お知らせ

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東京教区ニュース第131号

1996年04月01日

東京教区司祭叙階式
2年ぶりに新司祭誕生~伊藤師と浦野師~

東京教区の司祭叙階式が3月3日 (日) 午後2時からカテドラルで行われ、 伊藤幸史さん (関町教会出身、 29歳) と浦野雄二さん (本所教会出身、 36歳) の2人が新司祭に叙階された。

おだやかな快晴に恵まれた日曜日の午後、 2年ぶりの叙階式とあってか、 大勢の信徒がつめかけて見守るなか、 白柳誠一枢機卿の司式で、 厳かに式は始まった。

2人が選んだという福音朗読 「彼らはすべてを捨ててイエスに従った」 (ルカ5・1-11) に耳を傾けた後、 叙階の儀にうつり、 白柳枢機卿は訓話で、 次のように新司祭を励ました。

「いま私たちは、 科学技術の発達した時代にあって、 国、 社会、 家庭あらゆるところで深刻な悩みを抱えています。 そうしたなかで、 内面の危機や真の平和、 分裂を癒すのはキリストであり、 それを人々に伝えていく使命を負っています。 2人は、 福音書に選んだペトロのように、 これから後、 人間をとる漁師になります。 自分の無力さに恐れを感じているかもしれませんが、 神のいつくしみに信頼して、 歩んで下さい」

式の終わりに、 伊藤師が立川教会、 浦野師が町田教会と任地が発表され、 「行け、 地のはてまで」 が力強く聖堂にこだまするなか、 2人の新司祭は新たな第一歩を踏み出していった。

十字架のヨハネ 伊藤幸史さん

叙階式で参列者に渡すカードに記した言葉は 「風は思いのままに吹く」 (ヨハネ3・8) たしかにきっかけは 「風」 だった。 浪人時代にふと読んだ遠藤周作の小説がきっかけで、 20歳のときに井上洋治神父が主宰する 「風の家」 で洗礼を受けたのだから。

「小説に登場する井上神父の考えに何かピンとくるものを感じたんです」 でも、 自分の求めているものはすぐには見えなかった。 「フランスに行ってみようと思ったんです。 井上神父が昔いた修道院を訪問すれば、 何か見えるかなと思って…」 旅費を稼ぐために 「出席日数が足りなくて、 退学処分一歩手前まで行った」 というアルバイトの末、 ナホトカからシベリア鉄道でフランスをめざす1か月半の旅に出た。

フランスの田舎で、 自分はどう生きるかをじっくり考えた。 「でも帰ってからも、 すぐに神父になろうと思ったわけじゃないんです。 ところがフランスに行くという目標を失って、 今度こそ自分はどう生きるんだと…。 そう、 だから激的に変わったわけじゃないけど、 自分の人生が召命の方向に少しずつ傾いているという思いが、 心の底にあったんじゃないかな」 と、 その頃の心境を振り返る。

自分の人生、 そんなつもりじゃなかったのにここまで来た、 そこには多くの人との出会いがあったとの思いがある。 「いろんな人と出会っていくなかで、 きっとその背後に何かがあると思う。 その何かの働きをこれからも求めていきたいし、 自分がつかんだものを人に伝えていきたい」 と抱負を語る。

愛知県尾張旭市に生まれて、 今年29歳。 だから若い人の気持ちがよく理解できる。 オウムの人たちにも共感できるところがある。 「自分だって、 フランスに行ったけど、 いま考えると何でそんな途方もないことしたのかと。 だから、 人生の目的や目標を探そうとするエネルギーは、 すごくよくわかる。 その方向がちょっと違ったんじゃないかな」

肌が白くて文学青年のイメージだが、 スポーツは万能。 小学生からという週1~2回のジョギングは、 いまも欠かさない。

ヨハネ・マリア・ビアンネ 浦野雄二さん

東京はすみだの生まれの36歳。「レールの家に乗っかってきたわけじゃないから、会社勤めとか寄り道もあったけど、みなさんに支えられてここまで来ました」と、今までの歩みを振り返っていう。

小さい頃、お母さんに連れられて、本所教会に通った。「夏休みなんか、ラジオ体操しなくていいからミサに行っといでって感じかな。毎日を神様に正直に生きてきましたね」とお母さんを語る。

