菊地大司教

    世界人身取引に反対する祈りと啓発の日(2月8日)

    2021年02月08日

    Bakhita

    女子修道会の国際総長会議(UISG)は、2月8日を「世界人身取引に反対する祈りと啓発の日」と定めて、人身取引に反対する啓発活動を祈りの日としています。教皇フランシスコも、2015年2月8日のお告げの祈りの時に、この活動に触れ、積極的に行動するように呼びかけました。

    この日、2月8日は聖ジョゼッピーナ・バキータの祝日です。彼女は1869年にアフリカはスーダンのダルフールで生まれました。

    聖人はカノッサ修道会の会員でした。同会のホームページにはこう記されています。(写真はカノッサ修道会ホームページより)

    「バキータは男3人、女3人の6人兄弟でした。お姉さんは1874年、奴隷商人たちにさらわれました。バキータは7歳のころ2人のアラビア人にさらわれました。1ヵ月間監禁され、その後、奴隷商人に売り飛ばされます。ありったけの力をしぼって脱走を試みましたが、羊飼いにつかまり、間もなく、冷酷な顔立ちのアラビア人に売り払われます。その後、奴隷商人に売り払われます」

    その後、様々な過酷な体験を経て、イタリアにおいて1869年に自由の身となり、洗礼を受けた後にカノッサ会の修道女になりました。1947年に亡くなった彼女は、2000年に列聖されています。同修道会のホームページに聖バキータの次の言葉が紹介されていました。

    「人々は私の過去の話を聞くと、「かわいそう!かわいそう!」と言います。でも、もっとかわいそうなのは神を知らない人です。私を誘拐し、ひどく苦しめた人に出会ったら、跪いて接吻するでしょう。あのことがなかったら、私は今、キリスト者でも修道女でもないからです」

    聖バキータの人生に象徴されているように、現代の世界において、人間的な尊厳を奪われ、自由意思を否定され、理不尽さのうちに囚われの身にあるすべての人のために、またそういった状況の中で生命の危険にさらされている人たちのために、教皇様は祈ること、その事実を知ること、そして行動するようにと、2015年の世界平和の日のメッセージで呼びかけられました。

    2015年のメッセージで、教皇様はこう述べておられます。

    「国際社会があらゆる形の奴隷制を終わらせるために数々の条約を採択し、その問題に対するさまざまな政策を行っているにもかかわらず、何百万もの人々、子どもやあらゆる年代の男女が、現在でも自由を奪われ、奴隷のような状態で生きるよう強いられています」

    その上で教皇様は、こう指摘します。

    「過去と同様、現在においても、奴隷状態の根本には、人を物のように扱うことが許されるという人間の考えがあります。罪が人の心を堕落させ、創造主や隣人から遠ざけるとき、隣人は、もはや同じ尊厳をもつ人、人間性を共有する兄弟姉妹としてではなく、物として考えられてしまいます。神の似姿として神にかたどって造られた人間が、抑圧、裏切り、または身体的・心理的な拘束によって、自由を奪われ、売られ、他の人の所有物にされます。彼らは目的のための手段として扱われているのです」

    人身売買・人身取引や奴隷などという言葉を聞くと、現代の日本社会とは関係の無い話のように感じてしまうのかもしれません。実際は,そうなのではありません。一般に「人身取引議定書」と呼ばれる「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人、特に女性および児童の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書」には,次のような定義が掲載されています。

    「“人身取引”とは、搾取の目的で、暴力その他の形態の強制力による脅迫若しくはその行使、誘拐、詐欺、欺もう、権力の濫用若しくはぜい弱な立場に乗ずること又は他の者を支配下に置く者の同意を得る目的で行われる金銭若しくは利益の授受の手段を用いて、人を獲得し、輸送し、引渡し、蔵匿し、又は収受することをいう。搾取には、少なくとも、他の者を売春させて搾取することその他の形態の性的搾取、強制的な労働若しくは役務の提供、奴隷化若しくはこれに類する行為、隷属又は臓器の摘出を含める。」
    (同議定書第3条(a))

    すなわち、売春を強制されたり、安価な労働力として,自己の意思に反して、人間の尊厳が守られないような状況下で労働に服させられている人たちの存在は、わたしたちの国でも無関係なことではありません。

    今年はタリタクムの主催で、国際的な祈りの行事がオンラインで企画されているとのこと。こちらの頁に案内が掲載されていますので、ご参照ください

    なお『タリタクム』とは、同活動のホームページに次のように記されています。

    「タリタクム(Talita Kum)は、修道会総長会議と連携し国際総長会議のプログラムのひとつで、人身取引の撲滅に取り組む奉献生活者の国際ネットワークです。日本では、日本女子修道会総長管区長会、日本カトリック管区長協議会との連携により、日本カトリック難民移住移動者委員会内に「人身取引に取り組む部会(略称「タリタクム日本」)が、2017年6月に発足しました」