神の母聖マリアの祭日説教

    image_pdfimage_print

    2009年1月1日 東京カテドラル聖マリア大聖堂で

     

    皆さん、明けましておめでとうございます。

    今日は主の降誕八日目にあたり、神の母聖マリアの祭日であり、また『世界平和の日』でもあります。イエスはユダヤ人の習慣にしたがって八日目に割礼を受け、イエスと命名されました。イエスとは「主は救う」「神は救い」という意味であり、イエスの使命を表しています。

    わたしたち教会はキリストの体と言われます。教会の使命は、イエスの使命であり、イエスの使命を受け継ぎ、神の救いを告げ知らせ、神の愛を実行することであり、また平和のために働くことであります。 

    今日は『世界平和の日』にあたり、2009年を迎えて、平和のために祈り、また平和について学び、決意を新たにすべき日であります。教皇様は毎年元旦に向けて平和のメッセージを発表されています。今年のメッセージは「貧困と戦い、平和を築く」です。今日はこのメッセージの中から、私なりに理解した点をお話したいと思います。

    現在は地球規模化(globalization)の時代と言われます。科学技術の発展により、地球上の各地の距離が縮まっています。地球の一点で起こったことは他の場所に迅速に伝達されます。善いことについてだけでなく悪いことについても急速かつ甚大な結果を全地球上に波及させます。今地球上を襲っている金融危機もその例であります。 

    教皇ベネディクト16世は2009年の『世界平和の日』のメッセージにおいて、金融の地球規模化についての懸念を次のように述べています。

    「金融の最も重要な機能は、長期的な投資と発展の可能性を支えることです。今日、この機能は極めて脆弱になっているように思われます。」

    そして、さらに、短期的な思考に基づいて金融取引が行われていること、また金融活動自体の利益の増大を目指して行われていることから問題が起こっている、本来金融活動は、世界の共通の善のために、長期的な展望をもって行われなければならない、と述べているようです。

    金融操作と金融活動は、すべての人の共通の善のために、長期的な見通しのもとで、貧困との闘いのために行われなければなりません。例えば、医療・介護・教育・食糧・環境などの問題の解決のために、失業者・高齢者・傷病者・疲弊した国々、地域のための施策などを視野に入れて行われなければなりません。

    貧困により多くの人は栄養失調に陥り、あるいは必要な食糧を得ることができない状態に置かれています。貧困によって多くの人々がマラリア、結核、エイズなどの流行病で苦しみ、また子どもたちは貧困から生じる不安定で不健全な家庭環境に置かれており、人間に必要な医療や教育の機会すら奪われており、深刻な被害を蒙っています。しかし、大国は貧しい人々を助けるための開発よりも軍備のために巨額な支出を行っているのです。

    これらの問題は人間が生み出した問題であります。このような極度の貧困の根源にあるのは、人間の人格の超越的な尊厳に対する尊重の欠如である、と教皇は述べています。

    人を助け救い支えるためではなく人を傷つけ殺すために、はるかに巨額な経費が支出されているという現実は、本当に神を恐れない、重大な罪と言わなければならないでしょう。 

    神はイエス・キリストの贖いによって、わたしたちを奴隷ではなく神の子、神の国の相続人としてくださいました。それは「新しい天と新しい地」の住民として生まれ変わるためです。生まれ変わるためにはパウロが教えているように、古い人を脱ぎ捨て、人間の尊厳に相応しくないあらゆる汚れと過ちから解放され、日々心の底から新たにされて、神にかたどって造られた新しい人を身に着けなければなりません。(エフェソ4・17-24参照)

    わたしたちはすでに聖霊によって新たに生まれて神の子とされています。神の子とされる贖いはこの地上では始まっています。わたしたちは日々、古い人と新しい人の間にある葛藤の中に置かれています。しかし日々新たにされて、やがては主の栄光の体に変えていただけると信じ、希望しています。教皇ベネディクト16世の希望についての回勅にありますように、「わたしたちはこの希望によって救われているのです。」(ローマ8・24) 

    2009年が皆さんにとって日々新たに生まれる希望の年となりますよう祈ります。