中学・高校はミッションスクール。「多分母の願いだったんでしょうね。でも、ある程度大きくなると、あまり干渉しなくなったし、自分の行き方は自分で決めよう」と、青春時代は心中期するものがあったらしい。

だから一直線、というわけでもなかった。「結構チャランポランな性格なんですよ。だから、何も考えないで、突っ走っちゃう」法学部に進んだけど、別に理由もなかった。就職も同じで、勤務先の清掃会社は、アルバイトのまま居座っちゃったというのが真相。またその先がある。「おれ、このままでいいのかな」と何の当ても無く会社をやめてしまったのだから。

でも、こうしてまた下山神父のところに通うようになって、次第に自分尾生きる方向が見えてくるようになった。「神父になるのもひとつの道かなって。それで両親に相談したんです。そしたら、あなたが選ぶ道だからどうぞ、って」

こうして叙階式を迎えたのだが「期待と不安が入り混じった心境」と語る。お母様はと聞くと、「言葉には出さないけれど、司祭職になる厳しさを感じているみたいです」。人々は精神的なものを求めているがどうしていいか分からない、そんな今という時代に司祭として働かなくてはならないからだ。

「確かに自分のも答えがあるわけじゃない。だからこそ、共同体というものを大切にしてきたい。共同体やそこにいる人びとが、彼らにどう訴えていくものだということが、とても大切だと思うから」と、豊富を淡々と語る。

趣味はスポーツ全般、とりわけスキーとバトミントンの腕前は並みじゃないらしい。

 

吉池好高師にインタビゥー
新潟でも4年間

○新潟で4年間、 働いてこられた感想からお聞かせください。

●とても幸せな4年間でした。

○といいますと…。

●そうですね、 性に合っていたと言うか、 東京の生活とはちがって、 ゆったりとした感じがとてもよかったですね。

○そうですか、 それはうらやましいですね。

●お世話になった青山教会は、 新潟市の郊外にあるんですが、 海まで歩いても5分ぐらいなんです。

毎朝ごミサの前とか、 夕方日が沈む頃、 散歩したり、 自転車でサイクリングをしたりすると最高でしたね。

夏なんか、 窓を開けっぱなしてお昼寝すると、 海からの風が気持ち良くて、 居ながらにして避暑っていう感じですよ。

○でも冬は大変だったでしょう。

●季節の変化がはっきりしていて、 それだけでも生きているって感じがしますよ。

○スキーもよくなさったそうですね。

●ええ。 だから冬が待ち遠しかったです。

○教会の様子はどうでしたか。 東京と比べてみて。

●はっはっは。 それをお話しなくてはいけませんよね。

でも教会はどこでもそんなに違いはないんじゃあないでしょうかね。

ただ、 人数が少ないせいもあって、 とてもよくまとまっている感じです。

○わかるような気がします。

●教会全体は信徒会といって、 「神父」 は 「主任神父様」 なんですね。

それで、 教会の年間の予定などは、 信徒会の役員さんが前例に沿って決めて、 みんなで実行するんです。

そのほかのことも大体こんなふうですね。

○司祭はあまりタッチしないんですか。

●教会によって違うかも知れませんが、 その点では信徒の教会が東京よりも進んでいるんじゃあないでしょうか。

司祭不在の時の信徒司式のみ言葉の祭儀が定着している教会も多いですね。

○司祭がいなくても大丈夫?

●ただ神父をとても大事にしてくれますね。

どんな神父でもあまり文句を言わない。

○司祭の天国ですね。

●そうでした。

○どうもありがとうございました。

ボランティアの輪をもっと広げて
―福祉事業施設長会議開かれる―

去る2月27日、 教区福祉委員会の呼びかけで、 東京教区内の福祉関係の 『施設長会議』 が、 関口会館を会場に開かれた。 近年、 福祉への関心が高まっており、 カトリック福祉施設と教区民とのより密接な協力が求められていることから、 今後の協力関係を促進しようと開かれた。 当日は、 白柳枢機卿も出席し、 福祉の現場で頑張っていることに謝意を表すとともに、 変革の時代に新たな使命をもっていると、 福祉事業関係者を励ました。

