教区の歴史

教区の歴史

豊田教会司牧訪問説教

2010年11月28日

2010年11月28日 待降節第1主日 豊田教会にて

 

第一朗読 イザヤの預言(2・1-5)

第二朗読 使徒パウロのローマの教会への手紙(13・11-14a)

福音朗読 マタイによる福音(24・37-44)

 

待降節は主キリストの降誕を迎える準備をするときですが、同時に主キリストの再臨を迎える準備のときでもあります。

今日の福音のなかでイエスは、「目を覚ましていなさい」「用意していなさい」と言います。では「目を覚ましている」「用意している」とはどういうことでしょうか。そのことを今日の第1朗読では「光の中を歩む」(イザヤ2・5)第2朗読では「光の武具を身につける」(ローマ13・12)ということばで、言い表しています。またエフェソの教会への手紙の中でパウロは言っています。

「あなたがたは、以前には暗闇でしたが、今は主に結ばれて、光となっています。光の子として歩みなさい」(5.8)と述べています。

ニケア・コンスタンチノープル信条で言われているようにキリストは「光よりの光」です。第2ヴァチカン公会議の『教会憲章』は、キリストは「諸国民の光」であり、教会はそのキリストから光を受けて世を照らすキリストのしるし、と教えます。

「目を覚ましている」「用意している」とは光の子として光の中を歩むことだと思います。

さて2010年の待降節を迎えるにあたり、「光の中を歩む」「光の子としてあゆむ」「光の武具を身につける」とはどういうことでしょうか?さらに考えておりますと、おりしも教皇ベネディクト16世からの呼びかけが日本の教会へ届きました。教皇様は待降節を迎えるにあたり、全世界の信者に向かって、『いのちのための前晩の祈り』をささげ、生まれてくるいのちために祈るよう望まれました。そして「いのちのための嘆願の祈り」*1 が世界中でささげられるよう望まれました。

教皇様は言われます。待降節はすべての人間のいのち、神から生まれるよう呼ばれた人間のいのちを守るよう呼びかけるときであり、また両親を通して頂いたいのちの賜物にために神に感謝するときである、と言われます。

わたしたちがこの世に生を受けたのは神様の御心によるのです。神様のお望みによってわたしたちは両親を通していのちのたまものをいただきました。このいのちは生まれる前から守られ大切にされなければなりません。教皇様はこのことを強く言っておられると思います。

生まれる前からいのちが大切にされるためにはそのための環境と準備がなければなりません。家庭はいのちを生み育みます。現代の日本の社会と家庭はいのちを大切にしているでしょうか?いのちを育てるために相応しく適切な状況にあるでしょうか?その点に大きな疑問と課題があると感じます。人々が安心して家庭を生み産んで育てられるような社会がなければならず、またそう出来るために教育を結婚する人たちが受けていなければならないと思います。

すべてのいのちが大切にされなければなりません。日本の司教団は2001年1月1日,『いのちへのまなざし―二十一世紀への司教団メッセージ―』を出しました。是非皆さんの研修教材として活用してください。聖書のメッセージ、家族の問題、自殺などの生と死の諸問題が解説されています。

先日(11/16~18)、李神父様の国、韓国で開かれた日韓司教交流会に参加しました。分かち合いのテーマは日韓両国の共通の深刻な問題である「自死」(自殺)でした。

 韓国は2009年では経済協力発展機構(OECD)の中で第1の自殺率です。(ちなみに日本は3位)

また年齢別死亡原因の統計によれば、20代で亡くなった人の死亡原因の1位が自殺であり、しかも男性より女性の自殺率が高い、と報告されています。これは大きな衝撃であります。

韓国の自殺率急騰の原因分析も行なわれています。

要約すれば、

  1. 価値観の変化と混沌

  2. 過剰なストレス

  3. 家庭の破綻と離婚増加

などが挙げられています。このような原因は日本の場合とかなり共通していると思われます。

ちなみに日本の司教協議会のカリタスジャパン啓発部会は最近、『自死の現実を見つめて―教会が生きる支えとなるために―』と言う小冊子を発行しました。これも是非皆さんに読んでいただきたいと思います。

 

「いのちのための嘆願の祈り」*1

主イエス・キリスト、

あなたは教会と人類の歴史の中に来られ、

わたしたちといつもともにいてくださいます。

あなたはご自分の御からだと御血のとうとい秘跡によって、

わたしたちを神のいのちにあずかる者とし、

永遠のいのちの喜びを前もって味わわせてくださいます。

わたしたちはあなたをあがめ、ほめたたえます。

 

いのちを生み、いのちを愛してくださる主よ、

わたしたちのうちにとどまり、

わたしたちのうちに生きておられるあなたに心をこめて祈ります。

 

生まれ来るあらゆるいのちを敬う心を、

わたしたちのうちに呼び覚ましてください。

母の胎内に宿ったいのちが、

造り主である神のすばらしいみわざであることを認め、

生まれてくるすべての子どもたちを、

喜びをもって受け入れることができますように。

 

すべての家庭を祝福してください。

夫婦のきずなが聖なるものとされ、

その愛が豊かにはぐくまれますように。

 

法を定める人々が正しい道を選ぶよう、

聖霊の光によって導いてください。

人間のいのちが聖なるものであることをすべての人が認め、

いのちを敬うことができますように。

 

科学や医療にたずさわる人々を導いてください。

科学や医療の進歩が人々の生活の向上に貢献し、

あらゆるいのちを脅かす力が取り去られますように。

 

国政や経済にたずさわる人々に、

愛をはぐくむ心をお与えください。

若い家庭が安心して子どもを産み育てるために、

十分な環境が整えられ、促進されますように。

 

子どもを持つことができずに苦しむ夫婦に慰めを与えてください。

あなたからあらゆるよいものが与えられますように。

 

親を亡くした子どもたち、

また、親から見捨てられた子どもたちを大切にする心を、

すべての人のうちにはぐくんでください。

すべての人があなたの温かい愛に触れ、

あなたの心からの慰めに満たされますように。

 

主よ、あなたは信仰に満ちた母マリアの胎に、

わたしたち人類をゆだねてくださいました。

わたしたちは、いのちを愛し、いのちに仕える力を、

唯一の救い主であるあなたからいただけるよう、

マリアとともに待ち望みます。

父と子と聖霊の交わりのうちに、

あなたとともにいつも生きることを待ち望みます。

アーメン。