教区の歴史

教区の歴史

イエズス会司祭叙階式説教

2010年09月23日

2010年9月23日 麹町教会で

 

受階者

洗礼者ヨハネ 中井 淳

ガブリエル  柴田 潔

ステファノ  山内 保憲

 

聖書朗読 ホセアによる預言11章8節―9節

福音朗読 ルカによる福音4章16節―21節

 

今日はわたしどもにとって、大変大きな喜びの日でございます。

三人の助祭の方が司祭に叙階されます。

   洗礼者ヨハネ 中井 淳さん

   ガブリエル  柴田 潔さん

   ステファノ  山内 保憲さん

 

三人とも、イエズス会の教会で信仰を受けて、あるいは信仰を育てていただき、今日、ご一緒に、司祭の叙階をお受けになります。

 

現代の荒れ野、現代の砂漠に福音をのべ伝え喜びの便りを告げ知らせるために司祭は叙階されます。荒れ野とは、神との出会いの場であります。わたしたち教会は、東京とその周辺である首都圏において、荒れ野のオアシスとして人々が神に出会うことのできる場をつくり、そしてオアシスとして成長していかなければならないと思います

 

今日読まれました福音は、イザヤ書の引用の部分であります

捕らわれている人に福音を。何に捕らわれているのでしょうか?現代の社会においても、わたしたちは様々な悪を経験しています。暴力、貧困、差別など、さまざまな問題をわたしたちは持っております。そのような悪からの解放を意味しているのかもしれません。わたくしは、今日、特に、わたしたち自身が様々な偏見、思い込み、間違った先入観などを持っているということを自覚して、そして、そういうような思いから解放していただけますように、ご一緒にお祈りしたいと思います。

 

目の見えない人に視力の回復を告げる。わたしたちの教皇ベネディクト16世は5年前に即位なさった時に、説教の中で言われました。わたしたちのこの世界には、そしてわたしたちの心の中には、暗夜というか暗闇、あるいは、荒野、砂漠のようなところがあるのではないか、まずわたしたちは、自分自身の心の闇に気が付き、そしてわたしたちの心を主なる神によって照らしてくださるように、復活なさった主イエス・キリストの光を頂くことが出来ますようにと切に祈りたいと思います。

 

圧迫されている人に自由を。現代は様々な圧迫の時代であり、抑圧と管理、そして競争と管理の社会にわたしたちは置かれております。わたしたちはこの世にある限り、このような、しがらみ、つまり種々の束縛、抑圧からから抜け出ることはできないかもしれません。わたしたちは福音の光によって、自分自身を、そして多くの人をこの抑圧から解放するために、力を尽くしたいとわたしは思っております。

 

わたしたちのカトリック教会は2千年の歴史を持ち、2千年の遺産を引き継いでおります。信仰の遺産、そして諸聖人の栄光、教会の制度・典礼・組織・神学など、わたしたちは先人から多くの恵み、いわば宝を受け継ぎました。

そして同時に、わたしたちはさまざまな問題・課題をも引き継いでいるのであります。わたしたちの教会は、現代の社会、状況において、このような、いろいろな問題、課題に立ち向かっていかなければならないのであります。

こういう課題、問題というものは、わたしたちが自分で作り出したものでしょうか?そういう部分もあるでしょうが、わたしたちがこの世に生を受け、あるいは信仰の恵みを受けた時に、すでにわたしたちは、様々な問題に遭遇しているのであります。だからと言って、それは自分の問題ではないということはできません。わたしたちは先人から引き継いだ様々な課題を自分の責任において、しっかりと対処していかなければなりません。わたしたちはまったく無償の恵みで、沢山の遺産を受け継ぎました。プラスの遺産ばかりではなく、マイナスの遺産も引き継ぎ、そして、しっかりと、自分たちの出来る解決の道を選び歩んでいきたいと思います。

 

教会は、復活のキリストのしるしであります。わたしたちはカトリック東京大司教区、あるいは、日本の教会を、砂漠のオアシスとして日本の人々に示して行きたいと切に望んでおります。わたしたちの教会の現状はどうでありましょうか。そうなっている、そのような働きをしている喜ばしい、輝かしい事実はありますが、他面、なかなかそう見えない、そういう本来の教会の使命から、まだまだ遠いと思わざるを得ない、そういう事実もあるのではないかと思います。

 

教会は主の霊を受けた人々の集まりであります。そして「主の霊のおられるとことに自由があります。」主の霊はわたしたちと共にいつもいてくださいます。わたしたちは今すぐ、変えることのできないことが多々あることを知っておりますが、今、わたしたちが変えることのできることもたくさんあるとあります。自分たちが一緒に力を合わせて、変えることができることを、教会をよりよくすること、日本の社会の人々のために貢献すること、悩み苦しんでいる人のためになすことがたくさん出来るのではないかと考えております。変えられることを見わけ、そして実行する知恵と勇気を祈り求めたいと思います。

わたしたちの神はわたしたちを愛し、わたしたちの救いのために苦しんでくださる神であります。すでに旧約の預言者ホセアは次のように言いました。

「わたしは激しく心を動かされ、憐れみに胸が焼かれる。」

この神の愛はイエス・キリストの十字架によって完全に現され伝えられたものであります。

 

今日のこの喜びの日、こんなに多くの方がお集まりなっておられますので、

東京教区の優先課題について一言申し添えたいと思います。

 

東京教区は三つの課題を優先課題としております。

第一、信仰の生涯養成、すべての信者の霊的成長であります。

特に子供たちの信仰教育、ダブルの子と言われる子供たちの宗教教育に力を注いで頂きたいと願っております。

 

第二、多国籍・多民族教会としての成長であります。

今日、東京教区カトリック東京国際センター創立20周年の記念のミサとお祝いをしております。この課題をそのまま日々取り組んでくださっている教会の中で、特にこの麹町教会、イグナチオ教会は大切であると思います。お互いの立場、文化、国籍の違いを尊重しながら力を合わせ、すべてを超えて、救いの恵みを伝える主イエスキリストの復活のしるしとして歩んで頂きたいと願っております。

 

第三、心の問題への取り組みであります。わたしたちの社会は、非常にストレスが多いからでしょう、少なからぬ人々が心の問題に悩み苦しんでおります。

自死する人も少なくありません。東京教区も、麹町教会にお願いして、昨年と今年、「こころのセミナー」という研修を6回開催しております。多くの方のご協力に改めて感謝いたします。多くの人々の心の問題は、まず、周りの人々、特に家族の配慮、そして家族の方の祈りが大切であると思います。よい準備をし、よい家庭を作ることこそ、わたしたちにとって、わたしたちが今できる、最も大切なことではないかとわたしは信じております。

 

今日、叙階式にあたって司教が唱える次の祈りを説教の結びとしたいと思います。

「あなたがたのうちに、よいわざを始めてくださった神ご自身が、それを完成してくださいますように。」アーメン。