第1部では、 東京教区福祉委員会の今日までの歩みと教区が30年近く前から始めている 『東京カリタスの家』 の働きについて塚本・三好両師が説明した。 その上で第2部では、 各施設長が教区福祉委員会・司牧に携わっている司祭・教区民に期待し、 協力してほしいことについて意見が求められた。 これらについてのアンケートも行われた。 主な意見・希望は次の通り。

☆ ☆

A、 教区福祉委員会に期待していること

・ボランティアの派遣のためコーディネーター役を務めてほしい。
・技術面では一般の研修会が行っているので、 カトリックならではの福祉の現場で役立つ精神的糧となる講話を、 施設職員のために、 研修会を開いて聞かせてほしい。
・施設長会議を今後も開き、 教区との協力・連携体制を整えてほしい。

B、 司牧に携わっている司祭方にお願いしたこと

・福祉も福音宣教の一翼を担うものだということを、 信徒の皆さんに説いてほしい
・ボランティアの養成に積極的であってほしい。
・各カトリック施設を気軽に訪ねて頂き、 職員、 入所者に、 心に響く話や笑顔で司祭的励ましをしてほしい。
・信徒の福祉活動に、 もっと理解を示し、 精神的励ましを送り続けてほしい。

C、 信徒の方々へのお願い

・よくボランティアに参加して頂いているが、 もっとその輪を広げてほしい。
・福祉活動への誤解や偏見を是正するために、 理解と協力を期待している。
・今後ますます、 福祉ボランティアは質、 数とともに必要性が増すと思われる。 すべての信徒の方々が、 直接・間接であれ、 福祉ボランティアに参加してほしい。

27名という小規模の集まりで、 輪になってざっくばらんに話し合え、 非常に有益だったとの参加者からの声も聞かれた。

少なくとも毎年2月下旬、 施設長会議を開くこと。

現場の職員を労う集いを6月末か7月始め頃、 開くこと。

現場の職員の有志研修会を福祉委員会の呼びかけで開き、 カトリック福祉施設職員の意識向上を目指すこと。

など司会者の提案に賛成し、 満足感をもって解散した。

(塚本伊和男神父)

銚子教会献堂式

2月12日午前11時から銚子教会(オサリバン主任司祭)の新聖堂、司祭間の献堂式が行われた。

白柳誠一枢機卿のミサ、祝賀式典には、千葉ブロックの司祭、信徒約200名が参加した。

聖堂は面積142㎡、落ち着いたホワイト系の外装、内部は天井は高く、照明、音響効果を考えた設計施工となっている。

救聖堂は、昭和27年に建設された建物で、司祭館と共に老巧化したため、教会信徒会が一丸となって、聖堂、司祭館の建て直しに取り組み、44年目に賛成にこぎつけた。

白柳枢機卿は、「献堂式を行うにあたり、こん水を祝福してください。洗礼の恵みを表す為に、また私たちが聖堂の住まいであることを示すために、この水は人びとと教会の壁に降り注がれます。

この教会に集まる人々が、いつも信仰の神秘を讃えることが出来ますように」と祝福した。

金祝・銀祝おめでとうございます

金祝

ジャコモ・ブリウリ師 (イエスズ会 ロヨラハウス)
ジョン・マッケクニー師 (イエスズ会 ロヨラハウス)
モリウス・ベイリー師 (イエスズ S J ハウス))
ミカエル・モスクワ師 (サレジオ修道会 星美学園中・高等学校))
ニコデモ・ピサルスキー師 (サレジオ修道会 目黒サレジオ修道院)
マリセル・ル・ドールズ師 (パリ外国宣教会 真正会館)
ヨゼフ・フィナティー師 (コロンバン会 東金教会)

銀祝

古川正弘師 (北町教会主任)
関根英雄師 (町田教会主任)
小林 薫師 (札幌教区 カトリック中央協議会事務局)
ルードリック・ボーステン師 (イエスズ S Jハウス)
ヘイメ・フェルナンデス・ロペス師 (イエスズ S Jハウス)
イェルク・マウツ師 (イエスズ S Jハウス)
クラウス・レーゼンフーバー師 (イエスズ S Jハウス)
宗 正孝師 (イエスズ S Jハウス)
ジョバンニ・ブッチ師 (フランシスコ会 三軒茶屋修道院)
木寅義信師 (マリア会 暁星修道院)
平手勝彦師 (マリア会 暁星修道院)
清水和幸師 (マリア会 暁星修道院)
ジャン・レイモンド・ギラール師 (レデンプトール会本部))
デビット・ハドルノス師 (聖コロンバン会五井教会)
夫津木昇師 (聖パウロ修道院会本部・若葉修道院)

