の意見を発表する権利、ときには義務をもっている。このような場合には、教会がそのために制定した機関を通して行うべきであって、常に真実と勇気と賢慮をもって、聖なる職務のためにキリストの代理をつとめる人々に対する尊敬と愛のうちに行わなければならない。」
「聖なる牧者は、教会における信徒の地位と責任を認め、またこれを向上させなければならない。信徒の賢明な助言をこころよく受け入れ、教会の奉仕のために信頼をもってかれらに任務を委ね、行動の自由と余地を彼らに残し、さらに、彼らが自発的に仕事に着手するよう激励しなければならない。また信徒から提案された創意、要求、希望を、キリストにおける慈父としての愛をもって慎重に考慮しなければならない。」
1. 呼称
宣教協力体が発足する2003年4月20日の時点で、東京教区の小教区・分教会は「聖堂共同体」という位置づけになります。しかし各聖堂共同体は教会法的には従来どおり「小教区・分教会」と言うことができますし、対外的には従来どおりの名称、例えば「関口教会」という名称を使用し続けることになります。
2. 責任者
聖堂共同体の責任者は従来どおり主任司祭です。主任司祭は各聖堂共同体の宣教司牧、建物の管理・教会会計について最終的な責任を負っています。しかし、主任司祭は一人でこれらのことを行うのではなく、他の司祭・修道者、そして特に多くの信徒との対話・協力の中でその責任を果たしていくことが必要であり、大切なことです。
3. 信徒の参加の場としての評議会
ほとんどの小教区には信徒が教会の運営に参加する場として、「教会委員会」「小教区運営委員会」「財務委員会」などと呼ばれる組織があります。東京教区では統一した名称がありませんので、以下では教会法の用語を用いて「司牧評議会」「経済問題評議会」と呼びます。(教会法は、教会の重要な課題を「経済問題」と「司牧」という2つの面に分けて考えています。ここでいう「司牧」は、福音を告げ、人々の世話をする教会の活動全体を指しますから、日本語ではむしろ「宣教司牧」と考えたほうが分かりやすいでしょう。)
4. 司牧評議会(新教会法典536条)
司牧評議会は単なる利害調整のための会議ではありません。教会の活動全体について、福音に沿った決定を目指して話し合う機関です。重要なことがらは、司祭抜きで決めることはできませんし、また、信徒を無視して司祭だけで決めることもできません。
5. 司牧評議会委員の選任
司牧評議会委員の選任には共同体のメンバーの意思がよく反映されるよう配慮します。主任司祭は公正な選任が行われるよう留意しなければなりません。
6. 経済問題評議会
聖堂共同体(小教区)の財産管理と会計を担当する「経済問題評議会」を設置しなければなりません(新教会法典537条)。経済問題評議会は教会の財務に関して司祭を助け、信徒の専門的な知識を生かし、また信徒の声を反映させるための機関です。種々の事情で困難であれば「司牧評議会」にその役割を兼ねさせることができます。
7. 信者総会(信徒総会)
多くの教会では、信徒の誰もが参加でき、信徒の声を聞く機会として信者総会(信徒総会)が行われています。そのような場は、聖堂共同体の重要事項を話し合い、共同体としての合意を確認する場として活かすことが適当です。
8. 役職選任にあたっての司牧者の留意点
一部の信徒に重い負担を負わせることのないよう、また同一人物が長い期間役職を占めることのないような配慮が必要です。また、女性と青年が教会の運営に今よりも容易に、よろこんで参加できるような措置も必要でしょう。
教区宣教司牧評議会について
教区の宣教司牧評議会は、東京大司教区の宣教司牧活動に関する諮問機関です。大司教の諮問に答え、あるいは大司教への提言を行い、場合によっては大司教より委託された事項の実施にあたります。
宣教司牧評議会の評議員は信徒を中心に司祭、修道者若干名を加えた構成になります。信徒の評議員の選び方については、宣教協力体単位でお願いすることを原則に検討しています。第一回は2003年秋を予定していますので、準備が整い次第ご案内いたします。
また、年2回行われている教会委員連合会を改組し、すべての宣教協力体・聖堂共同体の信徒代表が集まる場を設けることも検討しています。
以上のようにこの指針を確定し発表します。
東京大司教館にて 2003年2月24日