カノッサ修道女会管区本部東京修道院竣工感謝ミサ説教

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    2008年12月23日

     

    聖書朗読 コリントの信徒への手紙一 3・9‐11,16‐17
    福音朗読 マタイによる福音 5・13‐16

     

    「あなたがたは地の塩である。」「あなたがたは世の光である。」主イエスの言葉です。

    「あなたがたは、自分が神の神殿であり、神の霊が自分たちの内に住んでいることを知らないのですか。」使徒パウロの言葉です。聖パウロは繰り返し、「キリスト者は聖霊の神殿である」と教えています。(一コリ6・19,二コリ6・16,エフェ2・21-22参照)

    「あなたがたは地の塩になり、世の光になり、聖霊の神殿になるよう努めなさい」というのではなく、むしろ、「あなたがたはすでに、地の塩であり世の光であり聖霊の神殿である」と言っているように思われます。

    この言葉、この教えをどう考えたらいいのでしょうか? 

    キリスト者は聖霊の神殿であるのに当人はそのことに気がつかない、そういう自覚がないということでしょうか?そういうことは確かにあると思います。それどころか、心が悪い、邪な思いでいっぱいになっているということさえあるのです。悪霊が乗り移っている(憑依している)としか思えない状態もあり得ます。もともと神の似姿であり聖霊の住処であるのに、とてもそうとは言えない状態があります。

    旧約聖書の列王記あるいは歴代誌を読むと、しばしば王たちの生涯を「主の目に悪とされることを行った」との表現でまとめています。主の霊に逆らって生きた王の評価です。(主の霊に従った王は「主の目にかなう正しいことを行った」と評価されます。)

    しかし、どんなにひどい状態になっても人は神によって造られた神の子、キリストの贖いを受けるキリストの兄弟です。人は誰でも基本的には神の霊を受け入れ、神の霊に従って生き、霊の実りにより、地の塩、世の光を証しできる可能性をいつも持っている神の子です。

    ちなみに、パウロの言う霊の結ぶ実とは「喜び、平和、寛容、親切、善意、誠実、柔和、節制」(ガラテヤ5・22)です。 

    さて、2008年も残すところわずかとなりました。いろいろなことのあった年ですが、わたしたちカトリック教会にとって最も大きな恵みは何といっても、去る11月24日に行われたペトロ岐部と187殉教者の列福式であります。

    400年前の日本においてこの188人の殉教者は、キリシタンがまさに「地の塩、世の光、聖霊の神殿」であることを立派に証ししたのでした。

    この殉教者たちが今のわたしたちへ向けて発信しているメッセージを読み取り聞き取ることが大切です。わたしたちはこの殉教者の生涯から、今の時代、今の社会へ向けた呼びかけを受け取ることができます。

    列福式の説教で白柳誠一枢機卿様がおっしゃいましたが、188人はそれぞれ2008年の教会と社会に呼びかけています。私は本日この新しい修道院の祝別式にあたり、殉教者からの二つの呼びかけに絞って、ご一緒に深く心に留めたいと思います。 

    第一の点は、4人の司祭すなわちジュリアン中浦、ディエゴ結城了雪、トマス金鍔次兵衛、ペトロ岐部カスイからのメッセージであります。彼らはよい牧者として司祭の務めを忠実に果たし、羊のために命を捧げたのです。

    今のわたしたち、司教・司祭はどうでしょうか?羊を養うのではなく自分自身を養っている牧者がいないでしょうか?弱い者を強め、病める者を癒し、傷ついている者を包むという牧者の務めを果たしているでしょうか?逆に弱い羊を悩ませ苦しめ脅かす、などのことをしていないでしょうか?真摯に反省しなければなりません。(エゼキエル書34章参照) 

    第二の点は、女性の殉教者の模範であります。188人の中には女性が60人おられます。60人の中でとくに私は小笠原みやという方に、非常に強い印象を受けています。

    小笠原みやには夫である小笠原玄也、そして9人の子どもがいました。さらに4人の奉公人がおりました。この小笠原家15人が1636年1月30日に熊本で殉教しています。列福式のときに掲げられた(三牧樺ず子さんの)画では、紫色の着物を着ている美しい女性として描かれています。

    信仰で結ばれたこの15人の家族の固い結束!今の家庭はどうでしょうか?家族の絆はどうなっているでしょうか?夫の小笠原玄也は立派な武士、夫、父であったと思います。しかし、一家の殉教には母である小笠原みやの存在が最も大きな役割を果たしたことは想像に難くありません。

    今の家庭、家族関係は本当に難しいと思います。危機的状況にあると言っても過言ではないでしょう。社会の再建と刷新はまず男と女、夫と妻、親と子、兄弟姉妹の関わり方の刷新と再建から始まらなければならないと言わなければならないように感じます。 

    年間3万人が自死を遂げる時代です。人同士の温かいつながりが乏しい時代ではないでしょうか?人は砂漠の中で飢え渇き、孤立し、孤独に苦しんでいます。

    クリスマスを目前として、人となられた神イエスの生涯を日々黙想しながら、賢明にして勇気ある生き方により、他者とのしっかりとした温かい交わりをつくり、それを広げることができますよう、殉教者のとりなしによって祈りましょう。