CTIC通信(東京国際センター)
CTICのある町

CTICは東京の下町、 江東区の亀戸に事務所を置いている。

亀戸は江東区の中で最も賑やかな町の一つである。 駅前には13間通り (明治通り) が総武線と交差する形で走っている。

パチンコ屋、 飲食店、 銀行と無秩序に並んだ商店街が一種独特な町を構成しているようだ。 物価は安い。 おつに澄ました店など一軒もない。

CTICは、 駅から商店街を通りぬけた7分くらいの所にある。 隣はビデオ屋である。 あまりはやっていないビデオ屋のギラギラ看板の陰に隠れてCTICの看板は、 はかなげで影が薄い。

事務所は約10坪。 いわゆるうなぎの寝床である。 専従スタッフ4人。 半専従( 週3日) 3人。 その他ボランティア8人くらい。 肩を寄せあって生きている感じだ。 そのせいか何となく暖かな雰囲気をかもし出している。

相談は日によって異なるが、 まあまあ繁盛している。 昨年1995年度は、 250件の相談が寄せられている。 1日1件強である。

1日1件と言っても、 問題はなかなか解決しないから、 かなりハードに動き回らなければならない。

今日は2月後半のある木曜日である。 今日1日の出来事をスケッチすることにした。

☆ ☆

10時半…潮見寮のSさんから就職の件で問い合わせがあった。

日本人である。 Sさんは61歳。 先日 「これから先のことを考えると眠れなくなるんですよ。 山谷には帰りたくないんですよ」。 職安にも仕事がなく、 何とか就職したいということだった。

CTICでは就職のお世話はしていないが、 色々な問題に関わっているうちに 「ビザがある人を紹介して欲しい」 と申し出る会社もある。 さっそくその会社に連絡する。

11時…ボリビア人の母子来所。

母親のDさんは日系3世。 昨年、 出勤途上自動車事故にあい怪我をした。

当初自動車の保険を適用していたが、 打ち切られることになりCTICに相談にきた。

会社と彼女の間のこじれをなめらかにし、 労災を申請し適用された。

12時…日本人男性が来所。 彼はガス工事の仕事をしているが、 雇っていたフィリピン人青年が警察の検問にかかり捕まったという。

小菅の拘置所からイラン人が集団脱走したあおりのようだ。 彼はフィリピン人の青年を自分の子供のように思い、 養子縁組をしたいとの希望をもっている。

相談を受けている秋保神父とその他のスタッフを残して昼食に出かけることにした。 昨日はトンカツ屋だったので、 今日は中華にしよう。 ここら辺の昼食はてんこ盛りで安い。 年を考えず、 つい食べてしまう。 最近腹の出具合が気になるのだが。

午後2時以降は訪問者はいないが電話はひっきりなしだ。 コロンビア大使館から 「トランク詰め殺人事件の被害者の女性の葬儀ミサをして欲しい」 との依頼や、 偽造ビザがばれて入管に出頭するように言われているがどうしたらよいか、 亭主に殴打され離婚届けを勝手に出されたフィリピン人女性から 「夫が子供を渡してもいいから、 地裁の提訴はやめろ」 と言われたという電話があった。

1人ひとりの問題には悲しみやドラマがつまっている。

スタッフのHさんは、 早朝から入管に出かけてまだ帰ってこない。 AさんとMさんは、 離婚したフィリピン人女性の家庭を訪問中。 子供が5人。 1番下は昨年末に生まれたばかり。 全てにおいてだらしない夫からの送金が、 1月は入らなかった。 一昨日の段階で、 彼女の財布には4000円しかなかった。

スタッフのWさんは、 夕方6時から金を持ち逃げした小岩のフィリピンパブの経営者を探しに千葉県佐倉まで出かけるという。 10数人の未払だ。 やくざも探しているという。

