教区の歴史

教区の歴史

アメリカでの同時多発テロに際して東京教区の皆さんへ

2001年09月20日

 [English]

 

9月11日にアメリカで起こった同時多発テロの犠牲者となられた多くの方々、ご家族、関係者の皆様に対し、こころからの哀悼の意を表します。

このような暴挙は決してあってはならないことです。このようなテロ行為は人間の尊厳への侵犯であり、人類全体への犯罪行為です。テロリストは、暴力は何も解決しないだけではなく事態を悪化させることを知るべきです。

ところで暴力否定はすべての人に当てはめられなければなりません。

わたしたちは、被害者となったアメリカ合衆国と事故に巻き込まれた方々とともに、この出来事に深い悲しみを感じ、この卑劣で非人道的な行為に強い憤りを感じています。

しかし、この気持ちが憎しみ、復讐、報復となり、武力による戦闘行為へと発展するならば、それは暴力肯定以外のなにものでもなくなってしまいます。暴力を否定するものが暴力に訴えるという矛盾を犯すことになります。

わたくしは、いまアメリカ社会と国際社会で高まっている報復への動きに強い懸念を覚えます。暴力に暴力をもって対抗するのでは何の解決にもなりません。

聖パウロは教えています。

 「愛する人たち、自分で復讐せず、神の怒りにまかせなさい」(ローマ12・19)。

 「悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい」(ローマ12・21)。

紛争は、忍耐と信頼にもとづく対話、人類の尊厳にもとづく国際法の遵守、国際機関の活用などの平和的手段によって解決するべきです。そして、この際大切なのは、今回の惨事が引き起こされた経緯と原因を究明し、反省することではないかと思います。それは一方的に加害者側を非難するということではなく、なぜこのような事態が発生したのかをともに、冷静に見つめることです。それは、全人類が、世界の平和を脅かす共通の課題に今後、共同責任をもって取り組んでいくためです。

「平和のために働く人は幸い」と主は言われます。

わたくしのお願いは、信者として、市民として、どのようにしたら「平和の使徒」となれるのか、考え話し合うなかでその使命を果たしていただきたいということです。時代の動きのなかで教会が聖霊の導きのもと、預言者の務めを忠実に担っていきたいと祈念しています。

皆さんのお祈りとご理解を重ねて切にお願いします。

 

主日のミサの共同祈願などで、たとえば次のような祈りをささげていただけましたら幸いです。

 

【例文】

いつくしみ深い神よ、去る9月11日のテロの犠牲となった方々に永遠の安息をお与えください。また、この事件に巻き込まれて深い傷を負い、苦しみ悩むすべての人々をいやし、支え、強めてください。

父なる神よ、御子イエス・キリストはご自身をささげ、十字架上で敵への愛を示されました。わたしたちもキリストにならい、敵への復讐心と憎しみに打ち勝ち、悪に対するに善をもって平和のために働くことができるよう、力と知恵をお与えください。

すべての人の父である神よ、いまの国際社会には分裂と対立、紛争と憎悪が存在しています。聖霊をすべての人、とくに各国の政治指導者に送ってください。あなたの霊の働きを受けて、わたしたちが互いに人間として尊重しあえる世界を築き上げていくことができますように。

 

2001年9月20日