こんな文章を書いているうちに夕方になってしまった。 所員が東奔西走し、 一生懸命応対しているというのに、 僕は一体何をしているのだろうと自問自答する。

でも、 ま、 いっか。 これから 「まっ、 いっか」 をやめようという青年の集まりに出かけるというのにである…。

(大原 猛神父)

フランス教会レポート(3)
パリ郊外ニュータウン「エプリー」の教会をたずねて
宮下良平神父

パリから列車で30分ほどのところに 「エブリー」 はあります。 もともとあったパリ郊外の町を、 日本の住宅公団のような公社が25年前から開発して、 現在15万人ほどの大規模なニュータウンの団地ができています。

そこには、 40年前から小さなチャペルがあったそうですが、 95年の6月に新しく聖堂 (聖ヨゼフ教会) が建設されました。

その教会を訪れ、 そこに住むシスター方と信徒の人々と交流することができました。

朝食をいただきながらの交流を通して、 「ある大きな問題に気づきつつも、 それを避けて通っていった教会共同体が、 聖堂建設という目的を与えられたことにより、 自分たちがかかえている問題の本質と課題が何であり、 その解決のためにカトリックの教会として、 何をしなくてはならないかを、 多くの信徒が時間をかけて話し合い、 気づかされていった過程」 を知ることができたのでした。

大きな問題

少数となりつつある 『原住民 (白色のもともとそこに住んでいたフランス人)』 と大多数になりつつある 『移民 (白色のフランス人移住者、 外国から移民してきてフランス国籍をもつ有色のフランス人、 フランス国籍を持たない外国からの移民)』 との確執と、 それぞれお互いが交流を避ける (拒絶に近いかもしれない) という大きな問題をかかえながら、 日曜日のミサに大勢の信者が小さなチャペルに集まって来ていました。

この教会には、 フランス国内からの移住者以外に、 38か国からの移民の信徒が集まっているといいます。 移民がまとまっているわけでもないし、 交わりがあるわけでもないのです。

『移民』 同志の交わりもない見知らぬものが、 ただ日曜日のミサに集まる、 それで当たり前、 ご聖体をいただいたらそれで十分というなら、 話はもうおしまいですが、 多分、 いろいろな人と言葉も交わさず、 あいさつもろくにせず、 何となく寂しさとむなしさを感じながら帰宅する信徒も結構いたようです。

団地特有の孤独感と疎外感

特にアフリカからの移民たちの多くは、 「アフリカでは大家族で暮らし、 教会が交わりのとても大切な時と場であったのに、 フランスでは小家族か一人暮らしを強いられ、 教会も決して交わりの時と場にはなっていない」 と感じているとのことでした。

日常の生活でも、 隣近所との交わりも少なく、 団地特有の孤独感と疎外感を感じていて、 せめて教会だけには受け入れられて、 親しく皆と交わりたいと願って来ても、 その願いとは裏腹に、 また孤独感と疎外感をあじわうことになってしまっていたといいます。

教会のミサでの表面上のあいさつとつきあいはなされているのですが、 『移民』 は 「この教会は冷たい」、 「この教会は受け入れてくれない」 といい、 『原住民』 は、 「今までこうやってきたのだから」、 「私たちはこんなに皆を受け入れようとしているのに、 あなたたちが入ろうとしない」 と無意識のうちに強制していると、 『移民』 は受け取ることも多いといいます。

したがって、 『移民』 にとってはあくまで 「お客さん」 として表面上受け入れられているようにしか受け止められていないし、 『移民』 の人にとって、 『原住民』 の人たちがなにげなく当たり前に、 和気あいあいと教会活動をしていることが仲間に加えられない耐え難い孤独感と差別感を感じることがあるといいます。

『交わり』 を表した聖堂

このようなことを教会共同体の課題として、 新しく聖堂を建設することになり、 各国から来ている人々も建設委員となり、 毎週集まってどのような建物にするかを1年かけて話し合いました。 全く違った国の風習と環境基盤を持つ人々が、 1つの建物を建てるというのですから、 大変困難な話し合いだったようです。

出来上がった聖堂の中心となる考えは、 「世界の国からこの聖堂に集い神を賛美する」 ということです。 すなわち、 『交わり』 を表現するということです。

祭壇の背後の壁斜め上には復活したイエス・キリスト、 聖櫃ひつは地球儀をかたどっています。 祭壇と洗礼盤と聖櫃が結びついているように見える工夫がされています。 祭壇を囲むように内陣は半円形になり、 会衆席も祭壇を囲む形となっています。 天井の梁はりも祭壇上に集中するように設計され、 聖堂全体が祭壇に集う 『交わり』 を表現しているのです。

仕える心を育て生かす

それと大切な考えに、 『奉仕』 があげられます。 この教会を訪問したのは日曜日でしたが、 ミサ前には、 フランスのどの教会にもある 「典礼チーム」 の人々がミサの準備をしていました。 典礼チームはいくつかのチームに分かれていて、 月に1回程度担当し、 決して固有の人々が取りしきることはないそうです。 できるだけ多くの人が奉仕するように工夫されています。 エブリーに限らず、 フランスのどの小教区でも多くの人々が典礼や教会活動に積極的に関わるための呼びかけと工夫をしているのです。 仕える心を育てて生かす姿勢が、 いたるところの教会で実践されているのです。 (多摩カトリックニュース266から一部を転載)

信仰のあり方
「家族のための祈り」をテーマに一泊黙想会

2月3日から4日にかけて東京教区プロジェクト・チームの主催で 「家族のための祈り」 をテーマに、 一泊黙想会が行われた。

指導は森一弘司教。 参加者はおよそ30人 (うち男性7人、 カップル4組)。 場所は、 千葉の厚生年金休暇センター。

好んでこの場所を選んだのではない。 他に適当な所がなかったからだ。

ふだんでも賑やかな場所なのに土、 日とあってはそれを上回ることが予想された。

もちろん聖堂はない。 どうやって黙想にふさわしい沈黙と祈りの雰囲気を出すことができるのだろう、 というのが頭痛のたねだった。

当日、 講話室の片隅に聖書を広げローソクを灯し、 音楽を流して雰囲気作りをする。 導入では 「外は賑やかですができるだけ、 心のしずけさを保ってください」 などと、 注文をつけたりもする。

「家で死にたい」 と訴える末期癌の母親を家に連れ帰り、 手厚く看護する、 悲しいけれど、 家族の暖かい愛を描いた本の一節を朗読したあと、 「家族は 『あなたはかけがえのない存在』 として、 互いにかかわっている」 と家族の基本的関わりについて話す司教のことばで黙想ははじまる。

つづいて東京教区の信徒が作った祈り文を全員で輪読したり、 個人で黙想したりして、 自分の人生と重ねあわせながら、 心に一番ピンときたところを皆で分かち合う。

だれでも大きな十字架を背負っている。 だけど、 更に大きな十字架、 イエスのそれに支えられて生きているということに分かち合いを通して、 気づかされる。

祈りの雰囲気の中での分かち合いによって、 勇気づけられ、 励まされ、 富まされていくのを、 だれもが感じるひと時だった。

外はスポーツや野外遊戯に興じる人で賑わっている。 食事は他のグループの人々と一緒のレストランなのでその人たちとも自然に挨拶を交わす。

でも、 それらのことは、 少しも黙想の邪魔にはならなかった。 絶対沈黙の必要もなかった。
日常生活の場で、 そのリズムのなかで、 話し、 祈り、 分かち合うことによって、 信仰を確認し合うことができた。

信仰は本来、 生活と切り離して考えることはできないはずなのに、 とかく両者は遊離しがちである。 この黙想会を通して、 正しいありようを取り戻したようにも思える。 スタッフにとっても新しい体験だった。

(Sr.石野 澪子)

教会・修道院巡り(47)
『聖パウロ女子修道会』

第2次世界大戦後、 日本は米軍を主とする占領軍によって民主化が行われ、 戦時体制は終った。 宗教界は厳しい弾圧と統制から開放され、 新しい日本国憲法には信仰の自由、 言論の自由が規定されて、 日本におけるキリスト教は新しい飛躍の時を迎えた。

1934年に来日していた男子聖パウロ会と同じ創立者で 「人間の進歩と時代の必要が生み出す社会的コミュニケーション手段で、 キリストの福音を宣教する」 という修道会の創立の目的・使命も同じくする聖パウロ女子修道会の4人のシスターが、 1948年8月6日、 福音宣教への熱意に燃えてイタリアから到着した。

杉並区阿佐ヶ谷の小さな日本家屋から、 コミュニケーションメディアによる宣教の一歩が始まった。 1950年、 乃木坂に現在の修道院が建築されるまでそこでの宣教活動は続いた。

1953年ごろから月刊雑誌を発行する企画が進められていた。 この雑誌は聖母マリアに捧げられて、 世の光であるキリストに人びとを導くという目的を果たすよう 『あけぼの』 という誌名がつけられた。 1956年1月1日、 8ページの雑誌は15円で創刊された。

1955年には単行本の編集部が発足した。 聖パウロ女子修道会の会員が翻訳したものや、 執筆したものが修道院内の製本所で製本され普及された。

1979年、 16ミリ映画 『インドの星・マザーテレサとその世界』 が制作され、 視聴覚部が本格的に出発した。 印刷メディアでは表現しきれなかった方法で、 福音のメッセージを伝える道が開けていった。

その後もハガキ、 カード、 しおりなど1枚の紙に福音のメッセージを印刷するミニ・メディア部や、 教理のテキストを発行する教理研究部 (1989年閉鎖)、 東京教区から編集と普及を依頼された 『教えの手帳』 (1994年3月休刊) などの宣教活動が加わっている。

新しい世紀を迎えようとしている今日、 社会や人びとのニーズの変化の中で、 福音のメッセージがより迅速に、 的確に伝わるためにはどのようにコミュニケーション・メディアを使用すればよいか、 どのようなコミュニケーションの形態をとればよいかを研究・リサーチするため、 1994年乃木坂の本部に 「社会的コミュニケーションセンター (SCC)」 が設立され、 若いシスターたちが励んでいる。

〒107 港区赤坂8丁目12の42
TEL03-3479-3941

宗教法人法改正についてQ&A

宗教法人法が改正されるという新聞を読み、 ある信徒の方が編集部に質問に来られました。 読者の皆さまの中にも、 同様の疑問を抱えていらっしゃる方があるのではないかと思い、 ご紹介いたします。

☆ ☆

所轄庁の変更について

Q 所轄する官庁が変わるという話を聞いたのですが。

A 都道府県が所轄する宗教法人がありますが、 非包括宗教法人が他県に境内建物ケイダイタテモノをもっている場合、 その宗教法人は文部大臣の所轄となります。

Q どうして、 所轄官庁を変える必要があるのでしょう。

A 1つの都や県だけでは、 他県での活動が把握できないので、 正確にその宗教団体の活動がわからないということが、 その背景にはあると思います。

近年、 交通や通信手段が発達し、 全国的に活動する宗教法人が増えてきたという事実が一方ではあります。

境内建物について

Q 境内建物とは何ですか。

A 宗教法人にとって欠くことのできない聖堂などの建物のことを指しています。 しかし、 宗教法人によって、 その建物は色々ありえますが、 境内建物かどうかを判断するのは、 最終的には法人です。

常備書類について

Q 宗教法人の事務所に備えつけなければならない書類が決められたとか。

A そうです。 これまで任意であった収支決算書や財産目録に記載されていない境内建物などについての 「境内建物に関する書類」 を備えつけなければならなくなりました。

これだけではなく、 従来から命じられている書類、 たとえば、 宗教法人の規則、 認証書、 役員名簿、 財産目録、 責任役員会の議事録なども同時に備えつけておかなければならないのです。

閲覧について

Q 新聞によると、 信者に閲覧できる書類があるということでしたが。

A 改正された法律には 「信者その他の利害関係人」 が 「帳簿を閲覧することについて正当な利益があり、 かつ、 その閲覧請求の目的が不当によるものでない」 と書かれています。

ここに書かれている信者とは、 利害関係をもっている信者のことで、 一般的に信者すべてを指しているのではありません。 また、 請求に応じるか否かの判断は、 各法人がいたします。

宗教法人審議会について

Q 今回の宗教法人法改正には、 「宗教法人審議会」 のある委員の方々は反対のよう
でしたが。

A そうでしたね。 委員の多くは、 自分たちは反対し続けていたが、 委員会は全員賛成であるかのように報告されたということです。

今後、 宗教法人のあり方に関しては、 宗教法人としての認証の取消などについても審議し、 文部大臣に答申する、 私達にとって重要な機関なので、 私たちもよく注目していく必要があると思います。

改正時について

Q 法律は施行までに時間の余裕があると聞いていますが、 どうなのでしょうか。

A 発布されてから1年以内の政令で定める日に施行ということになっていますから、 まだいつからかはっきりしていません。

しかし、 昨年の12月15日から所轄が変わる宗教法人は、 6月14日までに変更の手続きをしなければなりませんので、 多分、 6月15日から12月14日までのいつかと考えられますね。

信教の自由について

Q 宗教法人法が改正されて、 信教の自由が脅かされる恐れを感じるのですが、
この点はいかがでしょうか。

A 今回の法改正では、 法律の解釈の仕方により、 また、 その施行方法によっては、 信教の自由が危険にさらされることになりかねませんので、 十分注目しておく必要があります。

教区委員会紹介 その1
「インナーナショナルデー委員会」

1991年9月22日に、カテドラルにおいて、東京教区100周年行事の1つとしてインターナショナルデーを開催した。

参加者の評判もよく、1992年度以降も教区行事として同様の集いを定期的に行うことが決定された。

こうして 『真の国際化』 を目指す東京教区の一委員会として正式発足したインターナショナルデー委員会は、 多くの外国人がいるということを恵みとして受け止め、 彼らとともに、 この東京教区最大級の行事を愛と喜びを分かち合えるような集いにすべく努力をしている。

この行事の目的は、 国籍やことばの壁を越えて、 交流と親睦を深めることにある。 また、 教会内外の団体との連帯の良い機会でもある。

20数名の委員は、 単なるお祭りに終わらないのはもちろん、 外国人が置かれている状況や様々な問題を提起するのみにも止まらず、 喜びを持って明日に向かう一歩を踏み出す希望と勇気を得ることのできる集いにしたいと考えている。 毎回困難なことや反省点も多いが、 マンネリ化を防ぐためにも絶えずチャレンジ精神を持つよう励まし合っている。

参加者は2000~2800人、 日本人は3割弱である。 これまでのテーマと、 行ってきた主な企画は以下の通りである。

●第1回 All Nations, One in Christ: Thanking our friends from throughout the world.

●第2回 All Nations, One in Christ: My Hand in Your Hand.

第3回 …to be understood, as to understand…(理解されるよりも理解することを)

第4回 FAMILY

第5回 Live Together

(第2回以降、 All Nations, One in Christを毎年共通のテーマとした)

・インターナショナルミサ (10カ国語余の聖歌と共同祈願)
・テーマと福音に基づくパントマイム (劇)
・分かち合い
・ワールドフェスティバル (30前後の団体によるバザー、 無料国際電話コーナーなど)
・ステージアトラクション (10余のグループ)
・展示 (子どもの絵・NGO・姉妹教会ミャンマーなど)
・相談・インフォメーションコーナー

今年の第6回目 (4月21日) は、 Be not afraid …というテーマで、 ミサ等に加えて、 国際カラオケと留学生の集いを初めて行う。 (詳細は、 告知記事をご覧下さい)

編集部から

今月号は、 新司祭2人の誕生で東京教区は喜びに湧きました。 当日、 叙階式のミサに初めて出た若いお母さんがとても感激して 「ほんとにすばらしかったわ。 私感動しました。 うちの息子をささげます」 と話されていました。

司祭の召し出しがこれからも続いて多くありますよう神様の恵みを祈りましょう。

東京教区にある教会や修道会・宣教会を設立年度順に紹介する 『教会・修道院巡り』。 “設立の経緯などがわかって読みごたえある”という読者の声に励まされて、 せっせと書きためて47回。 担当のシスターのち密な取材と生き生きした描写力が好評のひけつなんでしょうネ。

さて、 毎号欠かさず紙面を飾っているシスターが、 このところ超多忙!取材する時間も十分に取れないとのことで、 来月号の 『教会・修道院巡り』 はお休みさせて頂きます。 なお、 6月号はメリノール女子修道会の予定です。 お楽しみに!

ニコラス神父の 「司祭との関わりにおける信徒の意識改革について」 は次号より連載します。

 「いじめ」 へのメッセージ募集に読者の方が日頃お感じになっていることをお寄せ下さい。 子ども達の意見も待っています。